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賃貸事業にできる復旧期支援 – 賃貸型応急住宅制度(みなし仮設住宅制度)について 「建築知識の不動産投資ニュース038」

不動産投資全般/建築知識 ニュース

2024/01/11 配信

令和6年は能登半島の大きな地震の被害で幕を開けた。

現地の生活、特に住まいにおいて大きな被害が報じられている。まずは避難により生命の安全を確なものとしていただき、そのうえで当座の住まいについて行政の協力などにより順次確保していって、各々の生活、事業などが再生していくことを願う。

今回は、その当座の住まいである応急住宅の供給方法の一つとして、東日本大震災以降活用されてきた「賃貸型応急住宅制度」について、多くの賃貸オーナーに認識してもらいたいと考え、概要と関連資料を紹介したい。

令和6年度能登地震
令和6年度能登地震

賃貸住宅を応急住宅として活用する制度「賃貸型応急住宅制度」

この新年に起きた「令和6年能登半島地震」の災害に会われた方にまずお見舞いを申し上げたい。災害は誰にも予測がつかないものであり、それゆえ全ての人に被災の立場になる確率があると、改めて心したい。

起きることは避けられない災害であるが、発災後の生活再建、そしてその支援は普段の準備こそがそれを左右するものである。そのためにも被災後の住宅支援プロセスを一通り見てみよう。

多くの人が住まいを失う大災害では、大きく発災→復旧期→復興期と被災者の住まい環境が移行するタイミングがある。

この中で復旧期の仮の住まいを行政などが提供するものの中に「仮設住宅」があり、未曽有の大災害であった東日本大震災以降、その供給方法として従前の「応急建設住宅」とここで話題にする「賃貸型応急住宅」(みなし仮設住宅、応急借上住宅など)とに分類される。

前者はこれまで阪神淡路大震災を含む多くの被災地で見られた現地近くの土地に、応急的な仮設建設によって確保された住宅、住宅地のことであり、後者は被災地から行くことのできる地域で行政が民間の賃貸住宅を借り上げて応急的に住居を被災者に提供するものである。

被災→復旧期→復興期(「災害時における民間賃貸住宅の活用について」より)
被災→復旧期→復興期(「災害時における民間賃貸住宅の活用について」より)

「表:応急建設住宅と応急借上げ住宅の特徴比較」にみるように、
「賃貸型応急住宅」(応急借り上げ住宅)には、建設という段階が不要であるため、比較的短期間に提供可能、居住性のレベルは高いなどの利点があり、受け入れ側にとっても空き家という遊休不動産の活用という側面がある。

文書:災害時における 民間賃貸住宅の 活用について(国交省)

応急建設住宅と応急借上げ住宅の特徴比較
応急建設住宅と応急借上げ住宅の特徴比較

一方で、公的な予算が使われるため利用できる住宅の条件が示される。
今回の令和6年度能登地震で石川県によって定められたものとしては、

(1)家賃が1ヶ月当たり次の額以下であるもの(次の額を超過するものは認められず、超過分を個人負担することも不可)
2人以下の世帯 6万円
3人~4人の世帯 8万円
5人以上の世帯 11万円
(2)貸主から同意を得ているもの

(3)不動産事業者(仲介業者)が斡旋した住宅であること

(4)耐震性が確保されている住宅であること

となっている。

利用の申し込みは、関連団体(石川県では石川県宅地建物取引業協会、全日本不動産協会石川県本部)となっている。

実際の入居と契約にあたって、行政が調整を行う「マッチング方式」と被災者個人で、公表されているリストから選ぶ「被災者自らが探す方式」とに分かれるが、今回は後者で進められている。

また、空き家を賃貸型応急住宅制度で活用したい所有者は、この関連団体窓口へ連絡を取ることで、説明を受け条件を確認したうえでリストに載せることになる。

賃貸型応急住宅提供のフロー
賃貸型応急住宅提供のフロー

また、上記文書によればまさに平常時において、提供可能な物件リストを団体と行政が協定を結んだうえで整備しておくことが提言されている。

災害の支援と要配慮者支援の共通点

住宅土地統計調査によれば、平成30年の時点で全国の空き家数は約849万戸あり、そのうち賃貸用空き家は約433万戸(そのうち共同住宅は約378万戸)。賃貸用空き家約433万戸のうち、昭和56年(新耐震基準制定)以降に建設された住宅は約280万戸である。

それら遊休している居住系不動産について、これをいかに社会の(予備)資源として「使える」状態としていくのか、そのための準備は日常の中で行っておくべきと考える。

災害は予測できないがゆえに、すべての人にとって可能性が存在する。そして発災によって失われるのは、居住だけではなく地域、仕事、生活、などを一緒にした大きな全体であること、それをいかに自立して持続できるところまで回復するかの手段の一つとして、小さくない部分が居住であるという点は、昨今社会的課題とされている住宅確保要配慮者に対する、住宅セーフティネットの準備と重なる課題だ。

賃貸住宅を所有し活用するということは、経済的な利得を目指す事業であると同時に、それによって社会の居住環境づくりに参加することでもある。

災害によって、社会が不安定さを見出すときに、これら空き家を利用してそこからの回復に寄与すること、災害にあった人々を事業の中で支援することができる、一つの手立てとして、令和6年度能登地震復興支援における「賃貸型応急住宅」の行く末を注目していきたい。

参考文書:
住宅確保要配慮者に対する居住支援機能等のあり方に関する検討会 資料3中間とりまとめ案参考資料(国交省)

執筆:新堀 学(しんぼり まなぶ)

新堀 学

■ 主な経歴

建築家。1964年埼玉県生まれ。東京大学工学部建築学科卒業。安藤忠雄建築研究所所員を経て、1999年より新堀アトリエ一級建築士事務所主宰。独立後、リノベーションを中心として、設計のみならず建築の保存再生から地域文化活動へと広く携わり、建築の企画から利活用にわたり、技術と制度を活用した柔軟な提案を行っている。
一般社団法人HEAD研究会理事、一般社団法人住宅遺産トラスト理事。

■ 主な著書

  • 2002年:リノベーション・スタディーズ(lixil出版)共著
  • 2004年:コンバージョン設計マニュアル(エクスナレッジ出版)共著
  • 2005年:リノベーションの現場(彰国社)共著
  • 2016年:建築再生学(市ヶ谷出版)共著 ほか

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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