こんにちは、外国人賃貸大家こと谷浩です。
暖かい日も増えてきて、春が見えてきましたね。3月5日が啓蟄でしたので、もう間もなくです。
日本の四季は気温の変化など、非常にカラフルですが、外国、特に最近日本への入国が多い東南アジアや南アジアでは日本ほど四季がはっきりしないため、彼らが日本に来ると季節の備え、特に冬の寒さには苦労するようです。
ただ、慣れてくるとそれを楽しむようになり、例えば私の物件の元入居者のスリランカ人は、昨年日本に来た奥さんとスノボに通ったりしていました。私も今年は外国人ビジネスを行っている仲間とお花見をする予定です。
ただ、そこで問題となるのがイスラム教徒が行うラマダン(断食)です。今年のラマダンは日本では3月8日〜4月8日ということなので、お花見のシーズンに丸被りしてしまいます。
参照:ラマダンの基礎知識と今年のラマダンhttps://asiasunshinemarket.com/blogs/news/2024-ramadan
そこで今年はラマダンを外してお花見を開催してみることにしました。最悪、花見はできなくても“BBQ”という外国人が大好きなキーワードを放り込んでおけば、まずは大丈夫かなと思います(笑)
日本人は四季で時間の流れを感じるせいか、計画性を持って動く方が多いのですが、外国人はマイペースな人も多いです。今回はそんな、我々には予想もできない外国人入居者、入居希望者の動きについて書いてみたいと思います。
■内見の約束をしたのに、ノーショウになる
お部屋探しをする方は、たいてい部屋の内見を行います。入居希望者が条件を不動産屋に伝えて部屋を選んでもらうケースもありますが、最近はウェブサイトで見た特定の物件を指定してくることが増えています。
指定物件の内見はすでに場所もわかっているため、不動産屋に集合せず、現地に集まる場合も珍しくありません。ここまでは、日本人も外国人も同じです。
ところが、この先で違いが生じます。日本人の場合、10分前に全員集まることも普通です。しかし、外国人の場合は定刻通りに来る確率は低く、5−10分遅刻は当たり前で、30分〜1時間遅刻も珍しくありません。
連絡がないまま、結局、内見に来ないということもままあります。いわゆる“ノーショウ”です。英語で書くと、”No Show”。これはホテル宿泊などのサイトではよく使われる表現なのですが、日本語にすると“すっぽかす”という意味です。
私自身も内見をすっぽかされたことが何度もあります。慣れるまではとてもイライラして1時間以上待つこともありましたが、何回か経験するうちに、10分くらいしたら今日はもう来ないだろうと諦めるようになりました。
外国人専門の家賃保証会社、GTNの担当さんと飲み会をした時、「ノーショウ」の話をすると、ゲラゲラと笑って「よくあるよね」と言っていました。日々、外国人を相手にしている彼らは慣れっこなようです。
それ以来、私も外国人内見希望者とのアポイントでは、相手を予期せぬプレーをするサッカーの10番、”ファンタジスタ”だと思って、芸を楽しむような姿勢で臨むことにしました。そうしないと心身が持ちません。
この他、外国人は内見の際に謎の人物を連れてくることがあります。誰が入居者希望者なのかわからないので、住みたい人は誰で、誰が友達で誰が通訳か、あれこれと事前確認をするという工程を最初に挟むことになります。
多い時は、単身の部屋の内見に7人で来たケースがありました(笑)。一人だと心細いのかもしれません。友達も仲間の日本での物件探しに興味津々なのでしょう。
■ダイナミックプライシング
次に、外国人の家賃の支払い方についてです。人種や年齢、独身かファミリーかにもよりますが、家賃保証会社に入っていない場合、滞納は時々発生します。特にブルーカラーの労働に従事している方々は母国への仕送りもあり、家賃交渉をしてくることも珍しくありません。
交渉ベタな日本人とは違い、海外には交渉を好む文化を持つところもあります。手集金の場合は口頭で交渉をしてきますが、振込の場合は「実際の家賃より少ない金額」を不動産会社の口座に入金してくることで、交渉のとっかかりにしようとすることがあるので少し厄介です。
不動産会社の人は予定通りの金額が振り込まれないので、最初は困惑します。事情を聞きに行くと、あれこれ言い訳する人、本当に資金繰りが大変だからと値引きを希望する人など、様々です。
私はこれを”勝手にダイナミックプライシング”と呼んでいます(笑)。当然ですが、こういったリクエストをすべて受け入れるわけにはいきません。滞納があった際には不動産会社の人と連携し、「支払い計画」を作り、入居者に合意してもらうことが、対応の肝となります。
■予定通りに来日しない、できない
来日予定の入居者から申し込みが入った場合、入居予定日がずれることは当たり前に起こります。これは、日本の入管のビザを下ろすスピードに関わる問題です。
コロナ禍が明けましたが、入管の審査スピードは、日本で学びたい、働きたい外国人の数に対して未だに追いついていないようなのです。他に、飛行機のチケットが取れないという問題もあります。
政情が不安定な国からくる外国人にも注意が必要です。母国が出国を許さない場合があるからです。過去に、日本在住の信頼できる元入居者外国人からの依頼で、彼の友人の為に急いでリフォームをして部屋を用意したものの、3回延期となった挙げ句に結局来日せず、ということもありました。
■ミャンマー人18人の急襲を受けた不動産屋さんの話
私は大家という立場であり、用意できる箱は限られているので、こういった経験の数には限りがあります。しかし、これが外国人に部屋を仲介する不動産屋さんになるとかなり大変です。
ある会社さんの例ですが、地域の日本語学校の担当者から、「明日、ミャンマー人8人が不動産屋に行くので、部屋を準備してほしい」という連絡が入りました。ところが、翌日の約束の時間に誰も来ませんでした。
日本語学校の担当者からのお願いなので、ノーショウはないだろうと思い、待っていたら、2時間後に12人のミャンマー人がやってきたそうです。さらにその2時間後には6名追加となり、合計18名のミャンマー人の受け入れ先を1日で探す羽目になったといいます。
その不動産会社さんは、シェアハウスを自社で複数保有しており、たまたま空室があったため、なんとか翌日までに保証会社の審査を通して、全員を無事に受け入れることができました。この不動産屋で部屋が決まらなかったら、どうするつもりだったのでしょうか?
また、もしも他社物件への仲介契約となった場合、18人のミャンマー人にどうやって重要事項を説明するのでしょうか?日本人からすると難しいミャンマー人の名前を契約書に記載するだけでも一苦労のはずです。
■在留外国人との付き合い方は”風の時代”を参考に
時流を示す言葉は沢山ありますが、私は最近“風の時代”というワードに注目しています。
参照:風の時代
https://www.villalodola.jp/magazine/column-085/
この解説の中で、風の時代を次のように表現しています。
私は、この”風の時代”の説明が、在留外国人と私達日本人の関係を表すのにピッタリだと感じます。
“自分が好きなことや、やりたいことを素直に行動する”ことを重視する外国人に対し、我々日本人は、“知性・コミュニケーション”を生かして柔軟に対応することで、うまく事を進めることができます。
”予定通りにいかない”彼らの行動は時に非常識に映ります。そんな時、感情的になって拒絶するのではなく、彼らの巻き起こすファンタジスタな行動に懐深く“柔軟に”対応し、それを楽しむくらいの姿勢で対峙することが、これからの日本社会には必要なのかもと感じています。
在留外国人は、日本でどんどん増え続けています。現在は外国人賃貸に関わっていないという方たちも、今後は望む・望まないにかかわらず、彼らとの接点が増えていくでしょう。
その日が来た時、どんなスタンスで向き合っていくのか。今のうちから準備をしておくことが大切ではないでしょうか。私の経験が、皆さんの参考になれば幸いです。