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追い出す前に話を聞いてみた。6か月滞納者が長期安定優良入居者さんになった話

赤尾宣幸さん_画像 赤尾宣幸さん 第70話 著者のプロフィールを見る

2024/3/3 掲載

前回のコラムで少し触れたが、私は家賃保証会社を使っていない。

参照:家賃保証会社に入る前に確認したいこと。実際に使っている大家仲間たちに評判を聞いてみた

仲介会社がご入居時に1年だけ保証を付けるが、その後の更新はしない。所有物件が23戸と戸数も少ないこともあり、最近の滞納は1戸もない。これはご入居時に保証会社がしっかり審査してくれるからだろう。もちろん、運が良かったというのもあるあだろう。

また、ファミリータイプの分譲マンションは退去が少なく皆さん長期ご入居だ。トラブルは「エアコン故障」「給湯器故障」など、設備関係だけだ。
そういう意味で私は「楽ちん大家」だ。

■長期入居者の滞納の理由

家賃滞納はかつて3回ほどあった。いずれも同一人物。間もなく高齢者になる女性だ。物件は1kのアパートで、家賃は32,500円。物件は15年前に築10年で購入したもので、彼女はその時からお住まいだった。

最初の滞納は13年くらい前だった。管理会社が催促するが支払わず、あっという間に半年分の滞納になった。そこで管理会社の担当者と一緒に女性を訪問した。

管理会社(以下、管):家賃払って貰わないと困るんですが。
滞納者(以下、滞):アルバイト先の出勤可能日が減っているんです。だから払えません。

管:それはあなたの都合で、家賃をちゃんと払わなければ出て行ってもらいますよ。
滞:働きたくても仕事がなく、お金がなくて支払えないんです。

管:じゃあ、違うところで働いたらどうですか。
滞:私はアイスクリームを作る今のところで働き続けたいんです。

私:それはあなたの都合でしょ。私は家賃いただけないと困るんです。
滞:来月は仕事に行ける日が増えるので、来月は払えます。

私:滞納分もお支払いいただけるんですか?
滞:一度には無理です。分割で払わせてください。

管:これだけ滞納すると追い出すこともできるんですよ。
滞:必ず払うので、それまで待ってもらえませんか。

私:必ず払ってくれるんですね。
滞:月に1万円ずつ上乗せして必ず払います。

私:では、必ず払ってくださいね。

その後、彼女はちゃんと1万円ずつ上乗せして、滞納家賃を完済してくれた。

■2回目の滞納

ところが、完済して2年足らずで再び滞納。2か月間、全く入金がされない。今度は私一人で督促に行った。

私:また家賃をお支払いいただけないんですが。3か月滞納だと裁判して出て行ってもらいますよ。
滞:払いたいけど、また仕事が減って・・・

私:仕事が減ったなら、ほかの仕事もやったらいいじゃないですか。
滞:私には無理なんです。でも、もう少ししたら仕事が増えるのでそれまで待ってください。

私:それは無理です。どんどんたまる一方ですよ。
滞:約束しますから何とかお願いします

私:じゃあ、とりあえず払える額だけでも払ってください。但し、事前に今月はいくら払いますと連絡ください。
滞:ありがとうございます。必ず払います。

その後3か月くらい、家賃に足りない金額の振り込みが続いた。しかし、お詫びと振り込む金額を電話してくるようになった。
その後、滞納分を分割して払うようになり、やがて滞納家賃は完済された。

■3回目の滞納の後で生活保護受給へ

そして、コロナ。3回目の滞納が始まったが、振込額の事前電話はちゃんとしてきた。やがて、また支払いがゼロになった。
理由を聞くと、足が悪くなって働けなくなったという。

私:それは大変ですね。体が悪くて働けないなら生活保護を受けたらいかがですか?
滞:社会にご迷惑かけたくないんです。

私:それは立派ですね。だけど私に迷惑かけるのは構わないんですか?私としては受け入れることができないので、出て行ってもらいます。
滞:この年だと、部屋探しは無理です。

私:しかも滞納の履歴があるので、部屋探しは難しいかもしれませんね。足が悪くて役所に行けないなら、私の車でお連れしますよ。
滞:考えさせてください。

そして翌月から家賃に1万円ずつ上乗せして、滞納分の返済が始まった。
自分で生活保護を受けることにしたという。彼女としては苦渋の選択だったと思うが、仕方ない。

■相手に支払う気があるのなら、待つのも愛

その翌年の正月。アパートの前でばったり彼女と会った。
私を見るなり彼女の動きが止まる。目からは大粒の涙が溢れてくる。

「大家さんのおかげでホームレスにならずに済みました。正月を部屋で迎えることができました」と。抱きつかれそうな感じで迫ってきたが、そこは何とかかわさせていただいた。

「大家さんはホントに恩人です。一生ここに住ませてください」
ということで長期入居確定。生活保護で安定収入が入るので、もう滞納もないだろう。

もし、裁判して追い出していたらどうなったか。
滞納家賃の回収は無理だろう。さらに裁判の費用、リフォームの費用、募集の費用が出ていく。強制執行も必要だったかもしれない。

もちろんその間の家賃も入らない。多額の損失が出て、彼女も不幸になる。
後味の悪い結果しか想像がつかない。
また、新しい方がご入居いただいてもすぐに出るかもしれない。

それが、1円も払わずに滞納全額回収、さらに長期ご入居確定になった。
それを考えると、いい判断だったと思う。

滞納→督促→3か月滞納→明け渡し訴訟→強制執行。
そういう流れもいいだろう。
しかし、支払う気があるのなら待つ。そういう愛も大切だ。

情けは人の為ならず。それは、いつか自分に回ってくるかもしれない。
入居者さんの生活があっての大家。法で解決するより、話し合って解決できればそれに越したことはない。

 

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※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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プロフィール

赤尾宣幸さん

赤尾宣幸さんあかおのぶゆき

福岡県宗像市在住
不動産賃貸業
デイサービス事業運営

FBにて以下のグループを主宰
DIYを楽しむ会
不動産イベント倶楽部
居酒屋セミナー
高齢者向きアパートの会
DIYを楽しむ大家の会

プロフィールの詳細を見る

経歴
  • □1960年
    福岡生まれ

    □1978年
    日本国有鉄道入社

    □1980年
    中央鉄道学園大学課程入学

    □1983年
    中央鉄道学園大学課程土木科卒業

    □1993年
    自己所有マンションを賃貸にして賃貸経営開始

    □1996年
    キリン・ドラフトマスター取得

    □1997年
    日本初の複数のテナントが入るフードコート「小倉食堂」を立ち上げ

    □2002年
    妻の夢実現のためにデイサービスを立ち上げる

    □2003年
    西日本旅客鉄道退社

    □2007年
    介護タクシー開業

    □2009年
    高齢者向きアパート開業

    □2011年
    九州経済産業局 専門家登録

    □2022年
    デイサービス事業と不動産賃貸業を行いながら、自身の夢である「高齢者向きアパートの普及で一人でも多くの人が幸せを感じてもらうこと」に向けて執筆やセミナー等を行っている

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