再開発が目覚ましい大井町線の品川エリア
戸越公園駅付近では再開発やインフラ整備
東急大井町線は、東京都品川区の大井町駅から神奈川県川崎市高津区の溝の口駅を結ぶ路線。路線距離は12.4㎞で駅数は16駅。品川・太田・目黒・世田谷・川崎の各区市の住宅密集地を走り、自由が丘や二子玉川といった「住みたいまちランキング」の上位に選ばれる駅にも乗り入れる。
沿線に住みやすい住宅街が広がることから、大井町線の利用者は右肩上がりで増加。2000年は1日当たり2万人だったのが、いまでは3万人に近づこうとしている。2008年からは急行の運転が始まり、2018年には有料座席指定サービス「Qシート」を開始、その翌年には急行の一部列車が中央林間駅まで延伸している。
沿線の発展や混雑が激しい田園都市線のバイパス機能を持たせるため、駅の改良工事も実施。大井町駅や旗の台駅、自由が丘駅、等々力駅、上野毛駅、二子玉川駅ではホームの拡幅や延伸、駅舎の新設・改修が行われている。
何かと発展目覚ましい大井町線と沿線地域だが、東京都・品川区・東急電鉄の3者は、大井町線・戸越銀座駅付近の連続立体交差計画などの都市計画素案を公表。駅とその前後の路線を高架化することを明らかにした。
対象となるのは、戸越公園駅を含む約1.1㎞で、そのうち約0.9㎞が連続立体交差化(高架化)の事業予定区間。高架の高さは約11m、幅は約12mだ。事業予定区間の前後はすでに高架化されているので、この区間の高架化により大井町駅から中延駅の先までの間、6か所の踏切が解消される。
事業は2025年度から2035年度までの約11年間を予定。現在の線路の北側に仮線を敷設し、その後現在の線路を撤去して高架橋を建設する流れで、事業費は約240億円を見込んでいる。当初は地下式での整備も検討したそうだが、工事に伴い中延寄りの踏切3か所が通行不能になり、事業費がかさみ事業期間も長くなることから、高架式を選んだ。
撤去される6か所の踏切は、ピーク1時間当たりの遮断時間は40分以上の開かずの踏切。2021年4月には「改良すべき踏切道」に指定され、立体化に向けた取り組みは始まっていた。本事業を通じてこれらが解消されるのはインパクトがある。
また、同駅の西側では東京都が「都市計画道路補助線第29号」を整備していて、大井町線と交差する計画だ。スムーズな動線を確保するためにも、高架化は避けられなかった。事業完了後は救急車などの緊急車両はもちろん、武蔵小山方面との往来など、鉄道の空白地帯を埋めるバス路線も開拓されるのではないだろうか。それを示すかのように、同事業では戸越公園駅の北側に約1700㎡の交通広場も整備する。歩行者空間の確保や交通結節機能の向上も図る狙いだ。
品川区内にある大井町線の駅のなか、どちらかというと下町情緒を色濃く残している戸越公園駅の周辺。ところが、JR京浜東北線や東京臨海高速鉄道りんかい線が乗り入れる大井町駅に近く、東京メトロ南北線・都営地下鉄三田線にアクセスできる大岡山駅、さら渋谷や川崎や横浜方面にもアクセスできる二子玉川駅にもつながっている。首都圏や神奈川のどちらに行くにも便利で、品川や羽田空港も遠くない、魅力的なエリアと言えるだろう。
こうしたことから品川区も戸越公園駅周辺地区のまちづくりに力を入れていて、「快適で暮らしやすく災害に強い安全性の高い街」「暮らしの拠点として帆とが集いにぎわいのある街」「水やみどり・景観などのやすらぎと充実したうるおいのある街」の将来像のもと、防災の強化やにぎわいの創出に取り組んでいる。
すでに再開発も始まっていて、駅前の一等地では地上23階建・総戸数241戸の商業施設なども備えたタワーマンションが建設中で、来年には完成予定。他にも駅周辺で複数の再開発の勉強会が行われており、駅の北側に9棟、南側に7棟の高層マンションを建てる構想が描かれているという。その是非はさておき、駅周辺には老朽化した戸建てや集合住宅が広がり、防災や相続などの面で建て替えは進んでいくだろう。
なお、不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME’S」の「住まいインデックス」によると、直近3年間で戸越公園駅周辺市の賃貸マンションの賃料は2.95%、中古マンション価格は14.91%上昇している。今後の高架化や再開発の加速で、まちの付加価値はさらに急速に上がっていくかもしれない。都心の穴場がどうなっていくか、今後の動向が気になる。
健美家編集部(協力:
(おしょうだにしげはる))