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借地トラブルに関する「借地非訟手続き」とは? 困ったときに裁判所でできることって?!その6

山村暢彦さん_画像 山村暢彦さん 第55話 著者のプロフィールを見る

2023/6/26 掲載

さて、前回に続いて、「 裁判所で解決できること 」シリーズをお届けします。

今回で「 裁判所で解決できることシリーズ 」も大詰めです。最後は「 借地非訟手続き 」について紹介したいと思っています。

借地権付建物は、地主( 土地の賃貸人 )と揉めても最後は裁判所利用で売却できるのですが、それまでのコスト等を考えると、あまり便利な制度ではありません。

難しい制度であれば、それを知っておくことで多少譲歩してでも早期解決するのが得策ですから、一つのノウハウとして知っておいていただきたい制度といえます。

■ 借地非訟手続きとは!?

まず、借地権の基本から簡単に確認しましょう。借地権とは、「 建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権( 借地借家法2条2号 )」です。

あくまで土地の賃借権でしかないのですが、建物保有目的ですと、数十年賃貸することが前提の権利ですので、単なる債権というよりは、所有権に近いぐらい強固な権利になっているといえます。

そのため、借地権をもとに、その土地上に建物を保有すれば、地代( 土地賃料 )が発生することを除けば、基本的に自己所有土地と変わらず大家業を営むことができます。

1)借地権で規制を受けるとき

借地権で規制を受けるのは、次の3つです。

①建物を第三者に売却
②大規模リフォーム
③建て替え

これらの場合には、基本的に土地の賃貸人に承諾料を支払って、承諾を受ける必要があります。金額や感情的な面から折り合わない場合、裁判所で「 承諾に代わる許可 」を取得することができます。

これが「 借地非訟手続き 」です。地主の承諾が得られないことで、「 建物 」という投下資本の回収ができないのは不合理なので、一定の場合、裁判所の許可により売却可能とすることにしたというのが制度趣旨です。

「 訴訟 」とは、法律関係の存否を明らかにして、紛争解決を行うことを指します。

対して、今回の借地権の「 譲渡承諾に代わる許可 」のように、民事の法律関係に関する事項について、終局的な権利義務の確定を目的とせず、裁判所が後見的に介入して処理することを特徴とする事件類型は、「 非訟 」手続きと呼ばれます。

ただ、この借地非訟手続き、あまり便利なものではなく、最後の手段という意味合いが強いと思います。どうしてもコストと時間がかかるためです。その理由を次に紹介します。

2)コストも時間も必要。借地非訟手続きが最後の手段である理由

まず、この手続き、仮に裁判所を利用しても、一般的に発生する譲渡承諾料が不要になるわけではありません。手続の中で裁判所が妥当な承諾料を認定して、承諾料を支払う代わりに許可が得られるという内容です。つまり、裁判所手続を利用しても、「 代わりに浮かせられるコスト 」というのがないのです。

次に、裁判所の手続きですから、厳密に借地権の対象等を確定する必要があります。つまり、測量費用が発生してしまう可能性が高いということです。「 賃貸借契約書 」を参考に疎明できればよいのですが、古いものも多く、申立時に裁判所から測量を求められることもあります。

そして、前述の譲渡承諾料についてどの程度の金額が妥当なのかどうか、当事者同士の折り合いがつかない場合は、妥当な金額を判定するために、不動産鑑定費用が発生してしまいます。

最後に、弁護士費用も発生します。このように、単純に考えて様々なコスト発生する可能性が高いので、ご相談を受けても「 金額でこじれているなら、これらのコストを想定して、譲歩してでも解決するほうが得です 」と回答しています。

この手続きを利用しなければならないのは、関係性が悪化しすぎていて、相手に口もきいてもらえない、交渉すらできず音信不通になっているようなケースだと思います。

そのため、ご相談自体は多数あるのですが、なかなか裁判手続きに移行せず、金額交渉で何とかしているというのが、借地権紛争の大部分という現実があります。

3)買主を見つけておかないと申立てできないという問題

別の切り口から厄介なことをもう一つ申し上げると、仮に譲渡承諾の許可を得ようと手続きを行う場合、申立手続時点で、「 買主を見つけておいて、原則契約している 」ことが必要になってきます。売買契約書を申立書に添付するような形です。

しかし、このような状況で、手続前に買主を見つけるのは困難です。そんな中、まれにある解決方法として、借地非訟手続を提起したところ、地主さんから「 借地権を買い取る 」という和解案がだされるようなケースがあります。

諸々の手続費用を考えると、金額にもよりますが、買取提案を受けるほうが良いケースも多くなります。そうなると、先に見つけておいた買主との契約を解除せねばなりません。その結果、解約のための違約金が発生してしまうこともありえます。

諸々考えても、この手続きは最終兵器であり、安易に頼ってはいけない手続きだと実感します。

■ 裁判所は前向きな利用ではなく、いざという時に利用するもの

以上、全6回の「 裁判所で解決できることシリーズ 」をお送りしてきました。いざというときに、何ができるのか? を知っておくことは、大家業経営の参考になるのではと思います。

全6回をみていただいて、基本的に前向きに利用するケースは少ないということがおわかりいただけたかもしれません。「 いざというときの裁判所 」という捉え方で、間違いないと思います。

ただ、その中でも、境界確定訴訟や借地非訟手続はどうにもならないときというイメージが強いですね。一方、近年多い「 空き地利用 」については、知識を生かしてバリューアップできるケースもあると思いますので、このあたりは要チェックだと思います。

■ お知らせ

最後にお知らせです。下記のように、不動産大家さんのトラブル専用のホームページを公開しています。興味がある方はブックマーク等お願いいたします!( ※おそらく、自然検索では辿り着かないと思われます )

https://fudousan-ooya.com/

もう一つ、お知らせです。昨年秋に出版いたしました「失敗しない不動産投資の法律知識」にて、不動産投資の落とし穴にはまらないためのポイントを詳述しております。ご紹介ページも参考に、是非一度お手に取っていただけると幸甚です。

https://www.kenbiya.com/ar/ns/books/review/6349.html

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※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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プロフィール

山村暢彦さん

山村暢彦さんやまむらのぶひこ

弁護士
不動産投資家

不動産・相続の法務に精通した、スペシャリスト弁護士。不動産投資・空き家活用・相続対策などのセミナーで講師経験も多数有している。不動産・相続をテーマとしたFMラジオにも出演。

プロフィールの詳細を見る

経歴
  • 祖父母の代からの大家の家系に生まれる。
    古い借家で家賃滞納などのトラブルを経験し「不動産・相続」の悩みを解決したいという思いから弁護士を志す。
    自身でも築古戸建を購入し、大家業の経験を積むなど、弁護士の枠内に収まらない不動産の知識と経験を有する。

    多数の不動産会社の顧問弁護士を務めており、また、そのネットワークから建築・リフォーム会社、運送会社等の顧問先企業の数も増加している。
    昨今、「働き方改革」の反面、労働トラブルが増える中で、企業側の労働者問題の対応が増加しており、企業研修などでは「副業」について話す機会も増えている。

    趣味はウイスキー、読書、靴磨き。
    大勢でお酒を飲むのも好きだが、一人の時間を作り、頭の整理をする時間も好き。
    好きな言葉は、「運と縁」。

    山村法律事務所
    神奈川県横浜市中区本町3丁目24-2 ニュー本町ビル6階

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