
池袋パルコの別館であるP’パルコに隣接する池袋駅前公園沿いに北東へ歩き、首都高速5号池袋線に突き当たる手前の右側に広がるエリア。
東池袋一丁目の45〜48番で、住友不動産が事業協力者として参画する「東池袋一丁目地区第一種市街地再開発事業」が進んでいる。既存建物の解体、再開発ビルや公共工事の施工などを行う受託者を、早ければ2022年6月に選定を行い、予定では2023年度中に着工し、2026年度の竣工を目指す。
アートやカルチャーの魅力をアピールする
ハレザタワーより高いオフィスビルを計画
計画地は健康プラザとしまのJR線を挟んだ南側で、明治通りの北側に位置。池袋の北端といってもいいエリアだ。計画しているのは地上33階、地下4階、高さ約180m、延べ面積約155,000uの高層ビルで、2020年に明治通りを挟んだ南側に誕生したハレザ池袋のハレザタワー(高さ158.28m)よりも少し高い建造物となる。
健康プラザとしまの隣に建つ豊島清掃工場の煙突が高さ約210mなので、遠景ではこれら3つの建造物が並ぶ様子が見られるに違いない。


もともとこの辺りは、築30年以上の建造物が4分の3以上を占めており、細分化された土地の活用が多かった。安全な歩行者空間も整備されておらず、広場や公園などの公共空間がない点も問題視されていた。そこで地元勉強会などを経て、2017年に市街地再開発準備組合が設立。2019年には東京圏国家戦略特別区域の東京都都市再生プロジェクトに追加された。



プロジェクトの概要は、国際アート・カルチャー都市として、池袋の魅力を高める芸術・文化の情報発信機能や、地域の回遊性の向上に貢献する歩行者ネットワークの整備となっている。
具体的には新しく誕生する高層ビルには、池袋の多様な文化を発展させ世界に発信するイベントホールが地下1階に、同じテーマの文化体験施設が2〜4階に入る。地下2〜4階に駐車場が整備されるほかは各フロアにオフィスが入り、建物全体としてはオフィスビルという位置付けになる。

広さ約4,300uのイベントホールと同約4,400uの文化体験施設によって、幅広い層の来場者に池袋ならではのアートやカルチャーの魅力をアピール。気軽に体験できる多様なコンテンツを提供し、周辺スポットを含めた関連情報を伝えることで、国際アート・カルチャー都市としての認知を広めていく考えだ。
池袋駅前公園が憩いの場所となる
緑豊かなプロムナードとして生まれ変わる
このプロジェクトの見どころはもうひとつある。それは池袋駅前公園がリニューアルされ、あわせて池袋駅北口付近から計画地までの道路が美装化されることだ。周知の通り、明治通りとJR線で囲まれたエリアは歓楽街として知られ、それゆえ池袋駅前公園は憩いの場として十分に機能していない面があった。地域の回遊性を向上させるのが主な目的だが、道路を含めた公園を「みどりのプロムナード」として整備することで、エリア全体のイメージを変えていく狙いもあるだろう。

現在のところ、四季折々の緑が楽しめるように街路樹などの植栽整備を予定。舗装を高質化し、これまでより緑豊かな空間にすることで来訪者に憩いの場を提供する。公園内には階段状の広場のほか、カフェや観光などの情報を発信するスペース、屋上テラスといった機能を有するパークセンターのような施設も考えられているという。

この緑の空間が計画地にも繋がるように、高層ビルの敷地内には約2000uの「みどりの丘」が整備。さらに同程度の広さを持つ「ゲート広場」やアトリウムを設け、イベントへの活用などで賑わいを演出する。そして、西側を通る南北区道の幅員を広げるなどして、ハレザ池袋から人を呼び込むための動線も強化する。

2019年より文化都市としての魅力を高めるために、池袋駅周辺の回遊を開始したイケバス(電気バス)の運行拠点もつくられる。3台分の乗降場や待機・充電スペースに加え、待合室や観光案内所などを備えたラウンジも設置。実は、現在も計画地の北側の道路はイケバスのBルートに組み込まれており、池袋駅西口とサンシャインシティを結ぶようにループ運行している。

東池袋、南池袋を中心に再開発が進み
東西エリアが一体化した街を目指す池袋
池袋のイメージが変わっていったのはいつの頃からだろうか。2014年に豊島区は23区で唯一、消滅可能性都市として名前が挙がった。翌2015年にブリリアタワー池袋や商業施設などで構成される複合施設、としまエコミューゼタウンが誕生し、低層階を占める形で豊島区役所が移転。
高層マンションと庁舎が合築された国内初のケースとして注目されただけでなく、「自然と建物の共存」をテーマに緑化パネルや太陽光発電パネル、再生木ルーバーなどで覆われた斬新でユニークな外観が話題となった。

そして、翌2016年に南池袋公園がリニューアルし、親子連れをはじめとした老若男女が集まるようになった。これをもって、雑多なイメージがあった池袋のイメージは大きく変わることになる。
しかし、それ以前から池袋の雰囲気が変わる兆しは見えていた。2007年にサンシャインシティの南側に、15階建てのオフィスビルと42階建ての高層マンションによるライズシティ池袋が誕生。4年後の2011年には北東に隣接する形で、52階建ての高層マンションであるアウルタワーが竣工した。

池袋の中心地からほどよい距離があり、東京メトロ有楽町線東池袋駅至近という立地のおかげで、新しい層が東池袋エリアに流入。池袋の住みやすい街としてのイメージが醸成され始めたのは、おそらくこの頃からだろう。この状況をさらに後押ししたのが、近くにあった造幣局東京支局が2016年にさいたま市へ移転したことだ。

この跡地には、芝生広場やカフェなどから構成されるイケ・サンパーク(としまみどりの防災公園)ととしまキッズパークが2020年に誕生。防災公園としても機能する豊島区最大の面積を誇るこの公園ができたことで、住みやすい街としてのイメージはさらに上がった。
そして、2023年秋には、同じ造幣局跡地に東京国際大学池袋キャンパスがオープンする。子育て世代やファミリー世代に加えて、若年層も呼び込むことになる。


一方の池袋駅西口では、2019年に池袋西口公園がリニューアルしたことが主なトピックだが、隣接するエリアでは3棟の超高層ビルや駅前広場、バスターミナルなどが一体で整備される市街地再開発事業の計画が進んでいる。

そして、2022年1月に豊島区は池袋再開発の総仕上げとして、池袋駅の線路上空を東西に結ぶ2つの歩道橋とあわせて、東西それぞれに駅前広場を整備する構想を発表した。
監修するのは同区都市政策顧問を務める建築家の隈研吾氏。区制施行100周年を迎える2032年の竣工を目標としており、完成する頃には国際アート・カルチャー都市として激変した池袋の姿が見られるだろう。
健美家編集部