東京メトロ丸の内線といえば、旧営団地下鉄時代の昭和29年、銀座線に次いで2番目に開業した歴史を持つ。第1期の池袋~御茶ノ水間を皮切りに、東京、銀座、赤坂、新宿といった都心の主要エリアを網羅するように”いいとこどり”しながら開通距離を伸ばした路線だ。
西側の終点である荻窪駅からの視点で見ると、乗り換えなしで山手線の内側に入っていける利便性も併せ持つ。
その丸の内線の中でも、山手線の西側で新宿にもほど近い駅の一つに東高円寺駅がある。当駅は杉並区の東端で中野区との区境にも近く、北側を東西に走るJR中央線に対しても高円寺駅と中野駅のほぼ中間地点に位置する。
今回は、この東高円寺駅周辺で発生しつつある活発な開発の動きについて紹介する。
駅前には緑が広がる蚕糸の森公園と、商業エリアが両立
東高円寺駅南口から地上に出ると、入り口階段に隣接するように蚕糸の森公園が存在する。この場所は文字通り、農林水産省が管轄する蚕糸試験場だった歴史を持ち、現在はその跡地が公園になり区民の憩いの場となっている。
また、丸の内線と重なるようにして地上には東西に青梅街道が走っている。東高円寺駅前では、コンビニ、カフェ、定食チェーン、焼鳥屋、串カツ屋、ラーメン店、カレー店、パスタ店、餃子店、ドラッグストアなど地味ながら日常生活を支える種々の店舗が揃っている。
大学のキャンパス拡張が控えている高円寺南1丁目エリア
青梅街道の南側に広がる杉並区和田3丁目のエリアには女子美術大学の杉並キャンパスがある。住宅地の一角に広がるキャンパスには短大と中高一貫校も併設され、道路を挟みながらも敷地は複数に渡り存在感を示す。
この女子美術大学にはキャンパスを飛び地で拡張する計画があり、青梅街道を渡った北側の杉並区高円寺南1丁目に用地確保された旨が近隣住民には伝えられている。
容積率の制約からその用地に現存する10階建RC造ビルよりも高い建物はできないが、その解体を経たのちにキャンパスの着工・造成に向かうと言う。東高円寺駅周辺の動線にも変化が生じ、駅前がより賑わうきっかけになるだろう。
駅前にマンション開発の予定地も。世帯構成や賃貸需要は?
前述の蚕糸の森公園と道路一本を挟んだ東隣には、マンション建設予定地として約300坪の用地がスタンバイしている。青梅街道に面しかつ東高円寺駅からは徒歩10秒と言える至近距離であり、駅前の景色を一変させるプロジェクトとなりそうだ。
以下データによると東高円寺駅の乗降客数は3万人台だが、周辺に目をやると、乗降客数30万人超を誇るJR中央線の中野駅も徒歩圏内にある。賃貸需要などは東高円寺駅の数値だけでは測れないとも言えそうだ。
【駅乗降客数データ2021】(データ提供:国際航業)
東京メトロ東高円寺駅:36,411人/日
東京メトロ新中野駅:36,121人/日
JR中央線中野駅:301,772人/日
また、東高円寺駅から半径2kmにかかる町丁の世帯構成としては、以下の通り単身世帯が6割超、また借家世帯も6割超と示されている。
【人員数別世帯数2020】(データ提供:国際航業)
単身世帯数:138,983(63.5%)
2人世帯数:41,719(19.1%)
3人世帯数:21,530(9.8%)
4人世帯数:13,294(6.1%)
5人以上世帯数:3,448(1.6%)
【住居分類別世帯数2020】(データ提供:国際航業)
持ち家世帯数:72,696(33.5%)
公営・UR・公社の借家世帯数(1.4%)
民営の借家世帯数:132,261(60.9%)
給与住宅世帯数:6,075(2.8%)
間借り世帯数:2,930(1.3%)
東京メトロ丸の内線やJR中央線で下支えされる、”隠れターミナルエリア”における今後の発展に注目したい。
執筆:
(さんとうりゅうおおや)