RC造のマンションでタイルを外壁に貼ると高級感も増すし、何よりも丈夫で長持ち、メンテナンスなんてしなくてもいいと考える方もいるかも知れない。
確かに素材のタイルは耐久性に非常に優れている。
タイルは、土や石を約1,300℃の高温で焼き固めたもので、強い日差しや風や雨にも強くほとんど劣化しない。
しかし目地やタイルの接着が劣化するのでメンテナンスが定期的に必要なのだ。
■RCマンションの外壁タイルは12-15年目で一度修繕が必要
建築基準法第 12 条において、建築物などの経年劣化などを定期的に点検する定期報告制度があるが、集合住宅は竣工から10 年(大規模修繕から 10 年)を目安に、外壁全面を打診等により、調査を実施して報告しなければならない事かららわかるように、実際に10年を超えてくるとタイルの浮きが始まるので、12-15年目で一度タイル補修が必要だ。
アパート・マンションはメンテナンスが悪い物件が多く、このように白化現象を起こしている建物が多い。
このような白化現象をおこしている壁は、すでにタイルの裏側に水が侵入しているので、剥離している可能性が非常に高い
資産性を重んじる分譲マンションは、新築から12-15年で大規模修繕が行われ、その時にタイル張替えも行う。
しかし賃貸マンションは大規模修繕を延長し25年、30年と行っていない物件も多いのだ。
■打診調査を行うと通常はタイル面の5%程度浮きや割れがあるケースが多い
打診調査を行うと、全タイル面積の5%程度の剥離はあると思ったほうがよい。
状態が良い物件は1%程度程度の低い割合もある。
■タイル見積もりと実施に張替え面積に差異がある時の精算方法
よくある相談が大規模修繕のタイル張替えの見積と実際の施工との差額の精算だ。
例えば「張替5% 4300枚」の数量見積もりだったが、実際の張替工事面積は「張替え2.5% 2300枚」だったとしたら差額の2000枚は精算されるのか?と言う相談だ。
通常のタイル工事の見積書には「実費精算」の「見積条件」が付いている。
タイル張替工事の見積書詳細項目は以下のようになる。
①タイル材料費
②上記運賃
③タイル撤去費
④タイル下地
⑤タイル貼り手間
このような内訳書が一般的だ。
■打診調査は、打診棒などで実際にタイルを叩いて調査する
打診調査とタイル発注には以下のように全部の調査と一部の調査で違いがある。
A.足場を設置し全部の打診調査を行って張替え数量を前もってし実測した時には、ほんの少し多めにタイルの発注を行う。
B.打診調査を一階の手の届く範囲で行い、建物の劣化状況により全外壁の面積3-5%くらいを見込んでタイル発注をする。
ただし施工不良で交換割合が高い場合は、10~15%で補修が必要になるケースもある。
分譲マンション等の大規模な建物は、Aのように全ての打診調査をするケースが多い。
小中規模の賃貸マンションでは、一階だけを打診棒で調査し、上階は足場を設置して調査すると、多額の「調査料」が掛かるので、Bのケースで見積もる。
Bの調査方法では、多めにタイルを発注するので、タイルが余るケースが殆どで、余ったタイルの精算は行わない。
タイルが余ったからといって、一般的に①(タイル材料費)と②(運賃)に関しては減額請求はできない。(⇒備品として保管し、その後破損した場合などに流用する。)
① ④⑤は「実費精算」の条件付きで通常は積算計上されている。
だから契約時に実費精算という条件があれば、③④⑤に関しての差額精算をする。
■タイルは既成品がいいか?焼いてもらうほうがいいか?
一般的にタイルを貼り替えする時は、既製品を使うと張替えた時に、以前のタイルと色が合わずに美観が悪くなるので、特注でタイルを焼くことをすすめられる。
タイル焼きは一釜・半釜単位で焼くので、10枚でも1000枚でも焼き賃はほぼ変わらない。
小規模なマンションの大規模修繕で特注タイルを頼んでしまうと、焼く枚数が少ないので、割高になるケースが多い。
かと言って既成品だと全く同じ色にはならないのでかっこ悪い。
こういった時には、目立たない建物裏側のタイルを剥がして、建物正面に移植し裏側は既成品で妥協するという事もできる。
タイルの補修工事は足場を掛ける必要もあり、8-9世帯程度の小規模な賃貸マンションでも500万円を超える事はザラにあり、8階建て等の中規模なマンションでは総額3000万円を超えることも多くある。
最近では、タイルのメンテナンスにコストがかかるし、落下事故なども発生しているために、タイルを貼らない建物も増えてきている。
タイル落下事故を起こして、入居者に怪我をさせたり、車両に損害を与えるなどしてしまうと大変な事になる。
タイル張りのマンションは見た目もいいし、タイルは劣化しづらいのだが、永久に持つものではなくメンテナンスを頻繁に行う必要がある事を覚えておこう。
執筆:J-REC教育委員 原田哲也
【プロフィール】
2010年より、一般財団法人日本不動産コミュニティー(J-REC)の北海道支部を立上げ、不動産実務検定の普及に尽くし、多くの卒業生を輩出。2018年よりJ-RECのテキスト編集、改定などを担当する教育委員に就く。
また自身が主宰する北海道大家塾は既に50回の開催を数え、参加人数も述べ3000人を超える。