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非常階段を表に配置、廊下を減らしてレンタブル比Upという発想、シェアオフィス12 KANDA

賃貸経営/技あり・話題の賃貸物件 ニュース

2024/03/11 配信

「暮らしを自由にするオフィス」という先進性

東京メトロ銀座線神田駅、JR秋葉原駅、都営新宿線岩本町駅などからいずれも数分という場所に立地する新築シェアオフィス「12 KANDA」のプレス内覧会に参加してきた。

企画プロデュース・運営管理を株式会社リビタが行う12シリーズの最新作で、同社は6年前の12 SHINJUKU以降、「暮らしを自由にするオフィス」をテーマに作り続けてきている。

このシリーズは働く場と住まいの機能を掛け合わせた上で、多様な人達を集めることで起きる化学反応が面白く、それが新しい働き方の場となっている点が特徴と思われ、コロナを経た今なら広く理解してもらえると思う。しかも、それをコロナ以前からやっていたところに意味がある。

最新作である12 KANDAは地上10階建+地下1階の中にシェアオフィス、飲食店、業務用シェアキッチン、小商いオフィス等からなる「ビジネス×食」をテーマとした複合施設。

オフィススペース。最近では大企業の一部部署が外でこうしたオフィスを借りることなども増えているという
オフィススペース。最近では大企業の一部部署が外でこうしたオフィスを借りることなども増えているという

具体的には地下1階に働く場として16席のフリーデスクとミーティングルーム、主に3階以上に完全個室のプライベートデスク33区画、同じく33区画の完全個室のプライベートオフィスがあり、その人達に向けて2階にラウンジ、7階にLDKと名づけられたキッチンのある空間、テラスがある。

オフィスの床。普通はこの上にカーペットを敷くが、ここではそのまま。だが、そのほうがレイアウト変更などがやりやすくなる
オフィスの床。普通はこの上にカーペットを敷くが、ここではそのまま。だが、そのほうがレイアウト変更などがやりやすくなる

それ以外には地下1階と3階に小商い店舗5区画(物販も可)、地下1階に業務用シェアキッチン3区画(菓子製造及び飲食店営業許可取得予定)があり、1階には飲食店店舗1区画が入る。

シェアハウス同様、シェアすることで収益が上がる

こうして並べてみて分かるのは区画数が非常に多いこと。フリーデスクまで入れるとオフィスだけで82区画あり、それ以外で9区画。

内覧会では当初は一般的なオフィスを新築する計画だったものの、リビタからシェアオフィスを提案したという話を聞いた。その提案を受け、現在のような形になったのだ。

リビタがシェアオフィスを提案した理由としては、どの駅からも近いものの、表通りではない立地をデザインの力で持ち上げられる可能性があり、面白い人が集まると場が賑わう、さらにシェアオフィスのほうが売り上げが伸びるという点だという。

借りている人達が使えるラウンジ。単なるオフィスと違うところがこのあたり
借りている人達が使えるラウンジ。単なるオフィスと違うところがこのあたり

実際の賃料は1フロアで貸しているオフィスに比べると高めだが、シェアオフィスも多い神田周辺で他物件と比べると同じくらいだという。

1社に貸すより、複数社に借りてもらえるシェアオフィスのほうが賃料が伸びるのはシェアハウスを想定すればお分かりいただけるだろう。

共用の会議室。こうした設備が用意されているかどうかもシェアオフィスの使い勝手に影響する
共用の会議室。こうした設備が用意されているかどうかもシェアオフィスの使い勝手に影響する

だが、そこでポイントになるのは区画だけ作れば借りる人が集まるかどうかという点。シェアハウスもそうだが、初期ならいざ知らず、これだけシェアオフィスも増えてきた中でそれでも選ばれるためには企画、運営の力が重要になってくる。

非常階段の位置を変えて無駄な空間を減らす

建物前面に絡みつくように回されているのが非常階段。実用的であると同時に外観を印象的なものにしてもいる
建物前面に絡みつくように回されているのが非常階段。実用的であると同時に外観を印象的なものにしてもいる

その観点で見るべき点はいくつかあると思うが、今回、興味深かったのは建築的な工夫。通りから見ると12 KANDAは建物に絡みつくように延びる階段が特徴的で、これは非常階段だという。

一般に非常階段は建物の裏側に作られることが多く、めったに使われない、暗いスペースになりがちで、その割には面積が必要になっている。

だが、12 KANDAではそれを表に持ってきた。

「この建物では本来、直通階段が2つ必要でした。でも、非常階段を表に持ってくることで裏側に避難バルコニーを作るだけで済むという緩和措置が受けられたため、裏の暗くて使われない空間を減らすことができました」と建物の設計を担当した建築事務所sinatoの大野力さん。

非常階段+アルファの空間を作ることで廊下を減らす

建物前面に設けられた外部スペース。働く人達にとっては一息つく場所にもあり、かつ外に人がいることでビルとして目立ちやすくもなる
建物前面に設けられた外部スペース。働く人達にとっては一息つく場所にもあり、かつ外に人がいることでビルとして目立ちやすくもなる

表に作られた非常階段に隣接してところどころにコンパクトなテラスなどが作られており、それらのアウトドア空間は入居している人たちにとっては気分転換、同僚との会話や憩いの場などになると同時に建物としては廊下を減らす意味も持っている。

非常階段からの延長に廊下を作り、外から入れる個室を作った
非常階段からの延長に廊下を作り、外から入れる個室を作った

「建物内に完全個室の大量の部屋を作るとするとどうしても廊下部分が多くなってしまい、貸せない面積が増えてしまいます。そこで作らなくてはいけない非常階段に少しずつ空間をプラスして外に居場所を作り、同時にそれが通路にもなるようにしました。それによって建物内の廊下を減らし、レンタブル比が上げられています」。

2階、共用部のあるフロアの間取り図。ご覧いただくと室内にはほとんど廊下がないことが分かる
2階、共用部のあるフロアの間取り図。ご覧いただくと室内にはほとんど廊下がないことが分かる

外部のテラスなど容積率には入らない部分を上手に活用。それによって建物内部を効率的に使えるようにしたのである。

5F
3階から5階の平面図。エレベーター、水回りなどの位置は同じだが、オフィスの広さ、配置、外の作り方は階によって異なり、バリエーションが豊富

3F4Fまた、そうしたことで建物外部から自室にアプローチできる区画も増えた。小さなオフィスでも建物内部の一室より、外部から入室できるほうが独立感があると好感する人も多いはず。ひとつの発想の転換がダブル、トリプルに意味を持つ設計になっているのである。

内覧会ではこの点以外にも設計、デザインと意図、それが人の行動にどう関わるかという説明が多くあり、非常に参考になった。もちろん、すべての非常階段をおなじように作れるわけではないだろうが、常識的にはこう作るという考えを一度捨ててみると、そこに新しい発見があるものである。

健美家編集部(協力:中川寛子(なかがわひろこ))

中川寛子

株式会社東京情報堂

■ 主な経歴

住まいと街の解説者。40年近く不動産を中心にした編集業務に携わり、近年は地盤、行政サービス、空き家、まちづくり、地方創生その他まちをテーマにした取材、原稿が多い。
宅地建物取引士、行政書士有資格者。日本地理学会、日本地形学連合、東京スリバチ学会会員。

■ 主な著書

  • 「ど素人が始める不動産投資の本」(翔泳社)
  • 「この街に住んではいけない」(マガジンハウス)
  • 「解決!空き家問題」「東京格差 浮かぶ街、沈む街」(ちくま新書)
  • 「空き家再生でみんなが稼げる地元をつくる がもよんモデルの秘密」(学芸出版)など。

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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