
JR山手線・都営浅草線五反田駅から徒歩3分程度、東急池上線大崎広小路駅からすぐの大崎広小路交差点南側に広がる旧ゆうぽうと跡地。ゆうぽうとはかつて日本郵政が土地・建物を保有していた複合施設で、ホテルや結婚式場、フィットネスジム、多目的ホールなどで構成されていた。

五反田のランドマークとして30年以上にわたって愛された旧ゆうぽうとは、2015年に閉館し2017年から解体工事がスタート。その後、日本郵政不動産による大規模複合開発「五反田計画(仮称)」が立ち上がり2021年8月に着工。現在、工事が進められ、2023年12月の竣工を予定している。
スタートアップ企業の集積地に
新しい価値創造を促す街の拠点が誕生
多くのベンチャー・スタートアップ企業が集まり、2018年には一般社団法人五反田バレーが発足するなど、多くの注目を集めている五反田エリア。東京都による都市づくりの基本的な方針と具体的な方策を示した「都市づくりのグランドデザイン」において、五反田はビジネスや商業、居住、文化などの多様な機能の高度な集積が進んだ地域とされている。


五反田といえば、1970年に誕生したTOC(東京卸売センター)ビルの建て替え計画が発表され、現在の建物は2023年春に解体着工されることが決まっている。新TOCビルは2027年春の竣工予定。そして、世間を騒がせた積水ハウス地面師詐欺事件の舞台となった老舗旅館、海喜館の跡地では、地上30階、高さ105mのタワーマンションの工事が行われている。


今回のプロジェクトでは、五反田という街の特性を生かして「TOKYO, NEXT CREATION」を開発コンセプトに採用。多様な出会いと交流、新しい価値創造を促す次世代の街の拠点を目指すという。

建物は地上 20 階、地下 3 階、高さ約 97m、延べ床面積約69,000uの複合施設となる。基準階約1,000坪のオフィス(3〜12階)を中心に、フードホール(1階)、シェアオフィス(2階)、多目的ホール(3階)、ホテル(14〜20階)で構成される。オフィスに入居する企業とシェアオフィスユーザーとのコラボレーションや国内外からの観光やビジネスによる宿泊、ミートアップイベントなどによって、さまざまな人々の集いと共創が生まれることが期待される。
サード・プレイスとしての役割が
新たなコミュニティの誕生を促す
特徴的なのは、品川区による「五反田駅周辺にぎわいゾーンまちづくりビジョン」を実現すべく、地上1〜3階の低層部を核としていること。賑わいをさらに高めるだけでなく、新たなコミュニティ形成につながるサード・プレイスとしても位置付けている。

建物を取り囲むように配置した「五反田の森」は、地域の植生を踏まえた多種多様な樹木や植物によって構成され、品川エリアのグリーン・ネットワークを補完。四季折々の表情や木漏れ日のある空間は、地域の憩いの場として賑わいの創出が期待される。

1階のフードホールでは健康に配慮した多種多様な食を提供。2階のシェアオフィスでは多様な働き方に対応し、館内およびエリア関係者との多様な交流プログラムなどを実施。コラボレーションを誘発させる、五反田におけるイノベーションの中心地を担う予定だという。


品川区が運営する3階の多目的ホールは、ホールで約400席、カンファレンスで約80席に対応。ビジネスから興行まで幅広く対応し、地域の人達にも利用しやすい、五反田の文化や情報の発信拠点を目指す。

14〜20階の高層フロアは
星野リゾートがホテルを運営
このプロジェクトの目玉といえば、ホテル部分の運営者に星野リゾートが決まったことだろう。高級リゾートホテルだけでなく、都市観光ホテル「OMO」やカフェホテル「BEB」などの多彩な宿泊施設を手掛けてきた同社ならではの、ホテルと街をつなぐ取り組みに期待が高まる。
また地球環境への配慮についても力を入れている点にも注目したい。旧ゆうぽうとの地下躯体を空間および構造体として活用。ストック型社会の実現と共に、 建物解体に伴う廃棄物削減、周辺環境への配慮、CO2排出の抑制などで SDGs 達成に貢献する。

またLow-Eガラスの採用、再生水の洗浄水利用や太陽光発電設備の設置などを通じて、環境負荷の軽減にも取り組む。そして、国交省主導による建築物の環境性能評価システムであるCASBEE-建築において、S ランクの取得を目指すという。
静かで住みやすい街が広がる
東急池上線の東エリア
「五反田計画(仮称)」の最寄り駅は五反田駅からわずか300mしか離れていない大崎広小路駅で、五反田駅周辺とは少し違った雰囲気の街が広がっている。特に人気を集めているのが、2018年に五反田駅と大崎広小路駅間の高架下に誕生した「池上線五反田高架下」と名付けられた商店街だ。

建築家の谷尻誠氏と吉田愛氏が率いる建築設計事務所、SUPPOSE DESIGN OFFICEが全体のデザインを監修。サイクルショップやドーナツ専門店、青果店、クラフトビールバーやワイン専門店をはじめとした飲食店が軒を連ねる。


立正大学がある駅の南エリアはちょうど小高い丘になっており、戸建住宅が立ち並ぶ閑静な住宅街が広がる。立正大学まで来ると、JR大崎駅まで徒歩6分ほどの距離となり、街の雰囲気も大崎に近づく。いわば大崎広小路駅周辺は穴場の住居エリアといえる。実は戸越銀座商店街まで徒歩15分程度。洗練された都市と住みやすい住宅街がほどよくミックスされた周辺地域は、間違いなく住みたいエリアに格上げされるだろう。


健美家編集部