「東京23区の人口が初めて転出超過となった」と各種メディアで注目されている。1月28日に総務省が発表した住民基調台帳に基づく人口移動報告によると、東京23区の転出超過は1万4828人だった。
新型コロナ感染症前の2019年は6万人程度、2020年でも1万人程度が、転入超過となっていた。コロナ感染の収束が見通せない中で、テレワークの導入も進んできたことで東京に隣接する周辺県に居住拠点を移動させている動きと見られている。
この傾向がこのまま続くのかが注目されている。総務省が2月24日に公表した同報告書では、1月は東京都への転入者が転出者を上回って9カ月ぶりに転入超過となった。
これは、昨年の秋以降から年末にかけて感染者数が急減したことが影響していると見られており、結局のところ、コロナが収まりさえすれば東京に人流が戻ることを暗に示している感じもする。広く地方に活力を取り戻せるのかの方向性は確たるものが見通せない。
東京近郊の別荘ニーズ高まりで物件取引価格は億が当たり前に
しかし、コロナ下の生活が丸2年となる中で、国内の不動産に対するニーズに変化が見られている。特に富裕層の需要が国内で活発になっているのが特徴の一つとして挙げられる。富裕層を対象にした不動産取引に強い会社からそのような傾向が見て取れる。
横浜市内に本社を構えているリストインターナショナルリアルティ(LIR)の取引実績を見ると、リゾート・別荘需要の取引件数が急増している。
同社の話では、2020年の夏ごろからニーズが増え始めて2021年にその動きが加速したとしている。成約した取引件数は2020年の5倍に達した。全体の成約に占める富裕層取引は2割を占めている。2020年は1割未満だった。
成約価格も急ピッチで上がり続けている。富裕層をターゲットに展開する「LIR銀座オフィス」では、2021年の成約価格は平均2億463万円となり、2020年の1億1692万円から75%も上昇している。コロナ前の2019年は平均8602万円である。
東京周辺県で観光・リゾート需要があるエリアがピンポイントで上がっており、千葉・館山は4億円弱、神奈川・鎌倉が約5億円などの取引が実際にあったという。
移動の不自由で溜まった不満が遠隔地での物件探しを誘う
同社では今後の予測について、遠方のリゾート地の物件が物色される可能性が高いと見ているようだ。北海道や沖縄、京都、白馬などでの購入相談数が増加中としている。
コロナワクチンのブースター接種の進展と飲み薬が開発されることでコロナがインフルエンザと同じような位置づけになることを見据えた動きではないかとの見方がある。塩野義製薬の飲み薬が3月承認へ、というニュースも流れたことでアフターコロナを意識した動きが増える公算が大きくなっている。
コロナの2年間は海外旅行には行けない、国内でも移動制限に伴い遠出をしづらい空気が流れていることで人々の不満、ストレスが溜まっていることは間違いない。
その中で特にコロナ後を想定して注目を高めているのが、ホテルコンドミニアムのようだ。広めのリビングにキッチンが付き、中長期滞在できる仕様だ。家具などの備品がそろって売り出され、ホテルが提供するサービスも利用できることが受けている。
ホテルの1室を購入して運用する個人投資家などは、所有者が宿泊利用できることはもちろんだが、自分たちが使っていない時期を一般にホテル客室として貸し出し、稼働に応じて賃料収入が得られる。自ら楽しむために利用でき、インカムゲインが得られる一石二鳥となる。
コンドミニアムは三拍子そろいの投資商材として人気
また、コロナ下で外国人観光客が消滅しているが、世界のスキーリゾート地での不動産相場としては割安であり、ふだん雪との接点のないアジア圏のステータスとしての位置づけは変わっていないようだ。
LIRによると、「特に近年、北海道・ニセコでホテルコンドミニアムが増えています。コロナ禍においても地価が上がり続けており、建設ラッシュが続いており、売却益を求めて日本人投資家も商機を見出しています」として、コンドミニアムは自分で使い、他人に貸す、値上がりで売り出す、といった投資ニーズを引き付ける三拍子がそろった商材だと見ている。
健美家編集部(協力:
(わかまつのぶとし))