関内地区とみなとみらい21地区の結節点
交通至便で大規模施設の竣工が相次ぐ
横浜市の北仲地区とは、関内地区とみなとみらい21地区の結節点に位置する再開発エリア。JR・横浜市営地下鉄が乗り入れる桜木町駅から東に500m、みなとみらい線の馬車道駅に隣接している。
横浜第2合同庁舎や倉庫などに利用され、現在も帝蚕倉庫事務所、倉庫、石積護岸などの歴史的資産が残る同地区。交通の利便性は申し分なく、周りにオフィス・商業施設がたくさんあることから、自然と人は集まりやすい。
こういったメリットを活かし、同地区では都心型住宅・ホテル・商業・文化・ブライダル施設などの整備と一体になった、総合的なまちづくりを進めている。
こうした中、国土交通省は5月26日に、大和地所と住友不動産が申請していた「(仮称)北仲通北地区A1・2地区」を優良な民間都市再生事業計画として認定した。
民間都市再生事業計画認定制度とは、都市再生緊急整備地域内で、国土交通省の認定を受けた民間都市再生事業に対して、メザニン支援(民都機構が政府保証で資金を調達し、民間事業者に対して支援する事業)をはじめとする金融支援や税制上の特例措置の支援をする制度のこと。
今年6月23日時点で首都圏や愛知、大阪、福岡など大都市を中心に156の事業が認定を受けている。
今回の事業で整備されるのは、地上40階地下2階建て、延床面積約9万7081㎡の複合施設。16階までが高水準な宿泊機能やMICEの誘致が可能な大型バンケットを有するホテル、18階以上を100㎡以上の大型住戸を中心としたハイグレードな住宅で構成される。
ペデストリアンデッキや水際線プロムナードの整備により北仲通北地区全体の回遊性を向上させ、約4000㎡の公園を整備のうえマルシェや住民発案のイベントの開催を通じて、魅力的な観光・賑わい拠点を創出するという。工事はすでに始まっていて、2026年11月30日に竣工する予定だ。
新たな国際交流拠点を形成するのが事業の目的であり、ホテル・住宅を整備することで定住・交流人口を増やすのも狙い。新施設が誕生することで、北仲地区の付加価値はさらに高まるに違いない。
また、お隣のみなとみらい21地区を含め、これらのエリアには民間都市再生事業計画の認定物件が多く、エリア全体の存在感を高めたいという国の思惑も垣間見える。
北仲地区ではこれまでに、結婚式場「ノートルダム横浜みなとみらい」(2016年)、「アパホテル&リゾート〈横浜ベイタワー〉」(2019年)、「YOKOHAMA KITAHAMA KNOT(横浜北仲ノット)」(2020年)などが開発、今後は「(仮称)北仲通北地区A1・2地区」に加え、B-1地区でも集合住宅・オフィス・商業などからなる複合施設が2027年に完成する予定だ。すべて建ち並ぶと、まちの景観は大きく変貌を遂げる。
一方で気になるのは、横浜ベイエリアにおける複合施設の供給過多だ。同エリアにはすでに「パシフィコ横浜」をはじめとする国内最大級のMICE施設があり、ホテルやタワマンも多数。オフィスも同様なことから、みなとみらい21地区の空室率は上昇傾向にある。
エリア内だけではなく、東京都内でも新たな施設が続々と生まれていて、競争が激化しているからだ。横浜ベイエリアの発展は今後も続いていくが、どのようにビジネス需要を捉えるのか、差別化戦略が求められるだろう。
一方、こと住宅において、これらのエリアは立地や景観の良さから、富裕層を中心に人気は根強い。マンション価格も上昇傾向にあり、エリア全体の発展、最先端化が、住まいとしてのニーズをより喚起するかもしれない。そういった点で、まだまだ有望なエリアと言えるだろう。
健美家編集部(協力:
(おしょうだにしげはる))