ライブハウスや飲食店が連なるエリア
建物の老朽化による防災機能の低下が課題
駅周辺を中心に、大規模再開発が進められている東京都渋谷。8月24日には道玄坂二丁目に大型複合施設「道玄坂通 dogenzaka-dori」の開業が控え、その後も「Shibuya Sakura Stage」や「渋谷アクシュ」など、複数のオフィス・商業ビルが順次、竣工する予定だ。
そんな渋谷で、新たなプロジェクトがこれから本格化する。というのは、東京都が「東京のしゃれた街並みづくり推進条例」の「街区再編まちづくり制度」により、渋谷駅周辺の道玄坂二丁目地区を「街並み再生地区」に指定したからだ。
街区再編まちづくり制度とは、密集市街地などまちづくりのさまざまな課題を抱える地域において、細分化された敷地の統合や行き止まり道路の付け替えなどを行いながら、共同建替えなどのまちづくりを進めることにより、魅力ある街並みを実現しようというもの。
地域住民の協力により、都市計画に基づく規制緩和などを活用しながら、話し合いがまとまったところから段階的に整備を行っていく。
これまでに武蔵小山駅東地区(品川区)や南池袋二丁目地区(豊島区)、新宿駅東地区(新宿区)などが指定を受け、渋谷区では神南一丁目北地区、渋谷三丁目地区に次いで、同事業が3地区目となる。
指定されたのは、道玄坂と文化村通り、渋谷駅前のスクランブル交差点やハチ公広場にも面した、約8.5haのエリア。大通りから一本中に入るとライブハウスや飲食店、ホテルなどが集積している。
かつては渋谷の中心地だった、「百軒店(ひゃっけんだな)」も含まれ、いまもにぎわいを生み出しているが、建物の老朽化による防災機能や安全性の低下が課題となっていた。
これを踏まえ、今回の整備方針では建物の建替えに合わせ、回遊性を向上させるための貫通道路を整備。「安心・安全なまちづくりの実現」のほか、「音楽やファッションなどのカルチャーを発展させる個性・魅力を伸ばす機能の誘導」「歩いて楽しいウォーカブルな歩行者空間の形成」「百軒店エリア・道玄坂小路沿道における魅力的な環境創出」「緑豊かな沿道の形成」といった目標を掲げている。今後は地権者と話し合いながら、具体的なまちづくりを進めるという。
一方、渋谷区が2011年に策定した「渋谷駅中心地区まちづくり指針 2010」でも、道玄坂や文化村通りは賑わい拠点として、歩行者ネットワークの形成や音楽・ファッション・宿泊・情報発信など多彩なコンテンツを支える机上の強化といった将来像が示されていた。こうした方針も計画に反映されていくに違いない。
広大なエリアを対象とした、今回の再開発。それなりの時間をかけながら、徐々に形になっていくだろう。昔ながらの渋谷の雰囲気を色濃く残すエリアが姿を消すのはさみしい話だが、東京のまちづくりにおいて防災機能の向上は無視できない。これまでの歴史を受け継いだ再開発を期待したい。
また、大規模なリニューアルでより多くの人が訪れるまちになれば、さらなる発展・成熟を後押しするのは言うまでもないが、こと渋谷駅はJR東日本の各線、京王井の頭線、東急電鉄各線、東京メトロ各線と、4社の路線が乗り入れるターミナル駅。沿線の再開発や住宅需要にも影響を与えるのは、想像に難くない。都心から郊外にまで及ぶまちづくりが加速するきっかけになるかもしれない。
健美家編集部(協力:
(おしょうだにしげはる))