前編に引き続き、北海道在住で元役場職員のプーケット大家サクさんにお話を伺います。公務員を卒業した時の葛藤や、キャッシュで1億円以上を手にするまでの経緯、60歳になったら不動産投資をやめたい理由など、自由を愛するサクさんらしさが感じられるインタビューです。
華子
FIRE時はキャッシュフローが月に120万円あったそうですが、それでも公務員を辞める時には不安もあったのでは?
プーケット大家サクさん
ありましたよ。退職届を出す時は震えましたもん。あんなに辞めたい辞めたいと思っていたのに、自分で退職届を書いて机の中に入れてから、実際に上司に出すまでに1ヶ月もかかりました。タイミングを見計らっていたんですが、将来の不安のせいもあったと思います。
ただ、思い切って退職届を提出したら、副町長から「サク君の穴を埋めるために1人募集しなきゃいけないじゃないか」と言われて。その時に、そうか、僕は職場から見たら一つのコマにしか過ぎなかったんだな~と実感しました。
華子
サクさんが仕事を辞めたかった理由は何ですか?
プーケット大家サクさん
一番の理由はいつでも海外旅行に行ける状態を作りたいと思っていたからです。僕は20歳からプーケットに通いだして、これまでに合計50回ぐらい行っているくらい、プーケットが好きなんです。
そのプーケットに一番安く行けて水かけ祭りが開催される時期が4月です。でも、公務員をしていると4月は異動の時期で、忙しくて休みが取れません。
僕は若い時に、「きっと日本も将来は欧米のバカンスみたいに、1ヶ月間くらいの休みが取れるようになるだろう」と思っていたんですよ。ところが実際には真逆の方向に行ってしまい、これはいかんぞという気持ちでした。
1回くらいは退職前に長期休暇を取ってみたいけれど、それを実現するには職場を辞めるしかない状態でした。それで、生活資金の2倍以上のキャッシュフローができたので、退職を決意しました。
華子
プーケットの良さを教えてください。
プーケット大家サクさん
20歳の時に親に連れて行かれて初めて行ったのですが 30年前のプーケットはめちゃくちゃでした。人間もすごいいい加減だし、嘘ばっかりつくし、仕事もしていない人ばかり。すごいカルチャーショックでした。
僕は真面目な公務員一家に育ったので、真面目が一番という思想がありました。でも、プーケットに行って、「人間はこんなテキトーで全然問題ないんだ」と思ったんですよ。あのグダグダ感が大好きです。プーケットは第二の実家という感じです。
華子
仕事を辞めた時のご家族の反応はどうでしたか?
プーケット大家サクさん
妻には信頼してもらえていたので何も問題はなかったです。ただ、僕の両親に話した時は「何をバカなこと言ってるんだ」と言われました。うちの父親は、公務員一筋で生きてきたので、働かないことが悪だという考えだったんです。
ただ、父親は昨年亡くなったんですが、僕が病院に連れて行くなど、FIREしてから色々とサポートできたので感謝してくれました。そして、亡くなる 1週間前に「お前のことは心配していない。頑張ったな」と言ってくれました。最後に認めてもらえて、すごく嬉しかったです。
■60歳までには不動産投資を辞めるか大幅に縮小していたい
華子
現在、51歳ということですが、不動産投資はいつまで続けられる予定ですか?
プーケット大家サクさん
60歳になったら不動産投資の規模を大きく縮小するか、きっぱりやめようと思っています。
華子
なぜ縮小されるのですか?
プーケット大家サクさん
いくつか理由があるのですが、1つ目は年を取ると記憶力や判断力が鈍るので投資成績が落ちると思うからです。2つ目は、公務員の60歳定年制のように60歳で仕事を引退したいからです(笑)
最後の3つ目は、これが一番の理由なんですが、年を取ってからは感情を安定させて生活したいからです。退去や夜逃げ、また部屋をぐちゃぐちゃにされたりすると嫌な気持ちになりますよね。
負の感情をなるべく持ちたくありません。老後は気持ちをフラットにして生きていたいと思っています。あんまりこうやって不動産投資の引退を考える人はいないかもしれませんが。
華子
確かにあまりいらっしゃらない気がします。
プーケット大家サクさん
60歳になったら夫婦二人ですし、 現金で3億円ぐらいあれば死ぬまで苦労しないだろうという風に思っています。僕はエクセルで不動産投資の収支や家計を管理しているんですが、大きな失敗がなければ60歳で3億円というのはかなり現実的な数字と考えています。
■現金を1億円作った理由
華子
サクさんは、現金で去年、1億円を作られたと聞きました。現金があると次の投資に回す方が多いと思うのですが、なぜあえて現金を1億円持ちたいと思ったんですか?
プーケット大家サクさん
その前に背景を説明すると、FIREした時には60室の規模だったのですが、その後でどんどん増えて100室 を超えたんです。僕は DIY をやるので規模が大きくなるにつれてどんどん忙しくなり、これは自分の理想の生活と違うと思うようになりました。
それで、2022年から2023年に物件をまとめて売りに出しました。個人で買って6年経ったものと、手間のかかる物件から売却していきました。それと、2017年に200万円分買った仮想通貨が値上がりして、2021年に税引き後4,000万円で利確できました。それらを合わせたら1億円になったんです。
2013年 → 350万円
2014年 → 500万円
2015年 → 750万円
2016年 → 900万円
2017年 → 350万円
2018年 → 1,100万円
2019年 → 2,900万円
2020年 → 5,400万円
2021年 → 7,600万円
2022年 → 6,100万円
2023年 → 11,000万円
2024年 → どこまで増える?
ちなみに仮想通貨の利益が出た年は日本赤十字社に750万円を寄付して、翌年に内閣総理大臣より紺綬褒章を受章しました。
華子
立派ですね。その1億円で何かをしようとは思わなかったですか?
プーケット大家サクさん
野村総研の「富裕層」のゾーンに自分の名前を入れたかった。というのは冗談です(笑)
高級なものが欲しいとか、そういう気持ちはないんですよね。今の目標は手間のかからない物件を増やすこと。それと DIY を外注にシフトしていって、自分の時間を増やしたいですね。つまんない男ですよね。
華子
とんでもない。満たされている感じがして、理想的です(笑)
■仲間を大事にしたい
華子
不動産活動を通じて大切にしていることはありますか?
プーケット大家サクさん
やっぱり 仲間を大切にすることです。まずは自分、次に家族、その次は仲間という感じで大切にしたいものの輪を広げて行っています。僕は帯広の大家さんが集まれる「カレー部」という会を主催していて、すでに80回以上開催しているんですよ。ちなみにカレー部ですが、カレーは一切食べません(笑)
帯広は陸の孤島なので情報も入ってこないし、大家さんも遊びに来てくれません。かといって、帯広の大家さんが外には出て行くこともないので、自分が帯広以外のセミナーに行ってたくさん友達を作り、その人たちに帯広に来てもらおうと考えてました。そうやって、お互いに行き来できる環境を作ることを意識しています。
華子
SNSなどでカレー部の活動のお写真を拝見しました。とても楽しそうですよね。
プーケット大家サクさん
そうなんです。最近は事務所を作り、そこに大家さんであれば誰でも泊まれるスペースを設けました。泊まりに来てくれた人に豚丼屋を紹介したり、北海道十勝の素晴らしい場所を案内したりもしています。地元貢献にもなればいいなと思ってます。
大家さんって、すごい人が多いじゃないですか。でも、僕のやっていることは誰でもできるようなことですし、そういう姿を見せて、若い大家さんには身近な目標にしてもらえたらいいなと思って活動しています。
全国から大家さんが遊びに来るサクさんの事務所
■不動産投資を頑張りすぎると後で辛くなる。
華子
今後の生活面での目標などはありますか?
プーケット大家サクさん
毎年目標を作っているのですが、一番の目標は妻孝行をすることです。今年、一人息子が大学進学で家を離れる予定なので、このタイミングで夫婦と愛犬でキャンピングカーで日本を好きな感じで回ろうかなと思っています。
2番目は頑張らないことを頑張ることです。僕は40代の前半までマラソンを走っていたのですが、フルマラソンは35km地点から急激に辛くなります。その35キロから先を走り切れるようにするために、35km 地点までは頑張るのを頑張らないようにする競技とも言えます。
僕の不動産投資をマラソンに例えると、今30キロ地点ぐらいだと思っているんです。ですので、35キロ地点までは頑張らないようにしたいと思っています。
華子
普通に不動産投資をしていると、頑張ってしまうということですか?
プーケット大家サクさん
そうですね。欲しいもので買えるものが来たら全部、買うという選択肢もあるじゃないですか。でも、そうやって頑張ってしまうと自分の時間がなくなってしまいますよね。
人生で必要なお金はもう足りているとわかっているので、無理をする必要はありません。僕はストイックに見られるより、ゆるく見られていた方が嬉しいです。
華子
最後に不動産投資でFIREを目指している方にメッセージをお願いします。
プーケット大家サクさん
今から不動産投資を始めたいのであれば、まずは頑張って1000万 貯めましょう。そして、一棟目はボロ戸建てからスタートしない方がいいと思います。拡大スピードが遅くなるからです。
築40年の物件を買って、あと何年賃貸に出せるかと考えると、10年ぐらいだと思います。築50年になった時に売れればラッキーですが、売れなければ壊して更地にして売ることになります。でも、安い戸建ては土地も安くて需要がないことが多い。そう考えたら、後で困るような気がします。
現金で買ったボロ戸建を担保に入れて、融資に活かすという方法もありますが、必ずそれができるとは限りません。僕もボロ戸建を持っているんですが、金融機関に抵当に入れてもらおうとしたら断わられました。
もし僕がボロ戸建てから始めるのであれば、法人でボロ戸建てを買って、直して、入居をつけて 即転売をします。それを繰り返して現金を貯めて、お金を借りて、アパートを買います。不動産投資はお金を借りてなんぼの商売です。お金を借りられなければ拡大は難しいと思います。
(編集後記)
全国の大家さんが泊まれるスペースを作るなど、仲間を大切にしている話は素敵ですね。不動産をマラソンに例えて「最初に頑張りすぎると後半が辛くなる」というお話も参考になりました。 プーケット大家サクさん、ありがとうございました!(いんべす)