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LPガスへの費用上乗せ禁止 2025年に前倒し!家賃値上げなど迫られるか

政策(不動産投資関連)/法改正・制度変更 ニュース

2023/11/29 配信

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LPガスをめぐる制度改正で家賃アップなどの対応も

エアコンなどの設置費用をガス料金上乗せする慣行にメス
オーナーは家賃を安くでアピールできるメリットがあった

入居者が支払うLPガス(プロパンガス)の料金に、ガス利用と関係のない費用を上乗せする商慣行の禁止が、もともと決まっていた時期より2年前倒しの2025年から行われる方向になった。

この商慣行では、エアコン、給湯器などの設置費用を物件オーナーはかぶらなくていいため、不動産投資をやっていく上での「お得なスキーム」として有名だった。

しかし、2025年の禁止後は、すでに貸している物件の家賃を上げなければならないなどの対応を迫られる可能性もある。今後の制度改正の議論に注目していきたい。

この問題は、今年7月2日配信の「LPガスめぐる制度改正で不動産投資家は費用増も!入居者負担の慣行見直しか」でも紹介した。

簡単におさらいすると、この商慣行は次のようなものだ。

LPガス会社がある賃貸物件で自社のLPガスを契約して使ってほしい場合、オーナーに対し、「エアコン、給湯器、インターホンなどの設置費用を自社で負担する」と営業活動で持ち掛ける。

オーナーはお金を負担せず、これらの設備を物件に取り付けることができる。かかった費用を家賃に上乗せする必要もなく、低めの家賃を入居者募集にあたってのアピール材料にできる。

一方、LPガス会社は、かかった費用を、入居者が支払うガス利用料金に上乗せして回収する。その分、ガス料金は高くなるが、費用が上乗せされていることは明示されていない。結局、家賃が安いからと入居した人も、ガス料金が高く設定されたぶん、負担する額は同じということになる。

昨今のエネルギー高騰でLP利用料金の高止まりに批判
2025年から「基本料金」「従量料金」「設備料金」の明示必要

ただ、最近のエネルギー価格の値上がりに加え、LPガスには政府の補助金が出ておらず、都市ガスとくらべたLPガス料金の高さが大きな課題となっている。その中で、これまで述べてきたような商慣行が問題視されるようになってきたといえる。

その後、7月24日の経済産業省の作業部会で、対応する省令を改正し、ガス利用とは無関係の費用を入居者の支払うガス料金に上乗せすることを禁止すると表明された。違反したLPガス会社には罰則が科されることになり、2027年度からのスタートとなった。

しかし、11月22日に開かれた作業部会では、この施行時期を2年早め、2025年からとした。2027年のスタートでは時間に余裕がありすぎ、禁止前にLPガス会社が駆け込みでLPガス設置に動くことが懸念されたからだ。実際、すでに駆け込みによる混乱が起きているという。

経産省の資料から
経産省の資料から

新しい制度が始まれば、ガス料金は「基本料金」「従量料金」「設備料金」の3種類になる。

「基本料金」は、容器、メーターといった設備などの費用や設備点検、検針の費用など、ガスの消費量が多いか少ないかにかかわらず生まれる固定的なコストだ。

「従量料金」は、ガスの原料費や配送費など、ガスを使った量に応じて生まれるコスト。

「設備料金」は、個別の契約にもとづき、配管やガス器具といった、ガスを消費するときに使うものの利用に応じて生まれるコストだ。

LPガス会社は、ガスの利用者(入居者)に料金を請求するとき、この3つについて、算定の根拠を示さなければならない。また、「設備料金」には、配管、ガス器具といったガスを消費するときに用いられるものの利用料金以外を請求してはならないとした。

ただ、集合賃貸住宅などは、ガスの配管などガス消費に使うもの、エアコン、インターホンなどガス消費以外に使うもの、ともに、その設置コストが「家賃」に含まれるものとした。実務的には、入居者に料金の通知が行くとき、「設備料金」の項目は「該当なし」となる方向だ。つまり、物件オーナーは、これらの設置コストの負担を、LPガス事業者に頼ることができなくなる。

既存契約も、制度開始後に更新すれば規律の対象に
年内に作業部会が報告書 詳細は議論が進む見込み

不動産投資家にとって気になるのは、今後、物件を貸していく上で、実務上どういう対応が求められるかだ。

2025年にこの制度が始まった後に結ぶ新規の契約であれば、あまり疑問はないだろう。もはやLPガス会社に設置費用を負担してもらうわけにいかず、初めからその分を家賃に上乗せしたり、家賃に上乗せせず自分の懐を痛めたりして負担しなければならない。

では、すでにガス料金に設備の設置費用が上乗せされている既存契約はどうか。

経産省が制度改正の議論を進めている
経産省が制度改正の議論を進めている

7月24日の作業部会では、経産省側から、「過去の行為にさかのぼって禁止義務をかけるものではない」としつつ、「既存の契約であっても、施行後の契約更新のタイミングでは、この規律の対象になる」との考え方が示されている。つまり、今の契約が続く間はいいが、契約更新をするときに、家賃に上乗せするかなどの対応を考えなければならないということになる。

一方で、経産省側は「いろいろ、対応の方策としてありうる」「実際にどう対応していくかは、事業者と議論していきたいと思う」としている。

地方では、貸している物件にLPガスを設置している不動産投資家も多いだろう。作業部会は年内にも報告書をとりまとめる予定だが、議論の行方がどうなるのか、しっかり見ていきたい。

取材・文:小田切隆(おだぎりたかし)

■ 主な経歴

経済ジャーナリスト。
長年、政府機関や中央省庁、民間企業など、幅広い分野で取材に携わる。

■ 主な執筆・連載

  • 「経済界」(株式会社経済界)
    「月刊経理ウーマン」(研修出版)
    「近代セールス」(近代セールス社)
    ニュースサイト「マネー現代」(講談社)など

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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