広島・瀬戸内の玄関である広島で新たな賑わいや交流、
感動を創出する新駅ビル計画が進行中
広島県の県庁所在地である広島市。近年、その玄関口となるJR西日本「広島駅」及びその周辺で再整備計画が進んでいる。その舞台の中心となるのが、広島駅南口広場だ。
もともとこの広島駅南口広場はスペースの問題でバスの降車場がなく、降車場と駅とが離れているためJRとの乗り継ぎが不便という課題があった。
このほか路面電車の乗降場の処理能力が十分でなく、ラッシュ時には南口広場に進入できない車両が行列待ちになる、路面電車の南口広場への進入ルートが迂回しているため路面電車の定時性が担保できない、などの課題もあったという。
これらを解決すべく広島市が2014年9月に策定したのが「広島駅南口広場の再整備等に係る基本方針」だ。この方針に基づき、これまで広島駅では広島駅橋上・高架下施設「ekie(エキエ)」や新幹線コンコースの整備などが行われてきた。
そして現在進行中なのが、広島市、JR西日本、広島電鉄が手掛ける広島駅駅ビルの建替え計画である。
広島駅南口駅舎にはもともと駅ビル「ASSE(アッセ)」があったが、再開発のため2020年3月に閉館し、創業から54年の歴史に幕を閉じた。建て替え工事は2020年4月よりスタートしており、新駅ビルは2025年春に開業する予定となっている。
JR西日本のホームページによると、新たに登場する駅ビルの規模は、建築面積約14,000㎡、延床面積約111,000㎡。駅ビルは鉄骨造、地上20階・地下1階、高さ約100mで、用途は商業・ホテル・駐車場。
内観イメージを見ると、新駅ビル2階には路面電車が進入する空間が設けられており、広島駅中央口改札や新幹線口改札から段差なくフラットに繋がり、駅と歩行者空間、商業施設が一体となったユニークなつくりとなっている。
路面電車が乗り入れる2階広場や屋上広場のデザインの監修は、広島出身の建築家を率いる「SUPPOSE DESIGN OFFICE Co., Ltd.」が担当。せとうちの穏やかな気候や、河川と共に発展した広島の風景をデザインに取り入れていくことによって、より広島らしさが感じられる広場を実現するという。
新駅ビルのフロア構成は地下1階が駐車場、1階が駅前広場、2階が路面電車乗り場、2~6階がショッピングセンター、7階がシネマコンプレックス、7階・9階が屋上庭園、7~20階がホテルとなる予定。
店舗面積約25,000㎡のショッピングセンターの運営は中国SC開発株式会社、シネマコンプレックスの運営は株式会社松竹マルチプレックスシアターズが担当する。
また駅ビル高層階のホテルは、JR西日本ホテルズの新規ブランド「ホテルヴィスキオ」(400室規模)となり、ホテルの事業主体は株式会社ジェイアール西日本ホテル開発、運営は株式会社ホテルグランヴィア広島を予定しているそう。
駅北の「ホテルグランヴィア広島」とあわせ、国内外からの来訪者を迎えるべく、洗練されたデザインのホテルを目指すという。
店舗需要、オフィス需要共に堅調で
住宅地・商業地ともに地価は上昇傾向
新駅ビルの誕生で、今後も盛り上がりを見せそうな広島駅。
広島市のホームページによると、平均変動率(前年比較)は住宅地で令和3年0.7%に対し、令和4年1.2%。商業地で令和3年1.7%に対し、令和4年3.2%となっている。
住宅地については、市中心部の平坦地や郊外部の駅周辺、大型商業施設周辺の利便性が高い 地域で地価の上昇が継続しており、 商業地については再開発等による発展期待から広島駅周辺では需要が強まっているとのこと。
また、市中心部の店舗需要は回復傾向にあり、オフィス需要も堅調であることから、地価の上昇が継続しているという。
ただし、他の地方中枢都市(札幌市・仙台市・福岡市)と比較すると、まだ広島市の上昇率は、住宅地及び商業地ともにその平均を下回っているというデータもある。
広島駅の再開発が広島市の今後の地価動向にどのような影響を与えるのか、引き続き注視していきたい。
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健美家編集部(協力:斎藤一美(さいとうかずみ))
■ 主な経歴
ファイナンシャル・プランナー(AFP)。
大手情報誌出版社にて金融情報誌のデスク業務やWEBメディアの立ち上げ・運営・メンバー育成業務などに携わった後、2007年にフリーの編集者・ライターとして独立。
現在は金融・不動産・保険分野を中心に、雑誌やWEBメディア、社内報などで執筆・編集を行うほか、金融初心者をターゲットとしたメディアアドバイス業務なども行っている。