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7月に民泊の「管理事業者要件」が緩和。投資家にとってプラスとなるか?民泊業界にどう影響?

賃貸経営/民泊・旅館業 ニュース

2023/11/10 配信

観光庁の発表(10月18日)によると7~9月の訪日客の消費額は1兆3904億円とコロナ前の水準を初めて上回った。昨今では京都や鎌倉などの人気観光地では観光客が増えすぎて混雑を招くなどの弊害が起こる「オーバーツーリズム」が懸念されるほど街に観光客が戻っている。

投資家に至っては、再び「民泊」への投資を検討している人も少ないだろう。そんななか覚えておきたい点が7月19日に「国土交通省関係住宅宿泊事業法施行規則の一部を改正する省令等」が公布・施行され、管理業者要件が緩和されたことだ。

民泊のうち家主が住んでいない「家主不在型」の場合、これまで法律で清掃や苦情に対応するため、物件の管理を事業者に委託することが義務づけられ、管理事業者は「宅地建物取引士の資格」もしくは「住宅取引などに関する2年以上の実務」が求められていた。それが今回の法改正で、所定の講習の受講修了者も新たに管理者として認められるようになった。

これにより民泊業界にどのような変化が及ぶのだろうか? 投資家が知っておくべきポイントは? 民泊事情や制度に詳しい日本橋くるみ行政書士事務所の石井くるみ行政書士に話を聞いた。

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民泊の管理理者に関する要件が緩和された(写真はイメージ。「写真AC」より)

所定の講習の受講修了者も新たに管理者として認められる。
国がこれまで以上に、民泊を後押し

今回の制度の改正について解説するにあたりまずは、まずは民泊を始めるうえでの法制度について振り返りたい。民泊は戸建やマンションなどの集合住宅のすべてや一部を活用して宿泊サービスを提供することを指し、日本でも利用者が2015年頃から増加し始めた。

もともと宿泊業のルールを定める「旅館業法」が施行されていたが、民泊にいたっては無許可で始めるケースがスタート時には多く、騒音やゴミ出しのマナーが守られず、地域住民から反対を受けるなどして、トラブル防止に向けたルール作りや許可をえて運営することが強く求められるようになった。

そうした世論も踏まえて2018年6月に住宅宿泊事業法が施行され、民泊を行う場合には「1.旅館業法の許可を得る」「2.国家戦略特区法(特区民泊)の認定を受ける」「3.住宅宿泊事業法の届出を行う」3つの方法から選択することになった。

ハードルが高いのは1の旅館業法の許可をえることで、使用する施設の構造設備が基準を満たし、保健所に申請する必要がある。2の特区民泊の場合、東京都大田区や大阪府、大阪市など国家戦略特区の区域として指定された地域が対象となる。

そのため民泊を行う場合は3の住宅宿泊事業法の届け出を行うケースが一般的だ。ただし年間提供日数が180日以内との制限があることや、家主が不在の場合には、冒頭で示したように、「宅地建物取引士の資格」もしくは「住宅取引などに関する2年以上の実務経験」を有している管理者を配置しなければならないといった条件がネックになっていた(下図参照)。

【3つの制度比較】

旅館業法
(簡易宿所)
国家戦略特区法
(特区民泊に係る部分)
住宅宿泊事業法
所管省庁厚生労働省内閣府
(厚生労働省)
国土交通省
厚生労働省
観光庁
許認可等許可認定届出
住専地域での営業不可可能
(認定を行う自治体ごとに、制限している場合あり)
可能
条例により制限されている場合あり
営業日数の制限制限なし2泊3日以上の滞在が条件
(下限日数は条例により定めるが、年間営業日数の上限は設けていない)
年間提供日数180日以内
(条例で実施期間の制限が可能)
宿泊者名簿の作成・
保存義務
ありありあり
玄関帳場の設置義務
(構造基準)
なしなしなし
最低床面積、最低床面積
(3.3㎡/人)の確保
最低床面積あり
(33㎡。ただし、宿泊者数10人未満の場合は、3.3㎡/人)
原則25㎡以上/室最低床面積あり
(3.3㎡/人)
衛生措置換気、採光、照明、防湿、清潔等の措置換気、採光、照明、防湿、清潔等の措置、使用の開始時に清潔な居室の提供換気、除湿、清潔等の措置、定期的な清掃等
非常用照明等の
安全確保の措置義務
ありあり
6泊7日以上の滞在期間の施設の場合は不要
あり
家主同居で宿泊室の面積が小さい場合は不要
消防用設備等の設置ありありあり
家主同居で宿泊室の面積が小さい場合は不要
近隣住民との
トラブル防止措置
不要必要
(近隣住民への適切な説明、苦情及び問合せに適切に対応するための体制及び周知方法、その連絡先の確保)
必要
(宿泊者への説明義務、苦情対応の義務)
不在時の管理業者への
委託業務
規定なし規定なし規定あり

出典:厚生労働省、国土交通省、観光庁「民泊制度ポータルサイト」

それが今回の法改正により、所定の講習の受講修了者も新たに管理者として認められるようになった。具体的には20時間程度の学習や7時間程度の講習を踏まえて修了試験に合格することなどが条件となる。今回の法改正の背景について、民泊事情に詳しい石井氏は次のように考察する。

「住宅宿泊事業法の施行から5年経ち、民泊の運営でトラブルが少ないことや日本全体として、既存の不動産を有効活用していこうという流れや、観光立国を推進していくために、要件を緩和して、民泊ビジネスを後押ししていこうという政策の方向性が伺えます」

今回の要件緩和は、これまで管理業者に管理を委託してきた家主が、自ら管理業の登録を受けて行う家主不在型民泊の「自主管理」拡大につながる可能性があるという。

「家主不在型民泊を行うには、管理業者に管理を委託するか、又は家主自らが管理業者の登録を受ける必要があります。これまでは資格要件や実務要件がネックとなり自ら管理業者の登録を受けることができなかった家主は、管理業者に手数料を払って家主不在型民泊の管理を委託してきました。

しかしコストを抑える等の目的で、家主不在型民泊を自主管理したいと考える家主が一定数存在します。そうした家主にとって今回の要件緩和により、自ら管理業者の登録を受けて、家主不在型民泊を自主管理するハードルが下がったことは事実です。家主不在型民泊の自主管理が広がると、これまで家主から管理委託を受けてきた管理業者への影響が大きいでしょう」

コロナ前から民泊を始めている「第一世代」と
アフターコロナで民泊を始めた「第二世代」の意識の違い

最近の観光業の盛り上がりから、民泊に投資しようと考える事業者や投資家も増えている。石井氏によると、民泊を行う人はコロナ前から民泊を始めている「第一世代」と、コロナ後に民泊を始めた「第二世代」の2つの層にわかれ、それぞれ感覚が異なっているという。

「コロナを機に、大部分が民泊から撤退しました。最近になり民泊が勢いを取り戻していますが、撤退した人が戻ってきているというより、コロナ禍を耐え忍んだ『第一世代』がようやく息を吹き返している状況です。

またアフターコロナから参入した『第二世代』が新規参入して盛り上がっている印象を受けます。第一世代はコミュニティを作ってSNSなどで情報交換をしており、第二世代は要件が緩和され、やりやすくなったなかで始めて、こんなに魅力的な副業があるのかと楽しんでいる印象です」

今回の要件緩和で、投資家にチャンスとなっているのか? 最後に、投資家に向けたアドバイスを!

「要件が緩和されたからビジネスチャンスというよりも活況な観光産業への期待の高まりから、民泊は大いに魅力あるビジネスでしょう。

すでに東京や京都、大阪、沖縄は宿泊施設が増え、開発が進んでいる印象ですが、今後はすでに人気のエリアの周辺や、滋賀や和歌山など地方でのニーズが高まっている感触があります」

民泊への投資については、ぜひ上記のような変更点や実情も参考にしていただきたい。

※取材協力:日本橋くるみ行政書士事務所 石井くるみ行政書士

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石井くるみ行政書士

【プロフィール】
早稲田大学政治経済学部卒業後、(公財)消費者教育支援センター研究員、法律事務所勤務を経て日本橋くるみ行政書士事務所を開設。不動産・金融規制に関する知見を活かした新規事業開発のアドバイスを得意とし、国土交通省の有識者会議『不動産特定共同事業(FTK)の多様な活用手法検討会』の委員を務める。主な著書に『民泊のすべて』(2017年度日本不動産学会・著作賞を受賞)。最近では、不動産ファンドの相談も多数受け付けている

健美家編集部(協力:高橋洋子(たかはしようこ))

高橋洋子

https://yo-coo.wixsite.com/home

■ 主な経歴

暮らしのジャーナリスト。ファイナンシャルプランナー。
大学卒業後、情報誌などの編集を経てライターに。価値0円と査定された空き家をリノベーションし、安くマイホームを購入した経験から、おトクなマネー情報の研究に目覚め、FP資格を取得。住宅、マネー関連の執筆活動を行う。

■ 主な著書

  • 『家を買う前に考えたい! リノベーション』(すばる舎)
  • 『100万円からの空き家投資術』(WAVE出版)
  • 『最新保険業界の動向とカラクリがよ~くわかる本』(秀和システム)など

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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