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リゾートホテルを住宅に。海が見える部屋が2000万円台~

賃貸経営/リノベ・修繕 ニュース

2023/07/03 配信

コロナ禍で住宅ニーズにも変化が生じた。一番分かりやすかったのは在宅ワークに対応、居室とワークスペースを分けたいというもの。ワンルームではなく、限られた面積でも空間を分けた間取りが選ばれるようになったし、規模のある物件では仕事でも使える共用部のあるものが増えた。

眺望、解放感が新たなキーワードに

そうした変化したニーズのひとつに開放感、眺望がある。タワーマンションなどのニーズと重なるが、室内にいても遮ることのない眺望が得られれば閉塞感を感じることはない。在宅時間が長くなってもストレスを感じることが少なくて済む。

そういう流れもあるのだろう、移住先では海あるいは山のある地の人気が高い。山でいえば長野県が強いし、コロナ禍以降の湘南人気、同エリアの価格上昇もそれで理解できる。

高台に建つリステージ三浦海岸。ただし、低層階は土地の高低の関係で眺望は得られない
高台に建つリステージ三浦海岸。ただし、低層階は土地の高低の関係で眺望は得られない

だが、湘南エリアは価格も高く、それほど条件の良い不動産は少ない。だとしたら、と三浦海岸に目を向けた面白い物件がある。リゾートホテルを分譲マンションに改装したリステージ三浦海岸である。賃貸住宅ではないが、その考え方にはいくつも学ぶべき点がある。ご紹介していこう。

湘南ではなく、三浦海岸に着目

リステージ三浦海岸(媒介/成和建物 売主/リストプロパティーズ)が立地するのは京急三浦海岸駅から歩いて7分の高台。建物は10階建て、全108室で1992年竣工。2023年時点で築31年である。

元々は隣接して建っているリゾートホテルの別館だった。ただ、本館と違うのは9~10階に会議室があって主に企業の研修や修学旅行生の宿泊などに使われてきたこと。コロナ禍での研修需要、観光需要が減少。そこで住宅への転用が検討された。

湘南は高すぎて投資には不向き

売主であるリストプロパティーズではコロナ禍では眺望に目を向ける人が増えたという実感があり、湘南辺りで投資できそうな物件の有無を検討してみたことがあったそうだ。だが、湘南エリアでは早くから眺望の良い立地は別荘などとして開発されており、後発の集合住宅で眺望に恵まれた物件は数が少ない。

オーシャンビューと謳っていても、現地に行ってみるとキッチンの窓からわずか何センチか見える程度ということもあり、実際の眺望はピンキリ。しかも湘南ではコロナ禍以降戸建てを中心に不動産価格が上昇、物件自体も払底しており、投資としては難しいと判断した。

三浦海岸はアクセスも良好

最寄り駅三浦海岸駅。駅近くにはスーパー、ドラッグストア、飲食店、土産物屋が集まっている
最寄り駅三浦海岸駅。駅近くにはスーパー、ドラッグストア、飲食店、土産物屋が集まっている

それに比べると三浦半島、京急沿線はまだ手頃である。しかも、京急は自路線の終着駅品川はもちろん、都営浅草線との相互乗り入れで都内に直通で行ける。羽田、成田両空港へのアクセスも良い。駅のない葉山などに比べると利便性はずっと高いのでる。

ただ、問題はホテルから住宅へというコンバージョン。

コンバージョンには難しさも

「寮や社宅を賃貸住宅にする例はよくあります。その場合には洗濯機置き場を設置、キッチンを電熱器からガスに交換、メールボックスを新設するなど設備的な追加が必要なのですが、ホテルから住宅となるとそもそも用途変更が必要になります。また、建物ができてから今日までの間にバリアフリー法など新しくできた法律もあり、これとの整合をどうするかなど、考えるべきことは多数ありました」とリストプロパティーズ アセット事業部の大泉篤氏。

対象の異なる層にそれぞれ訴求

そうしたやりとりを経て販売を開始したのは2022年4月。建物は高台にあり、眺望には恵まれているのだが、全室海が見えるわけではない。そこで販売方法には一工夫ある。購入対象者を2種類想定、それぞれの人たちに向けた打ち出し方をしているのである。

室内からの海の見え方はこんな感じ。取材の訪れた日が薄曇りだったのでこの程度だが、腫れていたらさぞかしと思った
室内からの海の見え方はこんな感じ。取材の訪れた日が薄曇りだったのでこの程度だが、腫れていたらさぞかしと思った

まずひとつは海の眺望を価値として感じる首都圏の人たち。この人たちにとっては海の見え方が大事であって、もちろん、価格は気になるものの、優先順位は眺望になり、訴求すべきは眺望ということになる。

建物正面近くに上がる花火大会の特等席になるそうで、そうした話題も都会の人には受ける
建物正面近くに上がる花火大会の特等席になるそうで、そうした話題も都会の人には受ける

これに対して地元の人たちからすると海は日常的な存在。自宅から海が見えることは特に価値とは感じられない。それよりも比較的安価に質の良い住宅が手に入ることを価値と感じる。となれば価格の優位性を訴求することになる。

眺望の有無で価格差

その結果、「眺望のある、なしによって価格差を付けることで、オーシャンビューの部屋のみならず、低層階、海側向きでない部屋も順調に売れています」という。対象を分けて考えることで、どちらの良さをも生かしているのである。

低層階のリビング。天井現しのインテリアなど、普通の新築にはない点が受けている
低層階のリビング。天井現しのインテリアなど、普通の新築にはない点が受けている

眺望にはかけるものの、低層階では2000万円を切る67㎡の2LDKなどがあり、周辺の相場で考えるとお手頃感がある。リビングを広く取った間取りは地元の一般的なファミリータイプの賃貸に比べてはるかに魅力的。また、バブル期特有のゆったりした廊下幅、共有廊下と住戸間の吹き抜けなどの贅沢さも受けているという。

室内の自由度が女性に人気

もうひとつ、室内をある程度自由にできるという点も受けている。新築であれば事前に要望を受けて内装をある一定範囲で自由にするという試みはあるが、こちらは中古物件である。普通ならば購入者が自分でリフォームを手配する。ところが、この物件では売った側がリフォームまでを一貫して行う。

「販売価格はリフォーム代込み。中古物件購入後にはリフォームの必要額が分からない、住宅ローンと別にローンを組み必要があるなどの面倒が生じることがありますが、この物件ではあらかじめ含まれています。

また、ひとつの広さの間取りに対して複数のプランが提示されており、設備を追加するなどでない限りは一定の範囲で変更も可能です。その自由度のあるリフォームが特に女性には受けています」。

実際の購入ではホテルの時の状態のままで内見、用意されているいくつかのパターンのうち、どれにするかを購入者が決めてリフォームを行う。約67㎡の部屋の場合、2LDKにも3LDKにもでき、収納の位置を変えたり、追加したり、色を変えることも可能。インテリアにこだわりのある人なら楽しいはずだ。

その結果、現在までに売れた70室中、15室は住宅内の細部にまでこだわると言われる単身女性が購入している。この割合はかなり高いと大泉氏。都心に比べると比較的安価で自由度が高く、しかも海も見える。以前より通勤の自由度も高くなっている現在ならかなり魅力的といえよう。

現在までのところ、購入者の中心は40代前半だが、下は20代半ばから70代後半までと年齢層は幅広く、都心に比べると比較的手ごろな価格設定のせいだろう、購入者の7割くらいがキャッシュで買っている。投資目的での購入は今までのところではゼロ。4割くらいは多拠点、二拠点のために購入しているそうだ。

リゾートと一般の住宅の境界は無くなる?

これまでの不動産の販売、賃貸ではリゾートニーズと一般の居住ニーズは離れたところにあった。一般的な居住用不動産を探すポータルと別荘を探すポータル、それぞれを取り扱う事業者が別に成立していることを考えれば、事情はお分かりいただけよう。

だが、このところへ来てホテルがオフィス的に使われたり、住宅内にオフィス的な空間を設けたり、海辺や山のリゾート地でワーケーションと称した「働く+遊ぶ」試みがあることなどを考えると、建物の種別、用途や立地などといったこれまでの境界は重なり合っていくものと思われ、同物件の動きはその先駆ともいえる。今後、こうした境界的な物件がどう動いていくかは注視したいところ。

また、ひとつの建物の中に複数のニーズを設定する、内装の自由度を上げるということが売れ行き、人気を左右することも覚えておきたいポイントだろう。

健美家編集部(協力:中川寛子(なかがわひろこ))

中川寛子

株式会社東京情報堂

■ 主な経歴

住まいと街の解説者。40年近く不動産を中心にした編集業務に携わり、近年は地盤、行政サービス、空き家、まちづくり、地方創生その他まちをテーマにした取材、原稿が多い。
宅地建物取引士、行政書士有資格者。日本地理学会、日本地形学連合、東京スリバチ学会会員。

■ 主な著書

  • 「ど素人が始める不動産投資の本」(翔泳社)
  • 「この街に住んではいけない」(マガジンハウス)
  • 「解決!空き家問題」「東京格差 浮かぶ街、沈む街」(ちくま新書)
  • 「空き家再生でみんなが稼げる地元をつくる がもよんモデルの秘密」(学芸出版)など。

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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