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圧死4割、能登半島地震の教訓。30キロ歩いて現地調査した専門家を取材!都市部にも液状化の危険

不動産投資全般/災害・防災 ニュース

2024/02/29 配信

警視庁の発表によると、能登半島地震で亡くなった人の4割は『圧死』とのこと。多くの人が倒壊した家屋の下敷きになり、新耐震の建物も大きな被害にあっている。「地震保険に入っておく」「新耐震の建物を買う」だけでは対策は万全とはいえない。

不動産投資家や大家は今回の地震から何を学ぶべきか。震災直後、1月4,5日に現地に入り調査をした地盤災害の専門家で、個人向け不動産コンサルティング・住宅診断を行うさくら事務所が運営する「だいち災害リスク研究所」所長の横山芳春博士を取材した。

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金沢市田上本町にて。まだ新しい住宅が倒れている様子は衝撃的だ(撮影:だいち災害リスク研究所 横山芳春、以下同)

2日で30km歩いて現地調査。そこから見えてきたこと

過去にも巨大地震があれば、現地調査に赴いている横山氏。今回も震災後の1月4,5日に自力で移動が可能であった、能登半島のなかでも金沢市に隣接する内灘町~かほく市を中心に2日間で歩いて現地調査をした。

「被害の大きな輪島や珠洲市は立ち入れず、金沢駅から海沿いに約8.5kmの被災エリアを中心に金沢市や津幡町も調査しました。2日で計30km歩いて調査をするなかで、通常営業しているスーパーやコンビニもあれば地域によっては甚大な被害を受けている場所もありました」

横山芳春
横山芳春博士(理学)、だいち災害リスク研究所所長・地盤災害ドクター。地形と地質、地盤災害の専門家。災害が起きた際には速やかに現地入りして被害を調査。現地またはスタジオから報道解説も対応(NHKスペシャル、ワールドビジネスサテライト等に出演)する地盤災害のプロフェッショナル

金沢市内の造成地・田上本町では、まだ新しい家が大きく傾いている様子が横山氏によって撮影されている。

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震災で倒壊した2軒の住宅のうち1軒は土砂災害ハザードマップの警戒区域内であった(撮影&出典:だいち災害リスク研究所 横山芳春氏、以下同)

「土砂災害ハザードマップを見ると倒壊している2軒のうち1軒は警戒区域ですが、2軒目は区域外のように見えます。ハザードマップで、区域外だからといって安全だということにはならないことが伝わってきます」

横山氏の考察では、能登半島地震で被害が大きかった要因は次の4点が挙げられる。

《能登半島地震 大きな被害の要因》
・陸域近くでの巨大な地震
・耐震性が低い住宅が多い地域
・これまでの複数の地震での劣化
・珠洲市、輪島市では「キラーパルス」(低層や木造住宅に被害を与えやすい揺れ)のやや短い周期の地震動

上記に加え、実際に現地を歩いて横山氏が感じたことは広範囲に及び、液状化の被害が多かったことである。

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調査したポイントに赤い印。金沢市の北に位置し、『河北潟』と呼ばれる潟湖およびその北側に広がる干拓地の西岸、日本海と河北潟との間にある内灘砂丘の東側の低地沿い、約8.5㎞程度、帯状に液状化現象が発生していた地域を確認した

「液状化で、砂が多量に吹いた付近にお住まいの方によると、滝のように砂と水が噴き出して流れてきたとのことでした。また築10数年という住宅でも不同沈下(建物が不均一に沈下)が発生し、どのように修復していくかお困りでした。

現行の耐震基準の住宅で、耐震性が高い住宅であっても、地盤の液状化に対しては対策がなければ無防備といえます」

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噴出した砂で車が埋もれている様子

内灘町では、3階建てビルが大きく、傾斜しながら地盤にめり込み沈下をしている状況もみられた。

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内灘町にて、3階建てのビルが傾いている

「目測ではありますが、1m以上は沈下しているようにみられました」

液状化に対して、個人で対策をするには限界がある

液状化現象が起きるのには、次の3つの要素が必要となる。

1:ゆるい砂地盤(概ねN値15以下)
2:地下水の水位が浅い場所
3:大きな地震動が来る

能登半島地震において、今回調査した、かほく市では最大震度5強、内灘町では震度5弱の地震が記録されている。一般に液状化は震度5程度より大きな、規模の大きい(継続時間の長い)地震で起きやすい傾向がある。

「今回液状化被害があった地域は、砂丘のすそにあたる場所の砂地盤で、内灘砂丘からもたらされた地下水の水位が浅いとみられる地域で、大きな地震を受けたことで、3つの要素がそろってしまったものと考えられます。液状化は都市部でも、近郊の住宅地でも起こる可能性があります」

液状化に伴い地盤が『流動している現象』が複数個所で見られている。これも地盤を知るうえで、覚えておきたいポイントである。

「単にその場で地盤が沈下する水平な場所と異なり、傾斜がある地域で土砂の流動があると表層地盤は低い側へと動きやすく、川や海などの側に横方向にも移動し、段差や地割れを作りながら地盤が沈下し、地表に大きな変状を与えます。この現象を個人レベルで対策することは困難です」

安全性の高い建物は最高の防災グッズ。耐震性、地盤は重要

「液状化の対策としては、住宅では主に『小口径鋼管杭』と呼ばれる杭を支持地盤まで打設することが有効です。しかし周囲の地盤が沈下すればライフラインは途絶されます。そのうえ土砂の流動が発生すると、杭や改良体が損傷する可能性もあります」

海に近い、傾斜がある地形ではこうした液状化や流動現象のリスクが高まることをよく覚えておきたい。

このほかに今回の地震から大家や不動産投資家はどう対策をすべきか? 横山氏は次の3つのポイントをあげる。

「1つは立地のリスクを確認すること。改めてハザードマップと照らし合わせ、浸水エリアではないか、木造密集地で火災が懸念される場所ではないかチェックすることです。

また入居者がどんな避難経路で避難するかも確認しておきたいポイントです。2つ目は建物の耐震性です。

新築であれば耐震等級3が望ましく、既存住宅の場合は耐震改修工事を検討したいものです。そのうえで3つ目の対策として、家具の配置見直しや固定することが挙げられます」

今回の震災で防災グッズを見直した人も多いだろうが、「安全性の高い建物は、最高の防災グッズ」だと横山氏はいう。入居者の命を預かる大家さんはより一層、このことを肝に銘じておきたい。

健美家編集部(協力:高橋洋子(たかはしようこ))

高橋洋子

https://yo-coo.wixsite.com/home

■ 主な経歴

暮らしのジャーナリスト。ファイナンシャルプランナー。
大学卒業後、情報誌などの編集を経てライターに。価値0円と査定された空き家をリノベーションし、安くマイホームを購入した経験から、おトクなマネー情報の研究に目覚め、FP資格を取得。住宅、マネー関連の執筆活動を行う。

■ 主な著書

  • 『家を買う前に考えたい! リノベーション』(すばる舎)
  • 『100万円からの空き家投資術』(WAVE出版)
  • 『最新保険業界の動向とカラクリがよ~くわかる本』(秀和システム)など

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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