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2030年、ZEH基準が義務化? 不動産市場に何をもたらすか?「不動産投資家の建築知識09」

不動産投資全般/建築知識 ニュース

2021/08/12 配信

今回は、昨今のニュースにも多い地球温暖化対策、CO2排出量削減に大きく関係する、建物のエネルギー消費に関連して書く。社会の動きが大きく舵を切ろうとしている中、その流れの中で選ばれる物件の新たな要件とは何かを考えてみよう。

これからの住宅とエネルギー
これからの住宅とエネルギー

2030年にZEH基準の義務化が
不動産市場にもたらすもの

ニュースでも伝えられているように、政府は2050年カーボンニュートラル社会の実現という大目標を公表している。このためには当然ながら社会のすべての場所であらゆるエネルギー消費、およびエネルギー生産の構造を変えていかねばならない。

その中でもとくに住宅におけるエネルギー消費は全体の20%近くとなることもあり、無視できない。それに関連して7月27日に行われた国交省の再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォースでも、2030年のZEH基準を義務化することが議論されている。

このZEH基準とはご存じのように、住宅(集合住宅)単位で年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとすることを目指した住宅で、そのためには外皮の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギーを導入するなどを行ったものだ。

タスクフォースでは、国交省、経産省、環境省と関連委員により議論が行われ、「2050年のカーボンニュートラル」という目的が実は非常に高いハードルであること、それをバックキャストするためには、すぐにもアクションを起こさねばならないことが議論された。この、基準義務化のインパクトから考えてみる。

再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース
再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース

不動産投資を考える方は従前よりご存じのように、建築の耐震性を考える際には「新耐震以前・以降」という大きな線引きがある。

1981年に改正された建築基準法に則った耐震性を審査されているものが新耐震以降の建築物であり、それ以前の建築よりも明確に耐震性が向上しているため、市場での評価に大きく差がついている。
この2030年のZEH基準の義務化は、住宅において同様な「それ以前/以降」の物件の市場評価ギャップを生むことが想定される。義務化直後の段階すぐには、そこに差がでないかもしれないが、総数の3割を超えるころには確実に差がついていく。

2040年には基準ZEHが800万戸近く建設されていることを考えるとその時点は意外に早いのではないだろうか。賃貸であっても、ZEH以前/以降の同等の物件であれば、以降が選ばれる時代がすぐそこにやってきている。

ZEHへの流れをうまく生かすために
考えること

では、不動産投資家としてはどういう戦略がとりうるだろうか。
望ましいのは、自己の物件をZEH対応としておくこと、そしてそれを公的なエビデンスを持っておくことだ。そのためにはオーナーとしてもZEHに関する知識を持っておかねばならない。

これから新築をしてそれを運用しようとするならば、HEAT20のG2(以上)を目指すことが結果として長くその物件の価値を保つことになる。

HEAT20のG2とは、住宅の外壁面の断熱性(熱を通さない性能)を表す外皮平均熱貫流率 UA値について、地域に応じて0.28から0,48の数値になるようにしたものである。これは各地域で室内気温が一般的な使用において冬期間に15度未満になる時間を2%から15%に抑える性能を持つ。

それにより、通常の年間のエネルギー使用量=ランニングコストの削減に大きな影響があることがわかるだろう。

具体的な目安としては、住宅一軒あたり断熱サッシュで年間の冷暖房費が6万円削減、太陽光発電により年間12万円の電気代削減というものであり、これで設置費用を割っていくと約10年で回収できることになる。

またそれでは「基準以前」となることが明らかな既存の建築に関しては何ができるだろうか。考えたいのは「ZEH化リノベーション」だ。

方法としては、1)外皮の断熱性向上+2)太陽光発電などの導入+3)設備機器の省エネ化である。

そしてこれらの取り組みの結果について、2030年以前に「同等」と表現するための制度としてはたとえば「BELS」(省エネ基準適合認定)などの申請が有効かもしれない。

これは、BEI(省エネルギー性能指標:建築物の省エネルギー性能を評価する指標の考え方。Building Energy-efficiency Indexの略。=設計一次エネ/基準一次エネの比で基準の1より小さい値であれば、より省エネルギーである。)をもとに5ランクの星で建物を評価するものであり、再生エネルギーを導入した場合の評価としての「ZEH」「Nearly ZEH」などの表示も用意されており現在SUUMOなどの物件検索サイトでも最近チェックボックスが設置されているなど、認知が高まっていく傾向だ。

このBELSの星やそこで使われているBEI値を目標として定め、そのために既存の物件のどこに手を入れるのか、たとえば長期修繕計画の時点で改修メニューに入れるなどの準備が必要だ。

BELSラベル
BELSラベル

以上、個々の資産レベルでのゲームチェンジは、社会のゲームチェンジにもつながっている。一般ユーザーの意識、関心はこのコロナ以降さらに大きく動くことになるだろう。特に住まい、働く場所についての意識の変化が来年以降確実にニーズ変化としてあらわれてくるはずだ。

社会の流れは想像以上に早く動き始めている。その時に取り残されないよう、いまから少なくとも知識としての準備をしておきたい。

執筆:新堀 学/しんぼり まなぶ

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【プロフィール】
建築家。1964年埼玉県生まれ。東京大学工学部建築学科卒業。安藤忠雄建築研究所所員を経て、1999年より新堀アトリエ一級建築士事務所主宰。独立後、リノベーションを中心として、設計のみならず建築の保存再生から地域文化活動へと広く携わり、建築の企画から利活用にわたり、技術と制度を活用した柔軟な提案を行っている。一般社団法人HEAD研究会理事、一般社団法人住宅遺産トラスト理事。
著作
2002年:リノベーション・スタディーズ(lixil出版)共著
2004年:コンバージョン設計マニュアル(エクスナレッジ出版)共著
2005年:リノベーションの現場(彰国社)共著
2016年:建築再生学(市ヶ谷出版)共著 ほか

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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