皆さん、こんにちは。満室研究所所長の山岡清利です。
今回は物件の共用階段の鉄部錆補修を取り上げてみます。
外階段や外廊下があるオーナーの皆さん、所有物件の鉄部腐食具合を把握していますか?
数年前、外階段の鉄部腐食を放置し抜本的な安全対策を怠った事故が多発しましたが、あれヤバイですよね。
- 2020年10月
北海道苫小牧市にある築約25年の木造アパートの外廊下の床が崩落、2階に住む家族5人(女性4人と乳児1人)が重軽傷を負うという事故が発生。 - 2021年4月
東京都八王子市でアパートの外階段が崩落、住人の女性が死亡する事故が発生。 - 2022年7月
北海道札幌市でアパート2階の通路の崩落、59歳の女性が腐食した床を踏み抜き大怪我を負う事故が発生。
これ以外にも、日本全国の賃貸アパートやマンションでの外階段・外廊下の崩落事故が発生、または発生予備軍化しており油断できません。事故が起こってからでは遅すぎますので、大家たる者一度点検や現場確認をすべきです。
■階段工事補修の実例紹介
というわけで、今回は外階段崩落事故を危惧し事前に補修した案件をご紹介します。
友人であるこの物件のオーナーは、物件の資産向上に意欲的で、「各所のダメージが酷くなる前に手を打ちたい」ということでした。
階段の事故は基本的に、鉄部の錆が深部まで進行して加重に耐えらなくなったのが主な原因です。こんなものは、錆の進行が少ないうちに予防・対応すれば良いのですが、コストがかかるため、補修を先延ばしにするオーナーも多いんですよね。(苦笑)
補修箇所や腐食が限定的なうちに補修したほうがローコストで済むのですけどねぇ~。
そういった意味では、このオーナーはしっかりとした方だと思います。
早速、階段を見ていきます。
ぱっと見たところ、大きな問題はなさそうですが、じっくり見ると、鉄柱に錆や腐食が出ているのがわかります。
2階の床とアクリルパネルを支えるアングル部分の塗膜が剥がれ、錆が進行しています。
別の個所も錆が浮いてきていますね。
1階鉄階段のドン付きは、風雨雪が回ってひどい錆害が出ています。
こちらの写真、シートがプカプカと浮いているのがおわかりでしょうか?これは雪国特有のもので、雪融け水がステップ内部にしみこみ、再凍結して爆裂を起こし、化粧モルタルを破壊することによって起きる現象です。
今回は塗装工事が入りますので、ついでにこのステップ部分のシートも貼り換えることにしました。この状態でも耐久性に問題はないのですが、赤錆の錆垂れ痕もあって見栄えが悪く、空室の入居付けにも影響を及ぼす可能性があると考えました。
また、これ以上の腐食の進行を止めるためにも、先手を打って補修工事を行う事にしたのです。
■実際に行った工事
こうした鉄部錆補修工事ですが、単に錆を隠すために上塗りをする付け焼刃的な工事ではなく、赤錆の再発を長期間防ぐ工事を行う必要があります。
赤錆はそのままで上塗り塗装をしても意味がありません。錆の進行を止めるには、憎い赤錆を中和する必要があります。その具体的な方法ですが、赤錆を中性化させる「錆転換剤中性化剤」を使います。
今回工事で使用した錆転換剤中性化塗料は関西ペイントのエスコラストフリーザーという物で、ケレン後(グラインダーや鉄ブラシで古い塗膜を除去したりボロボロの赤錆を削る下地処理の事)の腐食部分に塗装すると赤錆を黒錆化(※)し錆を固定化し錆の生成を止めます。
簡単に言うと、腐った患部をこれ以上腐らない状態にしてくれる魔法の液です。
※黒錆とは
防錆効果の一つで、人工錆です。 身近な黒錆として例を挙げれば鉄砲などの鉄部はすべて黒錆加工されています。
この黒錆は余計な水分や酸素が付着するのを防ぐ、酸化鉄被膜を構成し自然錆である赤錆の腐食を止め 新たな錆を防ぐ予防効果があります。
その後、同じメーカーから出ているエポキシ系錆止め塗料(ザウルスEX2)を重ね塗りすることで錆止め効果を強化しつつ、最後に塗る仕上げ塗装の下地を作ります。
このザウルスEX2は、エポキシ系の塗料なので、仕上げ塗料のアクリルウレタン系塗料と相性が良いのです。また、強力に接着して長期間塗膜が鉄部を保護してくれるという特徴もあります。
最後の仕上げ塗料は、これも同メーカーのアクリルシリコン系ルーフ用の中から、好みの色を選び塗装して完成です。(今回の工事ではスーパーシリコンルーフペイントのビスタブラン色を選びました)
大まかな工事の流れ的はこんな感じ♪
《作業項目》 | 《効果》 | ||
① | ケレン作業 | ⇒ | 旧塗膜除去 赤錆除去 |
↓ | |||
② | 錆転換剤中性化塗料を塗布 | ⇒ | 大元の赤錆を固定化し患部錆止め |
↓ | |||
③ | エポキシ系錆止め塗料塗布 | ⇒ | 全体の錆止め強化+下地作り |
↓ | |||
④ | アクリルシリコン系ルーフ用塗料塗布 | ⇒ | 仕上げ塗装 |
このように、3回の効果が異なる塗装作業を行う必要があります。最後の仕上げ塗装は、重ね塗りする事で、塗膜が厚くなりより強度が上ります♪
本来は、こうした行程を得て補修を行うのですが、極端に安い価格の会社は腐食部分のケレン作業をした後に、いきなり化粧塗装を施して終了という省略バージョンで終わってしまうことが多いので注意が必要です。
そうした塗装法ですと、1~2年はもつでしょうが、塗膜の中で赤錆が生きているので、遠からずまた同じ状態に戻ります。見積や作業書に、必ず錆転換剤中性化塗装のひと手間が入っている業者さんを選ぶ事を強くおすすめします。
ちなみに今回の工事は、物件ゲート塗装(足場有)+1階部分の鉄部塗装+1階部分の階段長尺シート貼替えの3つの工事で費用は約70万円(税込み)でした。物件ゲート塗装工事がなければ約50万円です。
さて、無事に作業が終わると、こんな感じに仕上がりました♪。
ビフォー ⇒ アフター
ビフォー ⇒ アフター
ビフォー ⇒ アフター
ビフォー ⇒ アフター
階段ステップは長尺シートを張替えました。
今回の塗装で物件の雰囲気が向上しましたし、階段ステップも綺麗になったので空室対策としても有効に作用する事でしょう。
■まとめ
業界には沢山の塗装業者さんがおられ、低価格の見積で仕事を取りとりあえず見た目良く仕上げるだけの業者さんもいます。不動産投資は長期戦です。せっかく費用をかけてキレイにするのですから、長期間その状態を保てるような工法を選びましょう。
鉄部錆補修工事の肝は
錆を単に隠すのではなく
錆を元から断たなくてはダメ
自己物件を事故物件にしないために、一度外階段/外廊下の鉄部腐食を確認してみてはいかかでしょうか? 有物件の鉄部腐食が激しく補修工事する際、見積書に先に紹介した錆転換剤中性化塗装の作業項目があるかないかを、必ず確認する事を強くおすすめいたします。
<おまけ>
塗装業者さんに使用する塗料が同じメーカーであるか確認する事も仕上がりに影響しますので是非してみてください。やはり同じメーカーの塗料の方が、塗料同志の愛称が良く塗料の食いつきが確実に強いです。
それは塗膜の耐久性に影響が出てきますので、できるだけ同じメーカーの塗料で工事を完結する事もおすすめいたします。
皆さんの不動産投資の参考になれば幸いです。
次回もお楽しみに~ 。