連続立体交差事業の進行とともに
次代に向けたまちづくりがスタート
京成立石駅(以下、立石駅)は、東京都葛飾区にある京成電鉄押上線の駅。立石仲見世商店街や立石駅前商店街が駅前から広がり、周辺には飲食店が密集する下町として独特な雰囲気を放っている。
葛飾区役所や葛飾警察署、かつしかシンフォニーヒルズ(文化会館)、葛飾エフエム放送などの公共施設、大手玩具メーカーのタカラトミーの本社も近い。
昔ながらの雰囲気を残しつつ、近隣には大型商業施設もあるなど、住みよいエリアとして評価されている立石駅周辺だが、現在は大規模な再開発が進行中。そのひとつ、「立石駅南口西地区第一種市街地再開発事業」は葛飾区より都市計画決定の告示を受けた。
同事業は、立石駅南口西地区市街地再開発準備組合が中心となり進めてきたもの。野村不動産、東京建物、阪急阪神不動産も参加組合予定者として同組合に参画している。
計画地は、立石駅の南側に隣接する約1.3haの区域。東側には特別区道葛48号(駅通り)、南側を補助線街路第141号(奥戸街道)、北側を特別区道397号線が通っている。
現状は葛飾区有数の集積を誇るまち並みを形成しているが、老朽化した建物の密集や狭あい道路が多く存在しているなど、防災面では課題を抱えていた。これを受け、2017年2月に市街地再開発準備組合が設立され、デベロッパーを交えながら本事業を推進してきた。
区域は建築面積約8000㎡のA敷地、同110㎡のB敷地にわけられ、前者には高さ約125mの地上34階・地下1階建てで住宅(約700戸)・店舗・事務所が入る複合施設、後者には高さ約10mで地上3階建ての駐輪場・事務所が整備されるという。
事業のテーマは「防災性の向上」「賑わいの創出」「多世代居住の推進」の3点だ。これらを実現するために、地区内の建物の不燃化・耐震化による防災性の向上の向上や緊急時には地区周辺の住民・帰宅困難者が避難できる防災拠点としての機能を備え、利便性の高い商業や立石らしさを継承した路地や溜まりの空間を設けた回遊性を向上させる空間構成、子育て世代から高齢者までの多様な世代が住み続けられる、住みたくなるような住環境を整備。
今後は、2025年度の再開発組合(本組合)設立認可を経て、27年度に施設建築物の工事に着手、31年度に竣工を予定している。
京成電鉄押上線は2030年の完成に向け、立石駅を含む四ツ木駅~青砥駅間で連続立体交差事業を進めているところ。来年から仮線への切り替えなど、本格的に工事が行われる予定だ。
これに併せてまちづくりの機運も高まり、同事業のほかに葛飾区総合庁舎の移転が決まっている「立石駅北口地区」、同事業に隣接する「立石駅南口東地区」の再開発事業などを検討。線路の高架化と連携しながら大規模なまちづくりを行い、安全・安心なまちづくりを計画している。形になるのはまだ先だが、駅を中心に周辺の様子は大きく変わりそうだ。
不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME’S」の「住まいインデックス」によると、直近3年間で立石駅周辺市の賃貸マンションの賃料は2.99%、中古マンション価格は11.72%上昇している。
いずれも東京都の変動に比べるとやや低めの水準だが、大規模再開発がカーブを押し上げるかもしれない。葛飾区の人口自体は微増傾向にあり、今後の発展と付加価値の向上が期待できるエリアになるのではないだろうか。
健美家編集部(協力:
(おしょうだにしげはる))