国際空港からのインバウンド増も見込める
名古屋へも40分で行くことが可能に
2027年開業を目指しているが、遅れが避けられそうにないJR東海のリニア中央新幹線。
しかし、いずれ開業すれば、リニア駅が作られるエリアには人や企業が流れ込み、発展が期待できるのは間違いない。不動産投資家にとっても、チャンスが広がるのは確実だ。
今回は、山梨県甲府市にできる予定の「山梨県駅」について見ていきたい。いまはまだ田んぼの広がるのどかなエリアだが、開発が本格化すれば、一挙に「都会」へと変貌を遂げることだろう。
「リニア「橋本駅」周辺、「第2の新横浜」になるか?2027年リニア開業は遅れる懸念あるが」(1月7日配信)で解説した、神奈川県相模原市に予定されるリニア駅「神奈川県駅」と同じく、大きな発展が予想される。

まず、おさらいしておこう。現時点で27年に開業される予定となっている東京〜名古屋間では、次の6駅が設置されることになっている。
@「東京都ターミナル駅(品川駅地下)」
A「神奈川県駅(相模原市橋本駅付近)」
B「山梨県駅(甲府市大津町付近)」
C「長野県駅(飯田市上郷飯沼付近)
D「岐阜県駅(中津川市千旦林付近)」
E「名古屋市ターミナル駅(名古屋駅地下)」
37年には、さらに大阪まで延伸される計画となっている。
今回みていく「山梨県駅」は、東京から数えて3つ目の駅。甲府市内の南のエリアに位置する大津町の田園地帯に作られる。神奈川、長野、岐阜と異なり、県庁所在地に建設されるのが特徴だ。
東京都心からは約25分、名古屋からも約40分で結ばれるといい、東京への十分な通勤圏内となる。山梨県駅近くに住む人なら、「東京都心のオフィスへの通勤がドア・ツウ・ドアで1時間以内」というケースも出てくることだろう。
当然ながら、羽田や成田など国際空港との「距離」もぐんと近くなり、海外への出張や旅行が簡単になる。インバウンド(訪日外国人客)も来やすくなる。新型コロナウイルスが収束すれば、山梨県駅の周辺では、インバウンドのための宿泊や飲食の需要も高まることだろう。


山梨県駅の北側は「交通エリア」
南側では観光交流と産業振興を図る
JR東海のサイトによると、駅に関しては3月7日現在、まだ工事の契約が行われる前の段階だ。周辺も、開発への本格的な取り組みはこれからとなる。
では、現時点でどのような開発が計画されているのだろうか。
山梨県によると、山梨県駅の北側を「交通エリア」、南側を「観光交流・産業振興エリア」と位置づけ、合計24.5ヘクタールの面積を開発する。この面積には、駅やリニア本線の部分は含まれていない。

「交通エリア」には、一般車の乗降用スペースのほか、途中まで自分の車で来て、公共交通機関に乗り換える「パーク&ライド」用の駐車場も整備される。中央高速道のETC専用のスマートIC(インターチェンジ)と直結される道路も建設される。
「観光交流・産業振興エリア」には、国内外からの観光客や県民が利用する「情報発信機能」「サービス提供機能」を持った施設や、 さまざまな交流・活動の拡大を進めるコンベンション機能を持った交流施設、イベント広場が検討される方向。 研究開発機能を持った産業振興のための施設 や緑地なども議論される。
さらに注目すべきは、県内の交通ネットワークを整備することによって、山梨県駅へ30分でアクセスできるエリアを増やすことが計画されている事実だ。実現すれば、不動産投資にあたっても、選択肢が広がるだろう。

山梨県駅は先行開業もありうる?
タカラレーベンはすでに地上15階建てマンション発売
不安材料は、リニア開業の遅れだ。東京(品川)〜名古屋間の通り道となっている静岡県が大井川の水量減少を懸念し、県内の工事許可を出していないことが、相変わらずのネックになっている。
もっとも、昨年9月には、静岡県の川勝平太知事が記者会見で、山梨県の長崎幸太郎知事に対し「品川−甲府」間の先行開業実現へ協力を呼び掛けたことを明らかにした。かりに先行開業が実現すれば、山梨県駅周辺は先んじて開発され、発展に向かうかもしれない。
大手の中には、山梨県駅周辺の発展を見越し、すでに資金の投下を始めたところが出てきた。
タカラレーベンは昨年6月、甲府市内に地上15階建てのマンション「レーベン甲府中央」を発売した。JR 中央本線の甲府駅から徒歩 12 分の距離にあり、山梨県駅との位置も近い。総戸数が70戸の規模だ。

タカラレーベンはリニアへの期待について、ニュースリリースの中で「『(仮称)山梨県』駅が設置され、首都圏、中京圏への飛躍的なアクセ ス向上により、将来性が高まっていく」と指摘している。
まだまだ甲府市やその周辺には、探せば値ごろの物件がありそうだ。新型コロナウイルス感染拡大を受けたリモートワークの拡大や、休暇を取りながら働くワーケーションの普及の観点からも、山梨県駅周辺は注目される可能性がある。一歩先を行く投資家として、投資を検討しても良いだろう。
取材・文 小田切隆
【プロフィール】 経済ジャーナリスト。長年、政府機関や中央省庁、民間企業など、幅広い分野で取材に携わる。ニュースサイト「マネー現代」(講談社)、経済誌「月刊経理ウーマン」(研修出版)「近代セールス」(近代セールス社)などで記事を執筆・連載。