川口市で条例が24年4月に施行へ 4戸に1戸の割合で設置
サイズは縦+横+奥行きが100センチ程度
埼玉県川口市が2023年の12月議会で、新築のワンルームマンションへの宅配ボックス設置を建築主らに義務付ける条例改正案を可決した。施行は24年4月1日からとしている。
残業規制の強化で物流業界のドライバーの人手不足が心配される「物流2024年問題」へ対応することが目的だ。24年問題は全国的な課題である一方、単身世帯がすべての世帯に占める割合も全国的に増加を続けており、ドライバーに無駄な再配達を強いる問題は今後も頻発する恐れがある。つまり、川口市のような条例は今後、全国に広がる可能性があり、新築賃貸物件のオーナーは対応が必要となる。
既存の物件を貸しているオーナーも、入居者からのニーズが高まるかもしれず、今のうちから心構えしたい。
川口市の条例案をみると、次のように規定している。
「建築主等は、ワンルームマンション等の建築に当たり、当該ワンルームマンション等の敷地内に、ワンルーム住戸の数に応じて必要な数の宅配ボックスを設けなければならない」
対象と想定しているのは、40平方メートル未満の部屋が15戸以上あるワンルームマンション。敷地内に4戸に1戸程度を設置することを義務付ける。宅配ボックスのサイズは、縦、横、奥行きの長さの合計が100センチ程度としている。
ただし、次のように、この義務から逃れられるケースもある。
「宅配トラック等の駐車又は停車による当該ワンルームマンション等の周辺の交通への支障を生ずるおそれが少ないと市長が認める場合は、この限りではない」
義務付けられるのは建築主や施工業者
川口市は単身世帯39% ドライバーの再配達回避
義務付けられるのはワンルームの建築主や施工業者だ。違反した人に対しては、勧告、命令、公表の罰則を設ける。
20年の国勢調査によると、川口市の総世帯数は26万6756。これに対し、単身世帯は10万3176と、約39%を占める。西側口駅周辺などでは、さらに新築マンションが増えうると指摘する声もあり、単身世帯は今後も増える可能性もある。
川口市が条例を設けるのは、人手不足に苦しむ宅配ドライバーが、住人の留守中に運んできた荷物を持ち帰って再配達する無駄を避ける狙いがある。さらに、宅配ボックスがないためにゴミが散乱するなどの問題を減らしたい目的もある。
意義ある取り組みといえるが、一方で、宅配ボックスの設置には費用がかかる。補助金のあり方などもこれから問題になってくる可能性がある。
東京都江東区でも25年1月から 15戸以上などのワンルームで
政府、置き配ポイントなどで本腰 オーナーは動向注視を
一方、川口市に先んじて同様の規制に乗り出したのが東京都江東区だ。
江東区が25年1月1日から施行の改正条例では、新築ワンルームマンションの部屋数の1割以上分の宅配ボックスを設けるよう義務付けた。計算して少数点となるときは、切り上げを行う。
江東区のいうワンルームマンションは、次の3つの要件をすべて満たす共同住宅などのことだ。
①「地階を除く階数が3以上であること」
②「 住戸の数が15戸以上であること」
③「住戸の数の過半数以上がワンルーム住戸であること」。
江東区がこのような規制をおこなうのは、やはり川口市と同じく、24年問題によるドライバー不足に対応するためだ。
ちなみにこの条例では、新築マンションの一部のファミリー向けの住戸を設置することも義務付けている。
以前、江東区では子育て層の増加にともない、小学校や保育所が足りなったことを受け、家族向け住戸の増加を抑える規制をおこなった。しかし近年、小学校や保育所が増え、待機児童もゼロになったことから、家族向け住戸の供給を増やす方向にかじを切った。
物流業界の24年問題を政府も深刻にとらえており、たとえば「置き配」を選んだ宅配サービスの利用者にはポイントを付与するなどの政策もおこなっていく方針だ。
宅配ドライバーの負担を軽くするため、宅配ボックスの設置に対するニーズが高まっていく可能性があり、不動産投資家はその動向をしっかりチェックしていきたい。
取材・文:
(おだぎりたかし)