土地活用のため新築アパートをこれから建築しようと考えている方にとって、どのようにアパート建築業者を探そうか、というのは大きな悩みであろう。
自宅を新築で建てる場合には、「まず住宅展示場に行こう!」という発想が出ると思うが、アパートを建てる際にはその発想は中々出ないのではなかろうか。
それは、住宅展示場には、「小さな子供連れのファミリーが休日にイベントなどを楽しみつつ、これから建てるマイホームの夢を膨らませる場所」というイメージが強いことが理由だと考えられる。
住宅展示場は、本当に戸建住宅を建てるファミリー層だけのものなのか?
もし、住宅展示場がアパート建築業者を探すのに適した場所であれば、一度に多くの建築業者を回ることができるので、不動産投資家にとっても非常に有用な場所といえるだろう。
そこで、実際に展示場を訪問してみたところ、以下のような有用な情報を得ることができた。
(1) 所有する土地の容積率・建蔽率を十分活用できるモデルプラン
契約前ながらも、その土地の容積率・建蔽率を十二分に活かした精緻なモデルプラン、想定家賃などを出してもらえるため、具体的な収入額をイメージすることができる。
(2) 古家の解体費、地盤調査費などを含めた見積もり金額
建築費以外にもどんな費用がかかるのか、具体的な見積もりをしてもらえた。
特に解体費などは、建築予定地を実際に見てもらうことで、現実的な見積もりを出してもらえ、数社から同様の見積もりが出てくるので、実際の費用感を把握することが可能である。
さらに当然ながら、提案されたモデルプランに関する見積もりももらうことができるので、費用の全体感を掴むことができるのは有り難い。
(3) その地域におけるマーケティング調査結果
「これから不動産投資を始めようとする人のための不動産投資「経営戦略」入門(5)」でご紹介したような「見える!賃貸経営」を利用したマーケティング調査結果をもらうことが出来た。
更に近隣の競合アパートの家賃、空室率、築年数などの情報も付いており、その土地に適しているのは1Rなのか、1LDK、2LDKなのかというのがはっきり分かるような報告書仕立てとなっている。
正直、無料でここまでの情報をもらえたのは驚きであった。
もちろん全ての住宅メーカーで、これだけの情報をもらえる訳ではない。
筆者が回った8社のメーカーでは、木造住宅メーカーはアパート建築に後ろ向きな対応をするところが多かった。
また軽量鉄骨造、鉄筋コンクリート住宅のメーカーでも、営業担当により対応は様々だった。
このように業者の違いだけではなく、営業担当による違いも大きいため、複数の業者を訪問することをお勧めする。
(1)のモデルプランと(2)の見積もり金額は想定の範囲内だったが、(3)のマーケット情報は非常に有用だった。
併せて自分でも近隣の不動産会社数社を回り、マーケティング調査結果の裏取りをしたところ、同様の結果を得ることができたので信ぴょう性の高いデータであるといえる。
デメリットとしては、ローコストメーカーと比べて建築費が割高になることが多い業者が住宅展示場には軒を連ねていることだろう。
【ちょっと待って。その見積もり適正な金額ですか?】
見積もりをもらった際、それが適正な金額なのかを確認する方法をご紹介する。
積水ハウスや住友林業などの住宅建築専業会社で上場しているなどIRを出している会社しか通用しないが、これらの会社は毎年「FACTBOOK」という資料を公開している。その中で、その年に販売した住宅の坪単価を公表しているのだ。
一方、残念ながらセキスイハイムのように会社(積水化学工業)の一事業として、住宅建築を営んでいる会社のFACTBOOKには掲載されていないことが多い。
以下の表は、積水ハウスのFACTBOOKから抜粋したもので、これによると直近年度の賃貸住宅の坪単価は908千円であったことが分かる。
また、数年分が並んでいるので、これを見ると近年の建築費高騰を実感することもできるだろう。
もちろん間取りや設備等によってこれらの金額は上下することとなるが、目安としてご利用頂ければと思う。
大手メーカーでの建築は割高となることが多いため、住宅展示場に足を運ばない投資家がほとんどだと思うが、通常では得にくい情報が得られることもある。
今週末は住宅展示場に足を運んでみてはどうだろうか。
執筆:
(あきもと よしのぶ)