大都市圏、とりわけ東京への一極集中や「地方」とよばれる地域の過疎化や縮小が言われて久しい。だが、その再生に向けて政府や各地方自治体など当局も手をこまねいているわけではない。
「地域経済牽引事業の促進による地域の成長発展の基盤強化に関する法律」が2017年に施行されている。これは今や略称として「地域未来投資促進法」(以下「同法」)と呼ばれ、上記HPによると「『地域未来投資促進法』は、地域の特性を生かして、高い付加価値を創出し、地域の事業者に対する相当の経済的効果を及ぼす『地域経済牽引事業』を促進すること」を目的としている。
今回は同法を取りあげ、その狙いと実際に適用される事例などについて紹介する。投資対象となるエリアの見極めや見通しを考える材料として情報収集することで、事業者の参入→雇用の創生→賃貸需要の発生、などの考察に繋がることを期待する。
4つの柱で構成されている支援・優遇の概要とは?
各事業者に期待されるのは、冒頭に示した「地域経済牽引事業」を推進することである。そのために事業者はそれぞれが立案した「地域経済牽引事業計画」を申請し、それに対して都道府県からの承認をもらう必要がある。
こうして承認された事業計画は以下に示す4つの観点で支援される、というのがこの法律の主旨である。
税制での支援:
同法における支援措置の一つとして「地域未来投資促進税制」というサブ分類に括られる。各都道府県の承認に加えて国から課税特例を受けると、設備投資を行う場合に特別償却や最大5%の税制優遇を受けることができる。
これは、業種を問わない、建物も対象に含まれる、対象設備の規模は80億円が限度、などの特徴がある。
また、地域経済牽引事業に必要とされる設備に関して、固定資産税や不動産取得税の減免を受けられるケースもある。
融資での支援:
地域経済牽引事業に必要とされた資金に関して、日本政策金融公庫から固定金利での融資が受けられたり、通常の保証限度額とは別枠で信用保証協会による保証が受けられる、などの恩恵がある。
予算での優遇:
各自治体が配分している予算の対象になると判断される事業の場合に、審査において加点措置が講じられる、という。
規制の特例:
工場などの新規立地や拡張を検討する場合に緑地化面積などで緩和率が適用される。また、事業予定地が「農地」や「市街化調整区域」などである場合に、農地転用許可や市街化調整区域の開発許可を得るうえでの”配慮”が得られる、という。
「農地転用許可への配慮」、を事例として解説
上記で挙げた特例のうち、「農地転用許可」に関して以下のような例を紹介する。
首都圏に位置する某県内では、開通や延伸する高速道路・自動車道が交差するジャンクション付近で長年に渡り農地だったエリアが物流拠点として発展するケースが近年増えている。
参入する倉庫会社などの事業者は、同法に絡めて「地域経済牽引事業計画」として申請することで、以下のような選択肢を視野に入れることができる。
「事業実施場所が農用地区域に当たる場合に、農用地区域からの除外ができる」
「事業実施場所が第一種農地に当たる場合でも、農地転用を許可できる」
本来、農地法は日本の農地を保護する目的で制定された法律ということもあり、第一条には「農地を農地以外のものにすることを規制するとともに、(中略)もつて国民に対する食料の安定供給の確保に資することを目的とする」と謳われている。
また、市街化調整区域についても、本来の意味するところは「市街化を抑制すべき地域」であるはずだ。だがこれらの制約条件に優先してでも、「地方」や「郊外」と呼ばれるエリアを活性化する必要性に迫られている様子が窺える。
各都道府県でも、事業者が「地域経済牽引事業計画」を申請できるように、基本計画を策定してHPに掲載(本リンクは愛知県の例)するという動きを取っているところは少なくない。一方で、市区町村ごとに職員や議員の同法に対する理解度や認識度にも差があると言われる。
経済産業省HP資料と併せて確認することで、冒頭に記載したように投資対象となるエリアの見極めや見通しを考える材料になり得るだけでなく、投資家自身の規模によっては、自ら支援・優遇を獲得するような事業を考えることにも繋がるだろう。
執筆:
(さんとうりゅうおおや)