家賃滞納。そのリスク回避に家賃保証会社を使うのはアリだろう。
実は、私は原則として保証会社を使っていない。最初の1年だけ仲介会社が付けるが、入居者さん審査の意味合いが強い。審査に通った方だけご入居いただいている。
幸い、長期ご入居が多く、滞納はないしトラブルもない。1人だけ時々滞納するが、直接話し合って理由を聞き、一緒に解決策を考えてきた。
しかし、滞納に悩む大家は多いようだ。また、高齢者の受け入れリスクに「滞納」をあげる人も多い。「亡くなった後」の残置物撤去まで面倒見てくれるのかも気になるところだろう。
そこで私の大家仲間たちに、家賃保証会社を使ってみて、実際にどう感じているかを聞いてみた。
■家賃保証会社に入る前に確認したいこと
まず、家賃保証会社を使っていても、必ずリスク回避できるとは限らないという。
代表的な事例が、保証会社の倒産だ。入居者さんが払ってくれた家賃すら回収できなくなった事例もあるという。リスク回避どころか大変な事態になる。
これに対しては、保証会社の経営内容分析や、賃料等の送金は信託銀行が行う「信託スキーム」が使えるのか、家賃を前月末までに送金してもらえるのかなどを考えるのも重要だろう。
また、保証会社を選ぶときに以下を確認したほうがいいという。また、保証内容は変更されることも多いので、契約時には最新情報の確認が必要だ。
・家賃保証はいつまで続くのか
入居者さんが亡くなったり夜逃げした場合、明け渡しまで家賃保証してもらえるのか
・残置物撤去はしてくれるのか
入居者さんが亡くなったり夜逃げした場合、残置物撤去までやってくれるのか
・法的手続きまでやってくれるのか
明け渡し訴訟などの法的手続きまでやってくれるのか。その費用はだれが払うのか
・審査は厳しいか、そうではないか
審査が厳しいと保証が付きにくい。逆に緩いとトラブルになりやすい人が入ってくる
・家賃保証以外のサービスはどうか
孤独死保険、更新手数料、短期解約違約金、残地物撤去費用、法的手続き費用などはどうなっているか
・退去時の修繕費上限と、支払いに入居者さんの署名が必要か
退去時の修繕費の上限はいくらか。入居者さんの署名がないと支払われないというところもあるという。トラブルで退去する入居者に署名に応じてもらえるか考えてみたい
・契約した後の手続きはスムーズか
通常は1日程度で審査がおりるようだが、中には結構時間がかかるところもあるという。契約、口座引き落とし設定はWebで可能で、その月の末に引き落とし開始も可能なところもある
・更新手数料を入居者さんから直接徴収してくれるか
更新保証料を直接徴収してくれると手間が省ける
・保証会社が倒産した場合の移行はスムーズか
滞納など問題がある入居者さんの場合、新しい保証会社を探すのが大変。大家の直接管理にする場合にスムーズに移行できるか
・以下の保証はどうなっているか
保証上限:保証される家賃の上限
原状回復:契約時の状態に修復する費用の保証
法的手続費用:債務不履行による明渡し訴訟費用などの保証
残置物撤去:明渡し時の残置物撤去にかかる費用の保証
・業界団体に加盟しているか
業界団体には公益財団法人日本賃貸住宅管理協会(日管協JPM)、一般社団法人全国賃貸保証業協会(LICC)、一般社団法人全国保証機構(CGO)といった組織がある。これらに加入しているかどうかも考えてみたい。
■単身高齢者のリスクヘッジにもなる?
保証会社は管理会社経由で加入するところが多いが、大家が加入することができる保証会社も出てきた。自主主管理で有名なあの大物大家さん一押しの保証会社だ。
高齢者のリスクヘッジにも役立ちそうだ。この会社のサービスの概要は以下の通り。
・普通の保証に加えて、孤独死保険が標準付帯。更新手数料、短期解約違約金なども保証
・退去時の修繕費が家賃の2カ月分で、入居者が非を認めない場合も出る
・水のトラブル、硝子破損、盗難などのトラブル対応が標準付帯
・保証料が家賃の50%と割安で保証人は不要。保証会社によっては80%や100%などもあり、さらに保証人も必要なところもある
・入居者さんが家賃を払わなくても前月末までに振り込まれるので、資金繰り的にも楽だし、請求する手間もない
■保証会社によって異なる強みと弱み
以下に、大家仲間が使った保証会社の事例を挙げるので参考になれば幸いだ。なお、保証会社の「担当者」によって対応が違うこともあるようだ。
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【A社】
初対面の印象がよかった。審査はほとんど通るが、属性が悪くなる傾向がある。退去時の原状回復工事の保証は理屈をつけて払わないし、対応が悪い。
【C1社】
入る時と辞める時の対応が極端。夜逃げの対応に問題があった。過去に対応でトラブルになったこともある。
【C2社】
保証が手厚い。審査は緩いが、属性が悪くなる傾向がある。退去時の修繕費は入居者が認めない場合も出る。保証料が家賃の50%で保証人不要。家賃は前月末日に全額入金。
【E社】
大手だが、担当者の対応が悪い。なるべく出したくないという姿勢が感じられる。
【F社】
大手で知名度も高いが、原状回復と短期解約違約金を払わない。対応最悪。
【J社】
退去するまで家賃保証してくれて、大家の負担なしに残置物処理まで全部面倒を見てくれる。入居者さんが亡くなっても不安は少ない。
【N社】
大家自身で入居者さんの家賃入金明細を口座ごとにネットで確認できる。
【O社】
経営内容を数社比較して決定した。審査は厳しいが経営内容がよい。保証は最大36カ月。
【Z社】
担当者との連絡がつきやすい。上場企業なので安心。審査が厳しいが生活保護も通りやすい。保証料は家賃の50%で2年目から年間1万円。初回100%のみもある。但し最低保証料3万円。滞納12か月分までで、退去まで家賃を保証。補修費上限2か月、訴訟を含め退去まで面倒見てくれる。
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高齢者のリスクに「孤独死」「滞納」「残置物処理」などがあるが、「保証会社を選ぶ」ことでこれらにも対応できそうだと感じた。