「金融暴落!グレートリセットに備えよ」岩永憲治著 集英社刊が静かなベストセラーになっているようです。
私自身、この本を発売とほぼ同時に購入して一読し、「時期や相場の振れ幅では細かい相違点が色々あるものの、岩永さんの考えと自分の考えは似ている部分が多いな」と感じました。
本書の冒頭に、1998年に起きた“147円だったドル円が数日で110円台にまで動いた当時“の回顧が出てきます。私はその頃、相場初心者のヒヨッコで、ドル円で損失を出した事を改めて想起して、感慨深いものがありました。
それはさておき、今回、この本の述べている内容を簡略にご紹介して、私の考えや感想もそれに付加したいと思います。岩永さんの考えをごく簡単にまとめます。
1)これから100年に一度の大暴落がやってくる。それは自然の作用である不景気に対抗して、今までマネー供給等で誤魔化してきた事へのツケ、いわゆる反作用が本格化してくる事による。
2)NYダウも今の数分の1に下落してもおかしくはない。(私見ですが、日経平均もそうなると7,000円割れもあるのかもしれません)
3)紙幣は幾らでも刷れるが、それは何の裏付けもない単なる紙切れといえる。究極的には金価格が今の数倍になるシナリオも考えられる。
4)しかし、まだ巨大緩和バブルの最終最後までの熱気は消えていない。今後、株価や不動産価格は更に高値をうかがい、2024年中に新高値を付けてから以降が、本当のバブル崩壊になっていくのでは…。
■ 今は史上前例のない巨大バブルの渦中
私自身はコロナ前から、過去からの自然な景気循環や多すぎるマネー供給がインフレを招き、それが継続出来なくなって収縮した結果、2020年には不況になるだろうと予測してきました。
しかし、その後、政策が一変、「後先を考えない金融政策」で株価や不動産価格の暴落を無理やりねじ込み、皆様もご承知の通りのブル相場に至っています。同書では、「コロナでの金融緩和は、最終的な巨大バブル最高潮へのステップ」と表現されています。
日本を含む先進諸国では、金融緩和のツケの一部として、紙幣が減価した結果の悪性インフレに陥っています。食料品やエネルギー代、資材代の高値で、普通の生活をするだけでコストがどんどん上がっています。
細かく見れば、今現在は「インフレ下のデフレ波の渦中」にあります。商品市況としての原油価格、資源価格は下落していますが、日本では自給出来ないエネルギー価格等は円安の影響を受けて高騰を続けています。
これは、日銀が日米金利差を傍観しているためです。一転、金利差が縮めば、円高と不動産価格の下落につながることになるでしょう。今はそのタイミング待ちの最中でしょうか。
「今は史上前例のない巨大バブルの渦中という事を忘れないでください。必ず、パーティーには終わりの時間が来ます。それがいつなのか、そのタイミングを図っているのが伝統的な圧倒的金融財閥や巨大ヘッジファンド、老舗グローバルマクロファンドなのです」
これは同署の一節ですが、岩永さんの強いメッセージを感じます。
■ 腕利きファンドマネジャーたちも「大困難な時代」を予想している
ジョージ・ソロスの右腕だったスタンリー・ドラッケンミラー、世界恐慌の研究者でファンドマネジャーでもあるジェレミー・グランサム、リーマンショック時に損失を出さなかったヘッジファンドの老舗であるシエラタクティカルオールアセットを運用しているデービッド・ライト、ヘッジファンドの帝王レイ・ダリオやソロスファンド等、おおよその腕利きファンドマネジャーは、今後の大困難な時代を予想しています。
それはベテランからすれば、共通のコンセンサスなのです。あとはそれがいつなのか、暴落時にどう立ち回るのか、ですが、それは各自が開示しているポートフォリオや「検討を進めている」とのコメントから伺うことができます。
「S&P500を定期的に積み立てれば絶対大丈夫」ということは、過去200年分のチャートを見ればありえないと、ベテラン勢は解っているはずです。金融緩和をやり過ぎた「過去40年」が異常であった、と考えるのが通常かもしれません。
ちなみに、岩永さんの著作中に「太陽黒点の増減での景気判断」という話が出てきます。森羅万象のごく一部でしかない人間界ですから、古来より万物と同じく春夏秋冬や太陽の動きにかなり左右されます。
太陽黒点数が減少期は不景気や疫病、冷害が起こりやすく、太陽黒点数が増大期は好景気や暴動・戦争、日照りが起こりやすいというのは過去のデータから明らかです。
私が2020年の景気後退を予測していた際、2020年初頭に太陽黒点数が極小になる観点が判断材料の一つでもあったのですが、太陽黒点数の今はかなりの増大を継続している事が観測されています。
そうなると岩永さんの「巨大バブルはまだこれから有終の美を飾るべく、まだ燃え盛る。もう少し時間はある」という事の蓋然性が出てくるように思われます。
いずれにせよ、不動産投資を大借金で進めようと考えている皆様も、そんな世界背景を知った上で投資を進められる事が肝心です。
■ 2020年から現在までの私のポートフォリオの変化
「2020年からの高島さんは、どんな変遷だったのですか?」と先日聞かれました。
1)2020年初頭まではリセッションを予測して、2019年までに不動産ポートフォリオを半減させました。(約100世帯保有→約50世帯)
2)2020年夏のコロナショックが大きい時には、もう少し景気後退があると予測し、ポジションを増やしませんでした。
3)コロナショックを契機とした財政バラマキで、投資用ではない実需不動産や資源やバリュー株式は良さそうだと予測し、2021年から東京都下で戸建てやファミリータイプ分譲マンション(賃貸・売却、両にらみできるから)、店舗(コロナで評価が下落していた)等、約8,000万円分のポジションを増やしました。
4)2022年夏、1億円で一棟物を売却し、リバランスを再開しました。
5)2022年冬、インフレ長期化も睨み、徒歩数分内に大規模商業施設があり、高速道路インターチェンジが近くにあり、JR駅徒歩圏で自給自足が可能な物件を購入しました。
株式は利食いして、今現在はほとんど所有していません。
岩永さんの予測や私の予測が当たるのかは判りませんが、「因果応報」という自然界の法則から、これだけのマネー供給の副作用は広範囲に及ぶことが避けられないように思われます。
膨大なマネー供給は、金銀プラチナや各種資源の価格高騰を招きます(世界恐慌に至れば、当初は連れ安するでしょうが)
そのような資産を保有している投資家からすれば、「どんどんマネー供給を先進諸国が行えば良いよ。紙幣は食べられないからね」といった思惑になるのかもしれません。
■ 金利が上がると不動産の価格は下がる
「どんな時でも、借りられるだけ借りて、投資したい。買えれば家賃が入り、確定的な利益になるだろうから」
こんな考えをされている不動産投資家の方もいらっしゃることでしょう。それも一理ありますが、金利が上がると不動産の価格はかなり下落します。
短期金利上昇を受けたと仮定して、調達金利が例えば5%になった場合は、年利5%の物件を買う経済的合理性は全くないからです。調達金利が5%なら、最低年利10%以上は投資物件の利回りとしてほしい所です。
いずれにせよ、投資の参考になる部分がありますので、「金融暴落!グレートリセットに備えよ」の一読を皆様にお勧めする次第です。
都市部の不動産市況は、各種景気サイクルや金利、株価動向に左右されています。幅広く情報を収集されていき、皆さまの投資活動が素晴らしいものになる事を心より願っています。