今回の大家対談はアカサカトモコさんと民泊ツイッターNo.1の現役OLぽんこつ鳩子さんです。墨田区で民泊立ち上げ真っ最中のアカサカさん、民泊業が好調な鳩子さんにどんなことを聞くのでしょうか。取材は立ち上げ作業中の港区にある鳩子さんの物件の一室で行なわれました。
■民泊スタートは池袋!18万5000円の一軒家から始まった
アカサカトモコさん(以下トモコさん)
こんにちは鳩子さん。今日はどうぞよろしくお願いいたします。
ぽんこつ鳩子さん(以下鳩子さん)
よろしくお願いします。ぽんこつ鳩子と申します。私2018年から民泊をやっていまして、そのノウハウをまとめた『民泊1年生の教科書』という本を7月に発売させていただきました。今民泊が14軒とシェアハウスが4軒で、合計18軒やっています。民泊はあくまで副業なので、本業は普通の会社員をしています。
トモコさん
どうして民泊を始められたんですか?
鳩子さん
29歳のときにサラリーマンの仕事が嫌になって、700日間仕事をお休みさせていただいて、世界一周をしました。Airbnb(以下エアビー)を使ってホテルとか民泊に泊まっていたんですけど、日本に帰国したときに、そのまま元の仕事に戻るのが嫌だなと思ったんです。
せっかく他の人にはなかなかできない経験をしたので、どうせなら世界とつながりができる副業をやりたいと、その時思い始めました。
でも、かといってそんなにお金も時間もないし、英語もめちゃくちゃ喋れるわけじゃない。そこで世界一周している間にニューヨークで出会った旅人の友人が、民泊ビジネスでめちゃくちゃ稼いでいるのを見て、これと同じことを日本でやったら稼げるなと思ったんです。
最初に借りた物件は、池袋駅徒歩15分くらいの大きなボロボロの一軒家。築40年以上のそこを家賃18万5000円で借りました。そこの1階に住んで2階の4部屋を貸すという、今だと珍しい家主居住型というスタイルで始めました。
大家さんになんとか許可を取らせてほしいと2回くらい面談に行って、民泊について熱く語って頼み込んで、2年間の定期借家契約で借りました。
■優秀な部署に配属、女性のキャリアに悩み700日間世界一周へ
トモコさん
700日の休職ってなかなかすごいなと思ったんですけど、そういう制度が会社にあったんですか?
鳩子さん
はい。もともと海外に行くための制度ではないんですが、会社に籍を置いたままお休みをする制度があるんです。会社には休む機会をもらえてすごく感謝しています。
お陰様でお金的にはサラリーマンを辞めてもいいぐらいには稼げるようになりましたが、いまだに細々とサラリーマンを続けているのは、ちょっと会社に恩返しをしたいからという思いもあるからです。
トモコさん
株とかはやっていなかったんですか?
鳩子さん
帰国してツイッター(現X)を始めて、NISAやiDeCoの勉強はしましたが、ほとんどやっていません。世界一周前は、本当に家と会社の往復で「週8」で会社の人と飲みに行っていました(笑)。もう、会社の中に全てがある状態で、会社に友達もいるし、話せる人もいる感じです。
トモコさん
世界一周前はそんなに会社休みたいほど大変だったんですか?
鳩子さん
いや、会社は大好きだったんです(笑)。でも困ったことに、自分が配属された部署がめちゃくちゃ優秀な営業部だったんですよ。
もう一丁目一番地みたいなところに配属されてしまって。当時業界的にも女性の営業職がまだ採用したてだったんです。そんな会社だったので、なかなか大変で。
トモコさん
ああ、それわかる!私も異動になったら女性が100人中1人ぐらいしかいなかったんですよ。ちょっとプレッシャーがしんどかったですね。そこに性差はないんですけど、でもおじさんばっかりの中で私やっていけるのか不安でした。
鳩子さん
そうなんです。しかも先輩たちがとにかく優秀で、そこに追いつくためにはとにかく働くしかないと思っていました。当時は仕事がめちゃくちゃ楽しくて、やりがいもありました。
そうやって始発から終電まで働いていると、病んでくるんですよ。だんだん疲れてきてしまって。
トモコさん
どこかでプツッて切れてしまいますよね。そういうこと、私も経験ありましたよ。
鳩子さん
そうでしたか。やっぱり女性は30歳の手前ぐらいでキャリアに悩みますよね。うちは結構大きい会社なんですけど、女性の管理職が当時一人もいなかったんです。
だから自分の目指すキャリアモデルもいないし、私このまま消耗していっちゃうのかと思うと、会社の世界しかなかった自分が、すごく不安になったんですよね。
しかも取引先の担当者から、朝から晩まで携帯に電話がかかってくるんですよ。そこで、もう電波が届かない、誰も知らないところに行きたいと思って、海外に行くことにしたんです。
トモコさん
その気持ちはすごくわかります。私も男性がメインの会社だったので、女性の上司とか女性店長とか上のクラスがいなかったのもあって、このまま私がここにいてどうなるんだろうって思うところがありました。
それで私は会社に頼っていてもダメだと思って、不動産を始めたんです。だから焦る気持ち、何かしなくちゃという気持ちは、ものすごくわかる。やっぱり女性のキャリアって難しいですよね。
だいぶ改善されてきたとはいえ、まだ男性と全く同じ土俵にはなかなか立てないなっていうのはあって。すごく頑張りたい、一生懸命やりたい人ほどプレッシャーを抱えちゃうのかなっていう気がします。
■自分の知らない自由な生き方を目の当たりにして衝撃を受ける
トモコさん
でもそこで民泊に出会ったのがすごいです。旅行中に他に何か気になることってなかったんですか?
鳩子さん
それが全然なかったんですよ。アフリカとか中南米とか、遠いところに行く日本人の旅人って、基本みんな会社を辞めてくるんですよ。そういう人って日本人宿に集まるんですけど、みんな同じくらいの世代で、28~35歳くらいのアラサーなんです。
みんな会社を辞めて貯めたお金で何年か旅をしていました。その時思ったんです。「日本は会社を辞めないとこういうところに行けないんだ」って。
でも、10人そういう人がいたら、中には1人くらい会社を辞めていない、フリーランスで働いている人がいるんですよ。それって、どういうことだろうと思って。
会社に行って労働することしか知らない自分が、そうやって自由な生き方をしている人を目の当たりにして、世の中にはいろんなお金の稼ぎ方があるんだと気づいたんです。
でも、私の本業はやっぱりサラリーマン。それなら何か副業としてちょっとお金を稼げそうなことで、世界一周した経験が活かせるようなことができないかなと思って。
そうなると、株とかFXとかには興味が向かなくて。なので、自分が海外の宿にたくさん泊まっていたので、それを活かしたものができたらという思いもありました。
トモコさん
確かに安宿の1階でパソコンを開いてキーを叩いているお兄さんがよくいますよね。あれ謎だったんだけど、そういう人達だったんですね。
鳩子さん
そうなんですよ。私も彼らは何者だろうって思っていました。でも海外の人はもっと自由で、1年に3ヶ月しか働かない、9ヶ月は遊んでいて旅をしているんだっていうスウェーデンの建築士の人もいたし。
そういう、自分の今まで生きてきた中のカテゴリーとは、また全然違うところで生きている人もたくさんいるんだということを知って、人生を変えるくらいの衝撃を受けました。
トモコさん
単純に日常が嫌になって海外に出たけど、自分の知らない世界を知る出会いがたくさんあったんですね。それが結局民泊につながったと。
■エアビーの黎明期、NYで黒人のおじさんの家に間借りして得た経験
トモコさん
それはちょうどエアビーのアプリができて、海外で結構注目され始めた頃ですよね。
鳩子さん
そうです。自分は泊まる側で、当時急速に伸びていたエアビーの利用者でした。とくにニューヨークってすごく宿が高いじゃないですか。ボロボロの二段ベッドでワンベッド一泊8000円くらい。世界で一番高い都市です。
だから普通の宿は高いので、一般宅のお部屋の一つを間借りするんです。ニューヨークでは、2LDKで黒人のおじさんが住んでいる家の一部屋を借りたんですね。そうか、民泊ってこういうのでOKなんだと、すごくびっくりして。
ホスト同居とはいえ、ある程度距離感もちゃんと保ってくれるんです。近づきすぎないけど、困ったら助けてくれるくらいの感じで、いいホストさんでした。こういう感じだったらできるかなと思って、日本で家を探しました。
トモコさん
私がエアビーを知ったのも、多分鳩子さんがニューヨークでびっくりしたのと同じぐらいの時期ですよ。エアビーって言葉が日本にも入ってきて、日本ではそこまでバーっと増えなかったんだけど、そういうものが今欧米では人気だというのを知って、これ面白い!って思いました。
鳩子さん
日本には空き家、空き部屋とか結構あるじゃないですか。これはすごく画期的なビジネスだなと思いました。
帰国したら東京に住もうと思ったんですけど、20万円のOLの給料では、狭いワンルームしか借りられませんよね。それは嫌だなと思って。
それなら大きなところを借りて、空いている部屋は貸そうと思ったんですよ。一人身で身軽な人にはいいなと思いました。
トモコさん
実際大家さんの中でも、元二世帯住宅で、子どもたちが出ていった後の一世帯を貸す人もいます。すごくそれ、理想だなと思って。
自分がもっと歳をとって、外に出かけるのも億劫になったとき、家に客が来るのって楽しいなと思います。老後やりたいなと思うんです。
鳩子さん
ちなみに私ツイッターを始めてから初めて不動産投資というものを知りました。元々私は不動産投資をやりたくてこの世界に入ってきたわけじゃなくて、民泊から入って不動産投資を始めたので、賃貸併用物件とか、二世帯住宅とか、新築を建てたりする話を聞く度に、いろいろ超ビックリしています。
普通のOLさんが賃貸併用物件を建てたとかいう話を聞いただけでビックリ。ありがたいことに周りの不動産投資家さんとかと仲良くさせていただいているので、みんなからそういう話を聞くと、こういうやり方もあるよ、とかいろいろ教えていただくんですよ。
そこで自分にはどんな手法がいいかと考えた時に、不動産をすごく勉強して、利回りがバンバンとれるいい物件を買う手法は、自分にはやっぱり向いてないと思ったんです。そういう風には戦えないなと思いました。
それなら、民泊で瞬間最大風速を狙いに行くのがいいと思いました。だから民泊で一気に稼いで、そのお金で1年にそこそこの物件を1軒買うというのを決めています。
トモコさん
それは事業家の正しい姿だと思いますよ。会社で利益が出ると、不動産を買う人が多いじゃないですか。それの個人版というイメージで、正しい不動産投資、資産の形成の方法だと思います。
鳩子さん
ありがとうございます。今は結構民泊の方に注力しているんですけど、でもあまり不動産投資は自分で探しに行くより、友達がお勧めしてくれたものを買うっていう感じですね。
トモコさん
それは比較的自分の知っているエリアで、ここなら貸してもいいかなって思えるところで?
鳩子さん
そうですね。土地勘があるところで買うようにしています。縁もゆかりもないところでは、やらないようにしています。とにかく不動産投資の方は、まだ全然ペーペーなんで(笑)。
多分同年代のOLさんより多少はお金を稼ぐ力はあるかと思っているので、そういう意味ではこの2年、大阪万博ぐらいまでは民泊事業を加速させて、そこで一気に稼いで、それを不動産にして5年計画ぐらいで資産形成していきたいと思います。
(編集後記)
700日間の世界一周の経験が、民泊ビジネスの大事な部分を形成したのですね。第2回は明日配信です。いよいよ鳩子さんが最初の民泊を立ち上げる、その舞台裏を伺います。お楽しみに!(担当:T)