猛暑の影響で、省エネ性の高い賃貸住宅が見直されていることや、省エネ性の高い窓にリフォームする際に利用できる補助金などここ最近取り上げてきた。
こうした住まいの省エネ化の波が加速しそうなニュースがある。9月25日、国土交通省は、2024年4月以降、新築の建築物の販売・賃貸の広告等において、建物の「省エネ性能の表示」を努力義務とするとし、ガイドラインを公表した。
これにより消費者が建築物を購入・賃借する際に、省エネ性能の把握や比較ができるようになる。制度開始に合わせ、来年4月から「不動産情報サイト アットホーム」でも賃貸住宅の省エネ性能の表示を開始する予定だと発表した。
本制度施行に向けて、不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)を通じて協力した、アットホーム株式会社のネットワーク推進部門 執行役員 部門長 松浦 翼氏の話を交えて、賃貸オーナーとして知っておきたい制度のポイントを解説する。
「建築物省エネ法に基づく建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度」とは?
すでに家電量販店などでは家電の省エネ性能を★の数で表示するなどして、省エネ性能が高いのか低いのか、わかりやすく消費者に示してきた。それが今後、新築で販売される分譲住宅や、賃貸される物件でも、同様に省エネ性能を広告等に表示することが販売業者や広告業者に義務付けられる。
制度開始の2024年4月以降、事業者は新築建築物の販売・賃貸の広告(具体的には新聞・雑誌広告、チラシ、パンフレット、インターネット広告など)において省エネ性能ラベルを表示することが必要となる。
住まいやオフィス等の買い手や借り手の省エネ性能への関心を高めることで、省エネ性能が高い住宅・建築物の供給が促進される市場づくりを目的としている。※参考資料:国土交通省ホームページ
本制度施行に向けて、不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)を通じて協力をした、アットホーム株式会社 ネットワーク推進部門 執行役員 部門長 松浦 翼氏は次のように語る。
「脱炭素社会の実現に向けて、不動産事業者では省エネ性能を意識した住宅の建築・取引が進んでおり、また近年消費者の省エネに対する興味・関心も高まっています。
不動産事業者が広告時等で省エネ性能表示を積極的に行い、消費者が住まいを探す際に省エネ性能の高い住宅を選択できるようになることが求められています。
アットホームでも全国60,000店以上の不動産会社が加盟・利用する不動産情報ネットワークを通じ、省エネ性能の高い住宅の流通活性化に寄与してまいります」
本制度が施行された背景には、2050年カーボンニュートラル・2030年温室効果ガス46%削減(2013年度比)の実現に向けて、改正建築物省エネ法にて2025年4月より全ての新築住宅・非住宅に省エネ基準適合が義務付けされることになったことが影響している。
2025年の適合義務化に先立ち、本制度がスタートすることになった。
すでに住宅を購入した人の約5割が省エネ性を重視。
入居者の省エネ性能に対する期待が高まっている
実際のところ、昨今では国民の省エネに対する意識も高まってきている。2023年6月に発表されたアットホームの調査<下図参照>によると、「省エネを意識して住まいを探した」という住宅購入経験者は約5割、「省エネを意識して住まいを探している」という住宅購入検討者は約7割と住まい探しにおいて省エネ意識が高いことがうかがえる。とはいえZEH、BELS、HEMSといった省エネ住宅に関する専門用語への理解はまだまだ低い。
では具体的に、アットホームでは、賃貸住宅の省エネ性能を今後どのように表示していくのだろうか?
「2024年4月より、『不動産情報サイト アットホーム』の物件詳細ページ内において、省エネ性能ラベルの表示を開始します。不動産会社は、物件の省エネ性能評価をもとに自己評価・第三者評価のいずれかの方法で発行したラベルを掲載でき、物件の省エネ性能を分かりやすく消費者に伝えることができます。
消費者は物件画像と同様に、一目で物件の省エネ性能を把握することが可能です」(アットホーム広報)
さらに2024年秋頃には物件詳細ページ内の物件概要欄において、省エネ性能に関する詳細の表示を予定しているという。
※画像出典:アットホーム
賃貸住宅選びに、建物の「省エネ性能」が判断材料として加わることで、入居者にとっては有益な情報がえられ、便利になることは確かであろう。
一方、賃貸住宅オーナーとしては、住まいの省エネ性能が劣るようでは、入居率ダウンにつながる可能性も否めない。これまで以上に所有する物件の「省エネ性能」を意識していく必要がありそうだ。