今年は、年明け早々元旦に能登半島地震がありました。この地震被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。
不動産賃貸業を生業とする身としては、地震による家屋の被害に目が行きます。そんななか、今回の地震であらためて注目したのが、地盤の液状化です。
今回の地震では、各種メディアで報道されているとおり、家屋の倒壊や津波による被害と並び、地盤の液状化現象も各地で発生しました。
■地盤液状化の影響
土地が液状化すると、実際にはどのようなことが起こるのでしょう。
具体的には、次のようなことがあげられます。
・地盤が沈下したり、地中内のマンホールや配管が浮き上がったり、建物が傾いたりする。
地震の揺れでの崩壊を免れた家屋でも、 液状化により傾くと、平衡感覚が狂い、健康被害につながります。
・液状化した地盤は沈下するだけでなく水平方向へも大きく動くため、ガス管や上下水管などの埋設管が切断されたり、継ぎ目からはずれたりする。管が使用不能になるため、直接液状化の被害が無かった物件や液状化していない地域にも影響が出る。
東日本大震災の時も、ベイエリアでタワマン本体には被害がありませんでしたが、その地域の上下水道が液状化による被害のため使用不能になり、住み続けるのが困難になったことがありました。
■液状化の発生条件
液状化はどこでも起きるわけではありません。次の3つの条件がそろった場合に液状化が起こる可能性が高くなります。
・緩い砂質地盤
地盤は通常、砂の粒子が噛み合って固まった状態となっていますが、地震が発生し、大きな揺れでシェイクされると砂の粒子がバラバラになり、水に浮いた状態になります。
・地下水位が高い
地下水の位置が地表から10m以内で、地下水位が浅いほど、通常から地盤の中の水分が多く液状化が起こりやすくなります。
・大きな揺れが発生
震度5以上の揺れで起きやすいです。また揺れている時間が長くなるほど被害が大きくなる傾向にあります。
具体的な例をあげると、東日本大震災では、浦安などの東京湾に面したベイエリアや、関東内陸部でも田や沼地を埋め立てた土地での被害が大きかったです。
下の図は、東日本大震災時に関東で液状化が起きた箇所を示しています。東京湾岸ベイエリアの埋立地盤のほかに利根川や荒川沿いなどの元は川だった土地が目立ちますね。
*国土交通省websiteより引用
上図の通り、液状化は海岸や河口付近、河川の扇状地などの水分を多く含む緩い砂質の地盤のエリアで発生しやすいです。また、砂浜の埋立地や砂を多用した干拓地など、人の手によって造成された地盤でも起こりやすいといえます。
東日本大震災では、浦安などの東京湾に面したベイエリアの液状化が強く記憶に残っています。今でも動画投稿サイトなどで、地震発生時の状況を見ることができます。
震度5クラスの地震が5分程度続き、長時間大きく揺さぶり続けられたことにより液状化現象が発生。地上の構築物は水の上に浮かぶように左右に揺れ、ところどころから砂を含んだ水が噴き出し、マンホールが塔のようにせり上がりました。
浦安などのベイエリアは、元は遠浅の干潟で、砂浜でした。その上を粘土質の土で埋め立てたとしても、元の砂浜の地層を地盤改良しなければ、液状化による被害は免れないでしょう。
今回の能登半島地震でも、震源から約160キロ東に位置し、信濃川の河口部にある新潟市でも、震度5強のエリアで液状化が確認されました。また、富山、福井両県でも液状化の被害が確認されています。
日本海側では季節風が砂を陸側に運ぶため、山陰から東北地方にかけて砂の多い地層があります。そして砂丘がところどころにあり、以前は湖沼や田の埋め立てに砂が多用されていたようです。
揺れる時間が短くても、震源地からそう遠くはなく、震度5以上あれば、液状化の被害があることがわかります。
また、震源地に近く大きく揺れた輪島市では、地上7階建ての鉄筋コンクリート造のビルが横倒しになりました。周辺では地盤の液状化や傾いたビルが複数あることが確認されています。
地震発生から1か月経っても建物の瑕疵が原因といった報道がされていないことから、ある程度は液状化する地盤に原因があったと考えられます。
■首都直下地震が発生したら、液状化は起きる?
仮に首都直下地震が発生した場合、東京においても同様の地盤液状化による建築物等の被害が想定されます。
下記図は東京都の液状化が起こりやすい場所を示した地図です。
ピンクの箇所が液状化の可能性が高いエリアです。主に京浜東北線より東側、縄文時代には海だったエリアが多く占めています。
*東京都websiteより引用
どれほど耐震性の高い物件でも、その下の地盤が軟弱であれば、液状化現象を起こし物件が傾いたり沈んだりします。
東京都が2022年に公表した首都直下地震の建物被害想定では、液状化によって地盤が水平方向に数メートル動く状況になれば高層建築のくいが壊れて傾く危険性があるとされています。
対策として地盤改良する手もありますが、地域全体で取り組む必要なことが多く、個人個人では対応するのは難しいのが現状です。また、一度液状化した土地は、再び液状化する可能性が高いです。
浦安のような大都市近郊なら、液状化により大きな被害を受けて、一旦物件価格が下落しても、喉元を過ぎれば、再び上昇する可能性もあるでしょう。
しかし、人口減少・過疎化が進行しているエリアでは、液状化によりその地域全体が大きな被害を受けたなら、インフラ復旧もままならず、人口流出により、そのまま衰退していくかもしれません。
個人レベルの不動産投資の観点から考えれば、液状化の起こる場所には物件を所有しないことが最善でしょう。