この他にも、建物の高さについての法的制限によって建物の大きさの限度は決まります。今回のコラムでは、RCマンションを計画する際の「 高さ 」についての規制について説明していきます。
■ そもそもRCマンションの高さとは?
僕が建てているRCマンションは「 壁式構造 」という構造を採用していて、階高は2.6メートル程です。階高とは「 床の表面から床の表面までの高さ 」をいいます。
各階の階高を2.6メートルで設定した場合、単純に言うと2階建は5.2メートル、3階建は建物高さ7.8メートル、4階建ては10.4メートル、5階建ては13メートルになります。
とりあえずは2階が5メートルを超えるぐらいの高さ、4階はその倍で10メートルを超えるぐらいの高さと覚えておくとこの後の話が分かりやすいです。
さて、高さに関しての法的制限で覚えるべきものは以下の「 道路斜線制限 」「 高度地区( 北側斜線制限 )」「 日影規制 」3つです。
■ 道路斜線制限( 建築基準法 )
道路斜線制限は、敷地と接する道路の反対側の境界線までの距離の1.5倍以下( 商業系、工業系用途地域の場合 )に建物の高さを制限します。
前面道路幅員が広ければ広いほど、建物と道路の反対側の境界線までの距離が広いため高い建物が建てられます。道路斜線制限が適用されない地域は基本的にないので、道路斜線制限についてはどの敷地でも必ず検討しなければなりません。
前面道路幅員が4メートルの場合は、敷地の道路境界線上には6メートル( 4×1.5=6 )の高さまでしか建てられませんのでRCマンションの場合は3階部分から影響を受けます。
前面道路幅員が10メートルの場合は、敷地の道路境界線上には15メートル( 10×1.5=15 )の高さまで建てられますので5階建てのRCマンションを建てても高さの制限はかかりません。
道路斜線制限には前面道路が複数ある場合の取り扱いや、建物のセットバックによる緩和、天空率による緩和などの応用ルールがありますので、様々な例に触れながら応用ルールも学んでいきましょう。
■ 高度地区( 建築基準法、都市計画法 )
建築基準法には北側斜線制限という敷地の北側の高さの制限がありますが、東京都には都市計画によって高度地区を指定しており、高度地区の規制は北側斜線制限より厳しいため高度地区による高さ制限を覚えておく必要があります。
高度地区には「 第1種 」「 第2種 」「 第3種 」「 高さの最高限度を定めたもの 」があります。高度地区はマイソク( 販売図面 )などに記載がないケースも多いため、土地を検討する際には必ず都市計画図で高度地区を調べるようにしましょう。
「 第1種高度地区 」に該当する場合は3階建てすら建たないケースも多くマンション用地には向きません。従って検討対象から除外しましょう。
「 第2種高度地区 」では、隣地境界線までの真北方向の水平距離の1.25倍に5メートルを加えたものが高さの限度となります。RCマンションの場合、3階部分から高さが制限される可能性があります。
「 第3種高度地区 」では、隣地境界線までの真北方向の水平距離の1.25倍に10メートルを加えたものが高さの限度となります。RCマンションの場合、5階部分から高さが制限される可能性があります。
前面道路が北方向の接道である場合には、隣地境界線ではなく、道路の前面道路の反対側の境界線からの水平距離で高さの限度が決まります。
そのため第2種高度地区でも前面道路が北方向であれば4階建てや5階建てが建築可能なケースもあります。高度地区は敷地の形状と前面道路の接道方向により影響する内容が大きく異なる高さ制限と言えます。
■ 日影規制( 建築基準法 )
日影規制( ひかげきせい、にちえいきせい )は、建物からできる影が、周辺の土地に一定時間かからないようにすることにより、日照環境を確保するための制限です。日影規制もマイソクに記載がない場合が多いため、必ず都市計画図で調査した上で検討してください。
ある敷地上に計画する建物が日影規制にひっかかるかどうかについては、基本的に建築士等の専門家による検証を行う必要があります。しかし、いくつかのルールを知っておくことで、専門家の検証を受ける価値があるかどうかの判断をすることができます。
ルール① 商業地域は規制対象外(ただし敷地北側が規制対象地域の場合は規制対象となることがある)
ルール② 高さ10メートル未満の建物は規制対象外(低層住居専用地域を除く)
ルール③ 敷地の北側に接道がある場合は規制の緩和がある
ルール④ 東西に長い土地より南北に長い土地のほうが規制対象となりづらい
ルール② 高さ10メートル未満の建物は規制対象外(低層住居専用地域を除く)
ルール③ 敷地の北側に接道がある場合は規制の緩和がある
ルール④ 東西に長い土地より南北に長い土地のほうが規制対象となりづらい
日影規制の対象地域の敷地をスピーディーに検討する際には、基本的に建物を10メートル未満の高さで計画するのが無難です。土地の購入が決まってから専門家の検証によって計画した建物が日影規制にひっかかることが分かったとしても後戻りできません。
4階建てのRCマンションを半地下構造とすれば建物の高さを10メートル未満にすることができます。たまに町を歩いて見かける半地下の4階建てマンションは日影規制の回避のための可能性が高いです。
■ その敷地は高さ10メートルを超える建物を建てられるのか
都内の新築RCマンション投資で高利回りを実現するためには、小さい敷地になるべく大きく賃貸面積を確保することが必須です。現実問題として、最低でも4階が建てられる敷地でなければ採算が合いません。
しかしこれまで見てきた通り、高度地区や日影規制の影響で高さ10メートルを超える建物が建てられる敷地は多くありませんし、見つかったとしてもその分価格が高いです。
高さ10メートル未満にできる半地下構造の4階建マンションを建てる前提で土地を探すか、より収益性の高い5階建てマンションを建てられる土地を探すかで、土地の選択範囲が大きく異なるので、どのような方針で土地を探すかあらかじめ検討しておくと良いでしょう。
前回と今回のコラムで見てきた法的規制により、ある土地に建てられるマンションの面積や高さなどの「 ボリューム 」が決まります。
マンションは賃貸する専有部と、階段、廊下などの共用部に分かれますが、これらの配置に関するルールや居室の数に対する規制もあります。これらについては、また次回のコラムで説明していきたいと思います。