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湘南の民泊事情を聴いてきた。人気再燃も場所によっては難航。一戸建てで月30~40万円。

賃貸経営/民泊・旅館業 ニュース

2023/10/16 配信

コロナが明けてインバウンドが戻ってきた。それに合わせて再度民泊に目を向け始めている人が増えている。だが、果たして収益は上がるのか。人気の湘南エリアの実情を聞いてきた。

高めの宿泊料で質の良い客を狙う

エアビー以前のカウチサーフィン(2004年にスタートした他人の家に宿泊させてもらう仕組み)の頃から部屋貸しをしていたという逗子市・ユニークホームズの阿部真美さん。もちろん、民泊が流行り始めた時代から湘南エリアで民泊を手がけてきている。

「不動産を賃貸で運用していると売りたいタイミングで売れないことがありますが、民泊で運用している場合には売りやすい。運営側が終わらせたいタイミングで終わらせて売れるのは賃貸経営にはないメリットです」。

コロナ禍で環境を求める人が増えたためか、湘南エリアの人気はこのところ上昇。価格もかなり上がっており、不動産会社からは物件が足りていないという声も聞く。だが、インバウンドを対象に考えると、鎌倉以遠はなかなか選ばれにくいと阿部さん。

高めの宿泊料を狙うのであればそれなりのグレードの住宅、家具、設備などを考えるのが賢明(写真はいずれも阿部さんが手掛けた物件)
高めの宿泊料を狙うのであればそれなりのグレードの住宅、家具、設備などを考えるのが賢明(写真はいずれも阿部さんが手掛けた物件)

「とはいえインバウンドを意識した民泊物件はコロナ明けから徐々に増えており、ニーズがあると考えている人は少なくありません。安くなればなるほどクレームを付ける人が増える傾向があるため、高めの宿泊料で質の良い客を狙おうとする経営者が多いのですが、そのあたりの判断に非常に難しいところがあり、しばしばクレームに発展しているようです」。

クレームの背景には予約サイトの問題も

たとえば一戸建てを利用、1棟貸しでベッドルームが2~3室、2家族で10人未満の宿泊を想定して宿泊料を6~10万円で設定したとしよう。

保健所的には宿泊者1人あたり3㎡を確保していればOKは出るのでコンパクトな一戸建て利用でも開業はできるが、そこに外国人を泊めようとすると問題が生じる。

和室で布団を利用すれば多人数泊まれるという発想はトラブルに発展しかねないこともある
和室で布団を利用すれば多人数泊まれるという発想はトラブルに発展しかねないこともある

「日本人なら和室で雑魚寝でもそれほど問題にはならないでしょうが、外国人はそれでは満足しません。また、コンパクトな一戸建てでダイニングスペースが狭く、5人くらいしかダイニングテーブルに座れないとしたら、それもクレームになります。

宿泊料を高く設定するためにはベッドや家具のクオリティはもちろん、間取りもポイントですが、それを考慮せず、収益から宿泊料を決めると揉めることになります」。

予約サイトに要件は書いてある、だから納得して選んだはずだと言いたいところだが、残念ながらきちんと予約サイトを読み込んでくる客は少ない。また、予約サイト自体にも問題があるという。

「たとえばBooking.comでは予約サイト側で文章を作るのできちんと説明したくでもできません。それ以外にも説明のしにくいサイトがあり、それをそのままにしておくと宿泊はしてくれても結局レビューが悪くなってしまいます。

多くの宿泊客は宿泊料金と場所でまずソートをかけ、その次にレビューを見て宿泊先を決めます。レビューが悪いと選ばれなくなってしまうのですが、収益優先の人はそこに気づかないことがあります」。

長期滞在が収益に直結

また、民泊で収益を上げるためには長期での宿泊がポイントになる。宿泊している間は手間がかからず、人件費その他も不要だからだ。だが、そうした長期滞在が狙えるのは京都や東京など周辺に多くの観光スポットがあるような場所。しかも、京都や東京などの場合には季節を問わずに観光客が集まる。

「湘南エリアの稼ぎ時は夏と年末年始。それ以外の12月から2月は閑散期です。ペット可や海辺に近い宿なら季節に関係なくペットオーナー、海好きが利用してくれますし、周辺に宿のないスポットならそれなりに利用されますが、そうでないと年間通じての利用はなかなか難しいものがあります」。

長期で貸せるような工夫も必要だが、そうそう簡単にできることではない。短期でしか貸せないとなると必要経費の負担が重くなり、収益が上がりにくくなる。

「民泊をやるための必要経費としてはまず、予約サイトへの手数料があります。これが宿泊料の15%くらい。清掃その他の運営を委託すると20%は必要。そうなると手元に残るのは宿泊料の半分から60%くらい。そこから水道光熱費、税金、物件を購入して始めていたとしたらローンを支払う、借りていたら賃料を払うとなったら、手残りはかなり少なくなってしまいます」。

だからといって宿泊料を上げると入らない、入ってもクレームになりやすくなるなど良いことはない。

自分でやるなら70%は残る

では、自分でやるとしたらどうだろう。

「もちろん、自分でやるとしたらかなり収益は上げやすくなります。予約サイトへの手数料は必要としても、それ以外にダブルブッキングをしない仕組みなどを導入しても70%くらいは残る計算になります。もちろん、それ以外にローンあるいは家賃を払う必要がありますが」。

京都などでは小規模なアパートを一棟まるまる民泊にするようなやり方が流行ったが、この方法だと一泊の単価が挙げられず、クレームが増える可能性もある。それを考えるとベストは戸建ての活用だ。

周囲への音問題を考えるとリビングや窓、隣家との位置関係などに注意が必要
周囲への音問題を考えるとリビングや窓、隣家との位置関係などに注意が必要

「とはいえ、戸建てで人数が多くなると騒音クレームが出やすくなります。物件を選ぶ際にはリビングや窓の位置などと隣家の関係をよくよく考えたほうが良いですね」。

収益、初期費用を考えると借りて始めるのが望ましいいが、残念ながら逗子に限らず、どこでも民泊可の物件は少ない。しかし、湘南エリアであれば購入する場合でもまだ相場は安めで、都内23区などから比べると購入する場合でも3分の2ほどだという。

「中古戸建で民泊可のエリアで考えると古さにもよりますが4000~5000万円くらいから。2LDK~3LDKの、マックスで7~8人定員くらいの規模を家主居住型の民泊でやるのが一番無理がなくできるのではないでしょうか。家主居住型だと認可も得やすくなります」。

個人でやるなら1棟を自分で回す

あらかじめ事業として拡大を視野に入れて多額の投資ができるのなら別だが、そこまでの投資をせず無理なく、ある程度の収益をと考えるのであれば自分でできる範囲でというのが現実的だろうというのが阿部さんの意見。

自分も使うつもりで質の良い住宅、でも手頃な価格の物件を探しておけば転用しやすい
自分も使うつもりで質の良い住宅、でも手頃な価格の物件を探しておけば転用しやすい

「言ってみれば老後の資金の足しにするつもりで不動産を買っておいて時間ができたら自分でやるという感じでしょうか。できる範囲の作業を自分でやれば月に30~40万円は残るはず。最初は別荘として買っておいてローン分を貸して稼いでもらい、その後、リタイア後の趣味として貸すというのでどうでしょう。これなら無理がありません」。

ただし、いくつか注意点がある。

もともと観光が盛んだったエリアなら別だが、それ以外の地域で始める場合には周囲との関係にも注意が必要だ。特に湘南エリアは環境その他にうるさい人が少なくない。

「音はもちろん、ゴミもトラブルになりやすいもの。客が良かれと思って捨ててくれたものが近隣からのクレームで鬼の首を取ったように言われることもあるので、必ずホスト側で捨てるようにしないといけません」。

エリアでいうと、どこでやるかによっても差が出る。民泊の場合、保健所、消防署とのやりとりが必須だが、逗子市は比較的消防署が寛容だが、横須賀市は厳しいなど自治体によって、担当によって大きく違いが出るのである。

また、民泊に限らないが、買いたい気持ちが先立つと計算の合わない物件を買ってしまうのはよくあること。冷静に試算をし、地元の不動産、民泊事情に詳しいプロに意見を聞いて始めたいもの。

「このところ、不動産価格が上がっていますし、それに煽られてか、このところ、高値で不動産を買ってしまう例が出てきています。最近も2億円で物件を調達、シェアハウスを始めようとしてローンが払えない、あるいは民泊にしたけれどやはり払えないなどという例が出てきています。地域ごとに家賃、宿泊料金の相場は違いますし、当然、不動産価格も違います。冷静に臨んでください」。

健美家編集部(協力:中川寛子(なかがわひろこ))

中川寛子

株式会社東京情報堂

■ 主な経歴

住まいと街の解説者。40年近く不動産を中心にした編集業務に携わり、近年は地盤、行政サービス、空き家、まちづくり、地方創生その他まちをテーマにした取材、原稿が多い。
宅地建物取引士、行政書士有資格者。日本地理学会、日本地形学連合、東京スリバチ学会会員。

■ 主な著書

  • 「ど素人が始める不動産投資の本」(翔泳社)
  • 「この街に住んではいけない」(マガジンハウス)
  • 「解決!空き家問題」「東京格差 浮かぶ街、沈む街」(ちくま新書)
  • 「空き家再生でみんなが稼げる地元をつくる がもよんモデルの秘密」(学芸出版)など。

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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