前回のコラムでは、『消防点検』から『女性社員さんに相談してリフォームプランを作成』したことまで、業者さんや管理会社の社員さんの力をお借りしながら行ったことを書いてみました。
今回は、仮設倉庫を造ってリフォームに必要な部材を保管したことなど、リフォームの裏側の話と、リフォームが終了してからの最終的な利回りや返済比率について書いてみます。
■部材置き場として仮設倉庫設置
36戸全空物件は、戸数が36戸もあるので、たくさんの設備や部材を使います。エアコン36台、洗面台36台、流し台36台、便器36台等々、全ての部材や設備が36台か36の倍数分必要です。
重い部材を大量に使うので、その都度、注文をして運び込んだりするのは効率的ではありません。そこで、プロパンガス屋さんの提案で、リフォーム工事を始める前に大工さんに仮設倉庫を造っていただきました。
駐車場の柱を利用した倉庫です。ネット等で注文した部材は、この倉庫を届け先にして、配送業者さんに直接運び込んでもらいました。
配送業者さんには申し訳ないと思いましたが、重い洗面台や便器などを直接搬入してもらいました。おかげで職人さんが搬入のために作業を中断する必要がなくなり、とても助かりました。
仮設倉庫の内部はこんな感じです。写真は、私が購入した施主支給の洗面台です。6m×6mの倉庫ですから、かなり余裕あるように思いましたが、いつも部材でいっぱいでした。
■古いエレベーター問題
この物件にはエレベーターがついていました。管理会社さんと話し合い、エレベーターは廃止する方向でした。でも、「4階建でエレベーターがないというのは、4階の入居付けが厳しいのでは?」という思いは消えませんでした。
私は多少の工事費用で済むなら、エレベーターを復活させたいと思いました。エレベーター会社にお勤めの大家さん志望の若者に現地を見てもらうと、「この状態ですと、エレベーター設備は全部入れ換えが必要ですね」と言われました。
そのためには2,000万円以上かかりそうということでした。その瞬間、躊躇なくエレベーター廃止の決断をしました。
各階のエレベーターは、存在がわからないように壁でふさいでしまいました。1階のエレベーターの入り口は、壁でふさいで、さらに集合ポストを設置しました。ここにエレベーターがあったとは誰も気づかないでしょう。
赤色のラインがエレベーターの入り口でした。
■管理会社さんの提案で、モデルルームを作って募集開始
近くの大学の農学部の1年生が、本格的に部屋探しを始める6月が近づいてきましたが、リフォームは始まったばかりです。当然、一部屋も完成していませんから、学生さんが見学できる部屋はありません。
それどころか、トイレや押し入れは壁なし床なしのスケルトン状態で、キッチンは流し台を撤去して、給排水管がむき出しの状態です。そんな部屋を見せたら、学生さんに引かれてしまって、本来決まるものも決まりません。
そんな中、管理会社さんから、「見学できるモデルルームを1部屋でもいいから造ってください」と言われました。
そこで内装屋クンにお願いして、2部屋のモデルルームだけ先に内装を完成させてもらいました。2部屋のモデルルームを造ったのは、部屋の構造上、流し台の向きが違う2つのタイプの部屋があったからです。それぞれ、モデルルームを作りました。
大工さんにもお願いして、木工事を先に2部屋だけ済ませていただきました。給排水管の工事は終わっていないので、設備屋さんに洗面台、流し台、便器等をそれらしい位置に置いてもらいました。(当然ですが、どの設備も実際には使えません)
管理会社の営業さんには、このモデルルームを使って学生さんを案内していただきました。
結果的に、このモデルルームと管理会社の営業さんの力で、奇跡のように入居予約が進みました。
管理会社の営業さんは、学生さんが部屋探しをしている期間中、週末を中心に1日に数人の学生さんを案内してくださいました。そのことが、現場で働いている職人さんたちの大きな励みになったようです。
■地方では学生も駐車場必須!駐車場不足への対応
この36戸全空物件には駐車場が24台分しかありません。学生物件だから駐車場は必要ないとい思うのが普通ですが、信州大学農学部の学生さんはほぼ全員が車を持っています。この地方では車がないと生活できないからです。
公共交通機関は、ほぼありません。坂道だらけで自転車だけでは厳しいものがあります。学生さんの多くは大学も買い物も車で行きます。そんな事情で、不足分の12台分の駐車場を増設して、合計36台を用意する必要がありました。
ちょうど、建物の裏側に放置プレーされた土地がありました。
ここを整地してアスファルト舗装をして、12台分の駐車場を作りました。写真を撮影したのは舗装工事が終わったばかりで真っ黒ですが、後日、白線を引きました。
■一度は予約ベースで満室
私はこの物件を買った時、1年目で12戸、2年目で24戸、3年目で36戸満室になればいいと考えていました。管理会社の営業さんは、「今年は、15室は決めます!」と言ってくださいました。
そして、すごいペースで入居予約を決めていき、目標の15室はサラッとクリアーしました。さらに、入居予約は進み、入居予約が20室を超えるころには、「年内に満室にします!」と心強いことを言ってくださいました。
そして、11月には入居予約ベースで満室になりました。なんと、3年で満室にする予定が、1年で達成してしまったのです。奇跡を起こしてくださった管理会社さんには、本当に感謝しています。
あとは、留年で学部に上がってこれない学生がいない事を願うだけです。と言いながらも、1年で教養部を留年する学生は、一学年に1人いるかいないかという程度と聞いていたので、大丈夫だろうと思っていました。
しかし、この原稿を書いている最中に、「留年で一部屋キャンセルになりました」という不幸な連絡がありました。こんなことがあるなんて…。しかし、すぐに新たな学生さんの入居者を決めていただきました。
■水道管の凍結破損
先にできた2戸のモデルルームのおかげで36室の入居予約をいただけたこの物件ですが、今ではほぼ全ての部屋の工事が終わりました。農学部の現2年の学生さんが4名入居してくれましたから、正確にはもう全空物件ではありません。
アクシデントもありました。4階の水道管が数カ所破裂し、4階から3階、2階へと水が伝ってしまったのです。凍結防止帯をまいて通電していても、水道管が凍結で破損するのですから、人が住んでいない鉄骨造の建物の冷え方がいかに厳しいかがわかります。
入居前の空室での凍結破損だったので、入居者様と入居者様の家財に被害がなかったことが不幸中の幸いでした。来年の冬は満室の予定ですから、建物全体が温まっていて凍結破損はないと思います。
余談ですが、12月から3月までの凍結防止帯の電気代は、1ヶ月10万円くらいかかります。入居者さんがいないので、すべて私の負担です。本当に厳しいものがあります。
■新2年生の25%が36戸全空物件に入居
信州大学農学部の新2年生は、毎年120人くらいいるようです。私の36戸全空物件には30人の新2年生が入居してくださいます。つまり、新2年生の4人に1人が、私の36戸全空物件に入居したことになります。割合では25%になります。
さらに言うと、アパートを探している新2年生は約80人で、他40人は自宅生や寮生だそうです。36戸全空物件の入居予定者30人の約80人に対する割合は、約37.5%になります。かなり高い割合だと勝手に思いこんで、自己肯定感を高めています。
今年度は、36戸全空物件がこの地域の大学生の入居に大きな影響を与えました。ある管理会社さんからは、「今年は学生さんの入居が決まらないけどパスカルさんの36戸全空物件の入居はどうなっていますか?」という質問をいただきました。
サラッと「満室です」とお答えすると、今年度の状況を納得されていました。こう書くと一人勝ちのようにみえますが、実はそうではありません。
この物件の近くにある、私の学生向けアパートで、学生の入居が決まらず、社会人の方に入居していただいた部屋が何部屋かありました。自分で自分を苦しめたようなものです。板の薄い田舎では、このように一つの物件からの影響を受けることがあります。
■ほぼ完成後の利回りと返済比率
気になる利回りですが、支払い済みの金額と見積の金額を参考にして計算すると、28%~32%くらいになりそうです。(まだ届いていない請求書があるので最終金額は確定していませんが)
おそらく、最終利回りは30%を少し超えたくらいになります。
返済比率は約25%です。
私はロットの小さいアパートや戸建で利回り30%を超えた物件は何棟か所有していますが、一つが小さいので絶対的なキャッシュフローは大きくありません。
36戸全空物件は、私にとっては大型物件です。その規模で利回り30%、返済比率25%ですから、私の所有物件の中でも、キャッシュフローを大きく積み上げることができるとても重要な物件になりました。
最後に、この物件の再生にかかわってくださった、管理会社さん、プロパンガス屋さん、内装屋クン、設備屋さん、土木屋さん、大工さん、クリーニング屋さん、すべての業者さんに感謝です。
これにて、3回にわたって紹介した私の36戸全空アパートのお話は終わりです。皆様の参考になれば幸いです。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。