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コロナ禍の空室率上昇、一番影響を受けたのは30m2以下、広い部屋には影響軽微

調査(不動産投資)/賃貸市場 ニュース

2023/11/06 配信

ニッセイ基礎研究所が「コロナ禍における賃貸マンション市場動向 ー賃貸管理データより算出された空室率に基づく分析」(佐久間誠氏)というレポートを公表している。コロナ禍で単身者向き賃貸住宅に空室が増えたとはあちこちで聞くが、データから解説されている例は少ない。同レポートをご紹介しよう。

統計調査の少ない賃貸市場

レポート冒頭にも書かれている通り、日本の賃貸市場は77.1兆円にも上る資産規模を持ちながら、市場全体の動向を示すマクロデータの蓄積は十分とはいえない。

国の統計調査でも日本にどのくらいの賃貸住宅があるのか、そのうち、どの程度が空いているのかといったベーシックな内容が抑えられていないほどである。

同レポートは不動産管理会社向け業務管理システム「賃貸革命」を運営する日本情報クリエイト株式会社と共同でオルタナティブデータと呼ばれる、従来使われてきた経済統計や財務データとは異なる価値を持つ情報から賃貸住宅の賃料、空室率データを抽出したもの。これまで見えなかった数字をこれまでとは違う視点から算出する試みということだろう。

2020年夏から調整局面に入ると現在は回復基調

レポートはそのデータを使って2020年からのコロナ禍における日本の賃貸マンション市場について分析している。

まずは賃貸市場で中心となる単身者向け。空室率は2020年1月から2020年8月にかけて6.3%から6.5%の狭い範囲で推移、その後、2020年9月から上昇を始め、2022年2月には8.9%に達している。しばらくはそのまま横ばいで推移、2022年11月からは低下、2023年7月には7.4%にまで下がっている。

単身者向け、30㎡未満の賃貸マンションの空室率と賃料変化率
単身者向け、30㎡未満の賃貸マンションの空室率と賃料変化率

一方、賃料は2020年6月にマイナス0.1%に展示、その後緩やかに下げ幅を拡大、2021年6月にはマイナス1.6%に達し、空室率の上昇が一段落した2022年5月には再びプラス圏に戻っている。ただし、空室率改善よりも賃料上昇は遅れており、2023年7月には再びマイナス0.1%となっている。

つまり、単身向けの賃貸マンション市場は2020年夏から調整局面に入り、2022年後半からは回復傾向を示しているものの、コロナ禍前にまでは戻っていないということである。

空室率、賃料ともに30㎡未満が一番影響を受けた

ここまでの単身者向き賃貸マンションは30㎡以下を対象にしているが、レポートでは続いて30㎡未満、30㎡以上50㎡未満、50㎡以上と広さで空室率の変化を見ている。

面積別の賃料変化率。一番下がり、上昇しきれていないのが30㎡未満
面積別の空室率。明らかに面積ごとに違いがある

それで見ると面積ごとに明らかに動きが違うことが分かる。30㎡未満の空室率がもっとも高く、30㎡以上50㎡未満、50㎡以上はそこまでは高くなっていないのである。

面積別の賃料変化率
面積別の賃料変化率。こちらも面積で動き方が違う

では、同じように面積ごとに賃料の変動を見るとどうか。ここでもやはり、30㎡未満の下落がもっとも大きく、50㎡以上の賃料はコロナ禍前に下落が見られており、その後、逆に上昇している。この面積帯での賃料下落、上昇はコロナ禍とは別に要因があるとみるべきであろう。

また、30㎡以上から50㎡未満も下落はしているものの、30㎡未満に比べるとそれほどの下落はなっておらず、立ち直りも早い。比較的安定していると言っても良いだろう。

東京都、愛知県で空室率上昇が顕著

続いて地域別に見ていこう。愛知県、広島県、東京都、北海道、宮城県、大阪府、福岡県で空室率をみるとすべての地域で2020年後半から2022年前半にかけて上昇し、2022年後半から低下している。

空室率の上昇が顕著だったのは東京都と愛知県だが、その後の下落状況で見ると東京では大きく下げているのに対し、愛知県はゆるゆると改善されている様子。レポートではこの要因を東京一極集中が再開し、東京への人口流入が再び勢いを取り戻しつつあるためと考えられるとしている。

ちなみに上記の地域のうち、宮城県ではピークアウト後の空室率低下幅が大きく、空室率はすでにコロナ禍前の水準を下回っているそうだ。

東京圏内では神奈川県、東京都下、東京23区が6~7%と空室率上昇幅が大きかったものの、その後の低下も早い。ただ、同データで見るとまだコロナ禍前の空室率までには戻っていない。

これに比べると埼玉県と千葉県は影響が少なかったようで、空室率の上昇も小幅。とはいえ、こちらの2地域もコロナ禍前の水準には戻っていない。

都心に近いほど空室が増え、いまだに空きも多い

分析はさらに続く。次は東京都内を都心からの距離で4つに分類、それぞれの空室率を見ている。都心に近い順から東京23区A、東京23区B、東京23区C、東京都下としており、それでみると空室率の上昇が最も大きかったのは東京23区Aとなっている。一番低かったのた東京23区Cの5.6%である。

では、逆にそこからの低下幅はどうだったか。低下幅が一番大きかったのは東京都23区Bで5.7%で、続いては東京都下の4.2%、東京23区Aの4.0%、東京23区Cの4.0%である。

都内での値動きについては今後の動向にも期待したい
都内での値動きについては今後の動向にも期待したい

それをまとめるともっとも空室率の伸びが大きかった都心近くの東京23区Aはそれだけを戻しきれておらず、コロナ禍の影響が顕在化する以前よりも4.2%も空室率が高いままとなっている。一方で他のエリアはプラス1~2%まで下がり、おおむねコロナ禍前の状況にまで戻りつつあるといえる。

以上、レポートから分かることとしては30㎡以下の単身者向け賃貸住宅が一番外的要因に左右されやすいという点。地域による変化では賃料が高い地域ほど影響を受けやすいということだろう。

だが、分譲価格の動向では価格上昇も下落も価格そのものが高い地域ほど大きく出ることが多く、その観点からすると都心に近い地域での空室率上昇は分かるものの、その後の空室率の落ち方についてはいまひとつ、背景が分からない気もする。このあたりはデータが積み重ねられていくことで傾向が見えてくるはず。今後も同じデータを引き続き解析、背景その他が明らかになっていくことを期待したい。

健美家編集部(協力:中川寛子(なかがわひろこ))

中川寛子

株式会社東京情報堂

■ 主な経歴

住まいと街の解説者。40年近く不動産を中心にした編集業務に携わり、近年は地盤、行政サービス、空き家、まちづくり、地方創生その他まちをテーマにした取材、原稿が多い。
宅地建物取引士、行政書士有資格者。日本地理学会、日本地形学連合、東京スリバチ学会会員。

■ 主な著書

  • 「ど素人が始める不動産投資の本」(翔泳社)
  • 「この街に住んではいけない」(マガジンハウス)
  • 「解決!空き家問題」「東京格差 浮かぶ街、沈む街」(ちくま新書)
  • 「空き家再生でみんなが稼げる地元をつくる がもよんモデルの秘密」(学芸出版)など。

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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