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法人ごと購入する場合の個人・法人のメリットと、法人ごと売却する場合の売主側のデメリット

koziさん_画像 koziさん 第41話 著者のプロフィールを見る

2023/7/10 掲載

前回の続きとして、物件を法人ごと売却することについて解説します。

参照:物件で売るよりお得? 「法人譲渡」で売却するの5つのメリット。実際にいくら得なのか?

前回は、法人で売却する場合のメリットをお伝えしました。今回は、法人譲渡で物件を購入する側のメリット(個人、法人それぞれ)と、法人で売却する場合のデメリットについて、紹介します。

■法人譲渡の場合の購入側(個人の場合)のメリット

まずは、個人が法人ごと物件を購入することのメリットについてです。

1)法人設立をせずにすむメリット

法人を設立しようと考えている個人投資家にとっては、法人ごと物件を購入にするのは、一から法人を設立する必要がなく、法人設立のための費用が掛からないというメリットがあります。

また、個人よりも法人のほうが経費として落とせる費用も多いことから、法人を活用した節税対策をすることも可能となります。

2)法人を活用した相続税対策ができるメリット

形式上債務超過になっている法人や負債が多い法人を購入し、その法人の株や持分を株価や純資産価格が低いあるいはマイナスとなっている時に相続人に少しずつ贈与することで、相続対策に活用することができます。

3)債務継承に伴う取引金融機関を増やすことができるメリット

法人ごと物件を購入する場合、その購入する法人と既に取引をしている金融機関の債務なども継承することになるので、その法人を活用して新しい金融機関との取引につながるメリットがあります。

■法人譲渡の場合の購入側(法人の場合)のメリット

次に、法人が法人ごと物件を購入することのメリットについてです。

1)法人を複数持つことによる利益や費用の分散化ができるメリット

法人を複数持つことによって、利益や費用が多く出ている法人があった場合に別の法人にそれを分散させるなど、節税対策などを行いやすくなるというメリットがあります。

2)経営資源集約化税制を活用することができるメリット

法人で法人譲渡を受ける場合、令和3年度税制改正により「経営資源集約化税制」が創設され、M&Aの買収側企業は「経営力向上計画の認定」を受ければ、期間限定で「設備投資減税」と「準備金積立制度」による税の優遇措置が受けられるようになりました。

「設備投資減税」は、経営力向上計画に基づき、一定の設備を取得等した場合、投資額の10%を税額控除 または全額即時償却することができます。

「準備金積立制度」は、事業承継等事前調査に関する事項を記載した「経営力向上計画の認定」を受けた上で、計画に沿って M&A を実施した際、 M&A 実施後に発生し得るリスク(簿外債務等)に備えるための制度です。

投資額の 70% 以下の金額を準備金として積み立てることが可能で、積み立てた金額を損金算入できるというものです。

「設備投資減税」と「準備金積立制度」の詳細については、中小企業庁のホームページを参照してください。

参照:経営資源集約化税制(中小企業事業再編投資損失準備金)の活用について

3)累積損失がある法人を購入することによる節税のメリット

購入する法人が債務超過で累積損失がある場合、購入する法人を合併することにより、購入する法人の累積損失を継承することができるため、購入する法人の累積損失を活用して節税をすることができるというメリットがあります。

ただし、単なる節税目的のための合併は否認される可能性があり、また吸収合併する法人の累積損失を必ずしも継承できない場合もあるので、注意が必要です。

4)債務継承に伴う取引金融機関を増やすことができるメリット

こちらは個人で購入する場合のメリットと同様になります。

■法人譲渡の場合の売却側のデメリット

法人ごと物件を売却する際の、売却側・購入側のデメリットを紹介します。

1)金融機関からの債務継承の承認が得られないデメリット

法人ごと物件を売却する場合の一番のネックが、金融機関から借入がある場合に、その借入先である金融機関に債務継承の承認を得なければならいというものです。

多くの資産管理法人は、金融機関からの借入の際、法人の代表者もしくは親族、代表者の関連会社などが連帯保証人になっています。そして、法人ごと物件を売却する場合、代表者が法人の代表を辞任し、新しい代表者が就任するのが通常です。

その場合は当然、売却法人の代表者は代表を辞任するので、借入先である金融機関に自身の連帯保証人の解除と新しい代表者が連帯保証人になることについて交渉することになります。

しかし、金融機関は連帯保証人について連帯保証人となる対象者が連帯保証人として問題ないかを判断して連帯保証人を決めています。そのため、この交渉がうまくいかない場合があります。

法人ごと物件を売却するために連帯保証人の交代を借入先である金融機関に申し出て、新しい連帯保証人の与信に問題があると金融機関が判断した場合は、法人譲渡自体を金融機関に反対されてしまうことも多くあります。

3)買主(購入者)が限られてしまうデメリット

2つ目のデメリットは、買主(購入者)が限られてしまうというものです。なぜ買主(購入者)が限られてしまうかというと、法人譲渡の場合は不動産の売買と違い、銀行融資があまり使えないからです。

法人譲渡取引はいわゆるM&A案件になるので、金融機関も購入する法人の営業利益や営業キャッシュフローなどをベースにして融資をします。そして、融資額は購入する法人の営業利益や営業キャッシュフローの3年~5年分が融資限度額となることが多いため、通常の不動産融資よりも伸びません。

また、融資期間についても通常の不動産投資の場合は20年~30年と長期で組めることもありますし、特に築数年の浅いRC物件などであれば、35年~40年で組めたりします。

一方の法人譲渡の場合はM&A案件と金融機関が形式的に看做します。金融機関の通常のM&A案件の融資期間は一般的に5年~10年です。まれに、法人譲渡だが不動産投資と看做して融資期間を20年で融資してくれる金融機関もありますが、それはレアなケースです。

そのため、法人譲渡の場合には、金融機関の融資を利用して購入することが難しいといえます。結果的に、現金で購入できる人やそれなりに自己資金を投入できる人に買主(購入者)が限られてしまいます。

4)通常の不動産売買取引になってしまうデメリット

3つ目は、上記(1)と(2)のデメリットにも関連するのですが、せっかくの法人譲渡であるにも関わらず、通常の不動産売買取引のようになってしまうというものです。

上記(1)と(2)のデメリットがあるため、買主(購入者)側から「法人譲渡ではなく不動産だけを売却してもらえないか」、あるいは「法人譲渡ではなく事業譲渡にしてもらえないか」という交渉が入ることが少なくありません。

私の知人も当初は法人譲渡で売却を進めていましたが、上記のデメリットのため買主(購入者)がなかなか現れず、通常の不動産売却に切り替えました。その結果、不動産の売却には成功しましたが、法人は残ったままなので、法人を清算するかを考えています。

前回のコラムで書いたように、法人ごと物件を売却することにはメリットも多いですが、一方で金融機関の融資が利用しにくいなどのデメリットもあるので、通常の不動産売却と比べると、やはりそれなりにハードルが高くなるといえるでしょう。

「法人ごと売却の方がメリットが多いから」といつまでもこだわった結果、勝機を逃すことは避けなければいけません。私自身は、上手くいかない場合には通常の不動産売却に切り替えることも必要だと考えています。

 

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※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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プロフィール

Koziさん

Koziさん

不動産賃貸業
IT系企業のサラリーマン
都内に妻と子供と3人暮らし

プロフィールの詳細を見る

経歴
  • □1980年
    神奈川県川崎市の武蔵小杉の地主の家に生まれる

    □1999年(19歳)
    不動産賃貸業に関わり始める

    □2002年(22歳)
    和光大学卒業

    □2004年(24歳)
    公認会計士、不動産鑑定士の試験に合格
    (他に宅地建物取引士、行政書士、賃貸経営管理士等の資格も持つ)
    IT系企業に入社

    □2008年(28歳)
    叔父の不動産を引き継ぎ2015年に法人化
    会社員を続けながら、不動産事業にも取り組む

    □2018年(38歳)
    企業主導型保育事業を開始

    □2021年
    所有物件数15棟(レジデンス、店舗、グループホーム、保育園)
    年商7億円(保育事業の収入含む)

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