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大家と借主は平等ではない!?

山村暢彦さん_画像 山村暢彦さん 第5話 著者のプロフィールを見る

2021/5/28 掲載

自ら大家としての経験も有する、不動産・相続トラブルに注力する弁護士の山村が、不動産トラブルを予防するために実話を基にした解決事例をご紹介します。

1. 大家業を営む上での心構え

今回は、アパート経営において基本的な「 大家と借主が平等ではない 」という部分を、裁判所の考え方を踏まえてご説明したいと思います。

「 貸したら借りたもののほうが強い 」「 貸したら返ってこない 」このように言われる不動産賃貸。ただ、何も法律も、一方をただえこひいきしているわけではありません。

法律ではどのような考えが基礎にあり、その結果「 不平等 」のようになっているのか。大家業を営む上では、心構えとしても知っておくべきだと思います。

2. もしも、大家と借主が平等だったなら

マンションの1室の賃貸借契約をイメージしてみましょう。月10万円の賃料、期間は2年間、このような内容が多いかと思います。

本来、賃貸借契約というのは、期間がくれば借りているものを返す契約です。そのため、2年の期間がきたら部屋を借りている人は、再契約できない限り部屋から退去して返さなければならない。これが本来の賃貸借契約です。

同じように、口座残高がたまたまカードの引き落としなどが重なり、賃料額を下回っていて、賃料が引き落とされませんでした。そうすると、「 賃料不払い 」という債務の不履行ですから、一般論としては、賃貸借契約を解除されてしまってもおかしくありません。これも、本来的な帰結です。

ただ、現実にこのようなことで、契約が更新できない、1回の不払いで退去させられてしまうとなると、借りている人は、明日から住むところを失ってしまいます。オフィスにしてもそうです。その会社は、明日から事業を営む基盤を失ってしまいます。

法律は、このような事態が借りている人にとって酷だと考えるのです。そのために、大家さんと借主との契約は、単純な賃貸借契約ではなく、「 借地借家法 」という特別法により、借主側の立場が強くなるように修正をかけています。

また、賃貸借契約の違反があった場合にも、「 信頼関係破壊の法理 」という理屈によって、借主側の立場を強く修正しています。

3. 「 借地借家法 」と「 信頼関係破壊の法理 」

具体的にどのように借主の立場を強く修正しているのか、見てみましょう。以下の条文が、建物賃貸借契約の更新の場面です。

( 建物賃貸借契約の更新等 )
第二十六条 建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の一年前から六月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする。

要は、何も連絡していなければ、従前の契約と同一条件で契約内容を更新します、という定めです。しかも、今度は「 期間は、定めがないもの 」とされてしまいます。結論から言いますと、ある意味無期限の契約になるようなものです。

「 だったら放置せずに、ちゃんと解約の連絡をすればいいんじゃないの?」と当然の疑問が生じてきます。

( 解約による建物賃貸借の終了 )
第二十七条 建物の賃貸人が賃貸借の解約の申入れをした場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から六月を経過することによって終了する。

次の条文には、こんな内容があります。これを見て、「 ああ、ちゃんと行動すれば解約できるんだな」なんて、安心してはいけません!!

( 建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件 )
第二十八条 建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人( 転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。

大家からの解約申し入れに関しては、更に次の条文でこのように「 正当の事由 」がある場合に限定されています。そして、この「 正当の事由 」はかなり賃借人有利に判断されます。

端的に言えば、「 立退料 」なくして出ていってもらうことはほぼ不可能です。これが、借地借家法により賃借人有利に修正された現状の法制度です。

4. 解決方法と対策法

借地借家法により賃借人有利な状況に対しては、根本的な解決方法はありません。「 賃貸事業 」を営む上で、そのような「 事業規制があるんだ」「 大家が不利な状況でも賃貸せざるを得ないんだ」という心構えをもって出発する他ありません。

ただ、更新時の場面の対策方法としては、「 定期賃貸借契約 」という契約を知っておくことは重要です。管理会社に「 定期賃貸借契約は何ですか?」と質問して、回答がなければ、管理会社を変えたほうが良いかもしれません。

定期賃貸借契約とは、契約期間が満了したとき、法定更新されずに本当に返してもらえる契約です。実際上は更新しない権利を大家側が獲得しておきながら、問題がない入居者であれば、「 再契約 」によって、次の期間も貸すという運用がなされています。

商業テナントであれば、定期賃貸借契約が利用されることが一般的ですし、老朽化物件を貸す際には、3年後に建て替えるから、その間だけ「 定期賃貸借契約で貸すよ」なんて風に利用されています。

もっとも、定期賃貸借契約があったとしても、実際に入居者が出ていかない場合には、残念ながら裁判を起こして強制執行をする必要が出てきます。その手間とコストは無視できません。

とはいえ、一般的な賃貸借契約であれば、不良入居者であっても、居座られ他の入居者や物件に悪影響を与える可能性もありますから、いざとなったとき裁判をやれば追い出せる、というのは心強い味方になります。

不動産賃貸業を営む上では、借り主有利に判断される傾向が非常に強いです。そのため、大家さん側としては、事前の情報収集と、いざとなったら早期に専門家に相談するということを肝に銘じて、リスクを抑えるアパート経営に励みましょう!

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※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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プロフィール

山村暢彦さん

山村暢彦さんやまむらのぶひこ

弁護士
不動産投資家

不動産・相続の法務に精通した、スペシャリスト弁護士。不動産投資・空き家活用・相続対策などのセミナーで講師経験も多数有している。不動産・相続をテーマとしたFMラジオにも出演。

プロフィールの詳細を見る

経歴
  • 祖父母の代からの大家の家系に生まれる。
    古い借家で家賃滞納などのトラブルを経験し「不動産・相続」の悩みを解決したいという思いから弁護士を志す。
    自身でも築古戸建を購入し、大家業の経験を積むなど、弁護士の枠内に収まらない不動産の知識と経験を有する。

    多数の不動産会社の顧問弁護士を務めており、また、そのネットワークから建築・リフォーム会社、運送会社等の顧問先企業の数も増加している。
    昨今、「働き方改革」の反面、労働トラブルが増える中で、企業側の労働者問題の対応が増加しており、企業研修などでは「副業」について話す機会も増えている。

    趣味はウイスキー、読書、靴磨き。
    大勢でお酒を飲むのも好きだが、一人の時間を作り、頭の整理をする時間も好き。
    好きな言葉は、「運と縁」。

    山村法律事務所
    神奈川県横浜市中区本町3丁目24-2 ニュー本町ビル6階

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