中古物件を購入した際に、入居決定に確実に影響するのが水回りです。特にファミリー物件の場合、引っ越し先を決める権限を持つ奥様に好まれるような水回りにしなくてはなりません。
とはいえ、賃貸物件ですので、家賃とのバランスを取る必要があります。具体的には、全てを新品にするのではなく、コストを抑えながら清潔感を感じられるキッチンにすることが大切です。
コストを出し渋って、水回りが不潔な状態では、決まるものも決まらないと思ってください。今日は私が実際に行ったキッチンの収納扉の補修について紹介します。
■ キッチンリメイクの基本
通常、収納扉の補修やリメイクというとダイノックシートやリアテックシートを使った修繕を思いうかべると思います。その際に注意したいのは、次のような点です。
・原色を使わない
・純白を使わない
・ライン柄(縦模様)を使わない
・小口の色を考慮する
まずは、色や柄についてです。真っ赤や真っ青の原色のシートを貼る方がいますが、キッチンだけ原色では落ち着かないですし、他の生活家電との色彩コーディネートができなくなってしまうので、避けた方が良いといえます。
画像は、私がリフォームの相談を受けたお部屋のキッチンです。なぜこのような原色を使ったのか不思議でした。家の中でここだけ浮いてしまい、一般的な生活家電との色味のコーディネートも難しくなってしまいます。

このブルーのシートを廃止し、アイボリー調の横木目のシートに変更したところ、室内に落ち着きが出ました。その後の内覧でも好評ですぐに申し込みが入ったそうです。( キッチンはリビングダイニングから丸見えになるタイプです )


この話をすると、「 清潔感のある白色はどうでしょうか? 」と訊かれるのですが、実は「 純白 」は絶対に使わない方がいい色です。汚れや傷が目立ちますし、キッチン扉だけ真っ白になると、他の経年劣化部分が悪目立ちしてしまうためです。
ストライプ柄も人気ですが、実は縦のラインにするとチープで安っぽく見える傾向があります。できれば、ライン柄は避けた方がいいでしょう。はっきりとした縦ライン柄は、目がチカチカする人もいます。
※内装のトータルコーディネート上ストライプを導入する場合はその限りではありません。

どうしても導入するなら横ストライプにすることをおすすめします。料理の動線は縦移動よりも横移動が圧倒的に多いので、主婦目線ですと横ラインの方が落ち着きます。
■ 収納扉の小口の色を意識していますか?
次に、収納扉の小口の色についてです。古いキッチンの場合、収納扉の切り口に樹脂製の小口( カバー )が一周回っています。アイボリーや茶色が一般的です。そして、既存の小口の色と同色のシートを選ばないと小口が凄く目立ちます。

上の画像は、元々アイボリーのキッチン( 小口もアイボリー )を、前オーナーがライトブルーのシートでリメイクしたものです( 何故? )。このように、色味を合わせないとライトブルーのアイボリーの小口( 矢印 )が目立ってしまいます。
また、古いキッチンの場合、小口が経年劣化で破損していることがあるのですが、たいてい交換パーツがありません。下の写真のように、脇の小口がなくなり合板がむき出しになっていることも珍しくありません。

小口がなくなっている場合には、そこが目立たないように扉と同じ色味で塗装するといいでしょう。色を合わせないとくたびれ感が目立ってしまうので注意してください。
■ 水を吸ってボロボロの扉にはシートを貼れない問題
先ほど、リメイクシートを使ったリメイクについて紹介しました。しかし、築古物件やダメージの酷いキッチンの場合、収納扉の木部( 下地やベース素材 )が水を吸いボロボロになっていることが多く、シートを使えないことがあります。

賃貸のキッチン扉はメラニン化粧板製の物が大半で板表面は水に強いのですが、内部はおがくずを固めたパーティクルボードです。長年使っていると、角から水分が入り、中のおがくずが膨れボロボロになってしまうことがあります。
そして、化粧板の内部に水分がしみ込んでふやけたり、角がボロボロになってしまったりすると、その上にシートを貼っても扉とシートの間の空気が抜けきらず、水膨れのようになって上手に貼れません。
良くあるのが、取っ手部分に手拭きタオルを掛けていたことにより、タオルが当たっていた角の部分が腐食しているケースです。この状態になると、やむを得ず「 キッチン交換 」を選ぶ方もいます。

でも、ちょっと待って! ボロボロでシートが上手く貼れないキッチンでも、安価に修繕する方法があるのです。具体的には、「 アングル 」を使って補修すると、キレイにリメイクすることが可能です。
■ L字アングルを使った古いキッチンのリメイク法
L字アングルを使ってキッチンをリメイクした事例を紹介します。写真はストッカータイプの比較的新しめのキッチンでしたが、使い方が荒く、水を吸って扉の角がボロボロでフカフカな状態になっていました。
そこで、下の画像のように腐食部分をアルミ( ステンレス製でもOK )のL字アングルで傷を隠すように上貼りしました。

こちらのキッチンも、水分を吸って収納扉の上下の角がブヨブヨになっていましたが、L字アングルを貼ってブヨブヨ部分を隠しました。

扉自体の強度( 下地 )が強ければ両面テープで施工でも良いのですが、賃貸物件の場合は入居者様が大切に使ってくださるかそうでないかがわからないため、私はビスを打って強固に取り付けています。

ホームセンターに行くと、様々なサイズや形のアングルが販売されています。必要分を採寸してお店でカットしてもらうと良いでしょう。1カット50円〜100円ほどでカットしてくれますよ。
■ トータルバランスを考えてリメイクしよう
いかがでしたか? 今回説明した方法で、キッチン収納扉のリメイク方法が理解できたと思います。まとめると、基本はシート施工で全体的に一新すること。シートの色や柄は小口が回っていれば、小口の色と同系色を選ぶことです。
傷みがひどい状態で、扉部分などが水分を吸ってふやけている部分はアングルで隠します。その上で、収納内部の染みや汚れは、オフホワイトで塗装してしまいましょう。その際、包丁立ても交換すると完璧ですよ。
古いキッチンのリメイクは、やり方を間違えると手を入れていない部分が悪目立ちしてイタイキッチンになってしまうことがあります。トータルバランスを考えながらリメイクを進めてくださいね。
次回もお楽しみに〜。