いまや「小学生のなりたい職業ランキング」(進研ゼミ小学講座、2021年調べ)で1位になるほど、身近な職業となったユーチューバー。ユーチューバーとは、動画共有サイトYouTube上で自主制作の動画作品を継続的に公開している人を指すが、ユーチューバーに限らず、仕事や趣味の一環で、動画の撮影や編集を行う人も増えている。
賃貸住宅でも動画撮影ができるように、遮音性に優れていたり、海外の音響設備に対応できるコンセントを設置したり、スポットライトを完備した賃貸住宅が登場している。
都内で、動画撮影等に使われる撮影スタジオを運営するカメラマンに、どのような撮影ニーズがあるのか、ユーチューバー向け賃貸住宅のニーズはあるのかなど気になるポイントを聞いた。

ユーチューバーに限らず、幅広い撮影ニーズがあるのは確か。
1時間2000円前後、多いときは1ケ月に12万円の売上
都内在住のカメラマンのA氏。写真や動画の撮影、編集を行う傍ら、自身が運営する撮影スタジオを、レンタルスタジオとして、時間貸しして10ケ月ほどが経つ。20uの広さながら、多い月には12万円の売り上げになるというから驚く。
「自分が利用しない時間帯に限って、レンタルスタジオとして運用しています。たとえば七五三など撮影ニーズがあり、忙しいときには、自社利用が増えるため、レンタルスタジオの売上は減ります。毎月の変動はありますが、少ない月でも4万円ほどの売上になっています」
レンタルスタジオの相場は1時間1200〜2000円前後。「スペースマーケット」や「インスタベース」といった、レンタルスペースの集客に便利なポータルサイトを利用しており、売上の3割はポータルサイトに手数料として支払うことになる。1年のなかでも12月や、3〜4月はレンタルスペースの需要が増すそうだ。
利用金額は、相場を見ながら、変動させ、直前に申し込むと割引される直前割引などもあり、土日は週末料金としてやや高くしている。
カメラマンの本業があるため、利用客からの問い合わせなどは、売上の1割を支払い、代行業者に委託している。つまり売上の4割は手数料などの経費がかかることになる。
「儲かるかどうかと聞かれれば、それほど儲かるビジネスではないでしょう。ただスタジオを使ってない時も有効活用でき、代行業者を利用することで、手間がかからず、本業とは異なる副収入になる点は魅力です」
では、ユーチューバーの人気が増すなかで、どのような撮影ニーズがあるのだろうか?
「法人から個人まで、商品撮影、プロフィール写真の撮影などが一定数あり、プライベートでコスプレ系の撮影などもありますね。ユーチューバーの利用も一定数ありますが、増えている実感はあまりなく、幅広く使っていただいています」
撮影に便利なのは、静かで、汎用性があるスペース。
防音設備までは必要ない。白バックが利用しやすい。
動画撮影をする人にとって、どのようなスペースや設備が喜ばれているのだろうか?
「意外かもしれませんが、がらんとした、シンプル場所が喜ばれます。逆にいえば、そうしたスペースが少ないのです。うちは20uしか広さがありませんが、その分、細かなテクニックとして、天井も活かそうと、天井も床と同じ壁紙にして、天井と壁紙の境目が分からないようにしています」

A氏の撮影スタジオは、人物撮影や物撮りなどしやすいように、白い壁と、黒い壁の2パターンを撮影できる撮影スペースを用意している。また、自然光で撮影しやすいよう、東側が全面窓で、自然光がよく入るのも撮影しやすいポイントになっている。
「小道具も重要です。椅子、花瓶、花などを揃えています。照明は、撮影用のLEDを有料オプションで貸出していますが、結構人気です」
場所は新宿駅から電車で20分ほど、駅から徒歩5分ほど場所にある。立地に関しては、条件などあるのだろうか?
「都心である必要はありませんが、駅からは徒歩5分程度がいいかでしょう。スーツケースに撮影用の道具を詰めて持ち運んでいる利用者もいます」
利用時間は2時間程度が多く、5時間ほど利用する人もいる。リピーターが増えるのはうれしいものの、リピーターほど気が緩んでルールを守らない利用客もいる。あまり厳しくすると、お客さんが離れてしまうため、そのバランスが難しいという。
昨今では、ユーチューバー向けの賃貸住宅も登場しているが、実際に、ユーザーと触れ合うなかで、賃貸のニーズはあるだろうか?
「賃貸住宅よりレンタルスタジオの方が、ニーズがあると感じています。ユーチューバーは、家の外に出て撮影することに意義があるようです。自分の家や、撮影場所を特定されたくないと考えている人も多いようです」
逆に今、レンタルスタジオを運営したくても、『レンタルスペースOK』としている賃貸物件が少なく、争奪戦になっているという。
「レンタルスペースは、築年数は問わず、水回りも不要。普通の賃貸ではなかなか入居者が入らないような老朽化した賃貸住宅やテナントなどで空室を抱えているオーナーさんは『レンタルスペースOK』にして募集してみたらいいかもしれません」
意外なニーズが潜んでいることも、取材を通して見えてきた。
健美家編集部(協力:高橋洋子)