高齢者向けの住宅としてはサービス付き高齢者向け住宅がよく知られているが、もちろん、それ以外の住宅もありうる。そのうち、住宅型有料老人ホームを対象にした投資を解説する書籍が出た。「住宅型有料老人ホームで始める不動産投資」(幻冬舎刊。佐藤雅典著)である。
住宅型有料老人ホームは国が後押しして拡充を図っているサ高住と異なり、補助金や税の軽減措置などは全くなく、一見不利に見える。だが、その分、規制もない。その点が有利というのが著者、佐藤氏の主張である。
サ高住の失敗は家賃の高さにある
2011年の高齢者住まい法の改正で誕生したサ高住は国による補助金、税の軽減などの優遇措置により急速に増加、わずか3年ほどで15万戸を超すほどになっているが、入居率が低く、破綻に瀕する例もあるほどと言われる。一時期熱心に行われていたサ高住セミナーがほとんど影を潜めていることからも、国は奨励するものの、成功していないサ高住が増えていることをうかがわせる。
では、なぜ、サ高住がうまくいっていないか。問題は家賃の高さにあると佐藤氏は指摘する。たとえば大阪のサ高住の平均賃料(家賃、共益費、管理費、食費などの合計金額)は16万6500円で、地域によっては一般の住宅の賃料よりも高くなっているという。
これに対して厚生労働省の国民生活基礎調査によると、高齢者のいる世帯の平均年収は310万円余。さらに高齢者のみの世帯で見てみると年間所得が200万円未満の世帯が42.8%というのが現状である。
ちなみに特養の場合には住居、食費、その他費用を合計した金額は6万1500円となっており、サ高住の半額以下。特養に入れない人の受け皿として考えた場合、現状のサ高住では機能しない、求められていないことがよく分かる。
13㎡のコンパクト、でも自立して暮らせる広さを安価に提供
では、なぜ、それだけの家賃に設定せざるを得ないか。サ高住では補助金や税の軽減措置を受けるためには厳密な基準に則った建物、サービスを提供しなければならないためで、特に問題なのは25㎡以上とされる部屋の広さだと佐藤氏(特例として浴室、食堂などの共用施設を作る場合には18㎡以上でも可)。
手すりなしでは歩行できない、あるいは車いす生活を送る高齢者に25㎡は不要。それならもっとコンパクトで、でも安価に入居できる住宅型有料老人ホームのほうがニーズに合っているのではないかというのである。
そのため、同氏が提供している住宅型有料老人ホームの1室の広さは基本13㎡。狭いのでは?と考える人もいるだろうが、歩行に困難のある人たちが自分でトイレに行ける、無理なく生活できることを考えると、広さは時として仇になるという。それよりはいつまでも自分ひとりでトイレに行ける暮らしのほうが身体的にも、精神的にも自立していられるというのである。
実際、施設内で生活することを考えれば、衣類や靴などはそれほど必要ないだろうし、食事、入浴などは居室外で行うことを考えると、自室は最低限の広ささえあれば良い。13㎡が広いか、狭いか、若い、健康な身からの判断にこだわるのは間違いなのかもしれない。
その結果、佐藤氏が投資家に販売している住宅型有料老人ホームはコンパクトな作りながら、公的年金、生活保護で暮らしている人でも入居できる家賃設定となっており、入居率はほぼ100%。入居者はもちろん、その家族からも感謝される存在になっているという。投資としても10%近い収益を上げている物件もある。
同書ではこれ以外にも住宅型有料老人ホームのサ高住、一般的な投資物件などとの違い、有利な点などについて述べられており、それぞれがいちいちもっとも。
ソフトのサービスについてはアウトソーシングする必要があり、自分ですべてを始めるのは難しいことも分かるが、高齢者の住まいについての柔軟な考え方は今後、そうした方面でのビジネスを始める際の参考になると思う。
健美家編集部(協力・中川寛子)