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保護猫ラウンジ併設、越谷市の女性専用賃貸住宅に全国から問合せ。人気の理由を聞いた

賃貸経営/技あり・話題の賃貸物件 ニュース

2022/12/12 配信

2022年11月に保護猫ラウンジ併設の女性専用賃貸住宅「necotto」の内覧会が開かれた。だが、その前に全6室のうちの1室は決まっており、プレスリリースを紹介したWeb記事のPV数は数千にも及んでいた。実際の物件が公開される前から広く関心を集めていたわけだが、その理由はなんだったのだろう。

保護猫賃貸SANCHACOとの出会い

越谷駅から歩いて9分、ひときわ目を惹く新築物件necotto。1階左端は住戸、その隣にキッチンスタジオ、住戸への入口があり、その右がカフェ
越谷駅から歩いて9分、ひときわ目を惹く新築物件necotto。1階左端は住戸、その隣にキッチンスタジオ、住戸への入口があり、その右がカフェ

「necotto」は3年半前に偶然のきっかけから捨てられていた猫を飼うことになったオーナーが建てたもの。一時預かるだけだったはずの猫の可愛さに別れがたくなって飼うことになるのはよくある話だが、その愛猫をきっかけに保護猫について知ることになり、保護猫のためにと立ち上がるののはめったにない話だ。

保護猫とは文字どおり、飼い主の事情で飼えなくなった、捨てられた、迷子になったその他の理由で住みかをなくし、人間に保護された猫のこと。

人間に飼養されていない猫の生活は過酷で長生きはできない。また、野良猫は地域で嫌われることも多い。それを知った「necotto」オーナーは猫を保護する団体に協力することで辛い思いをする猫を減らせるのではないかと考えた。

いろいろ、リサーチするうちに世田谷区三軒茶屋にある保護猫を預かっている賃貸住宅SANCHACOに巡り合う。3階建ての同物件は1階に保護猫が暮らす共用スペースがあり、賃貸入居者は猫たちと一緒に暮らす。

これは猫を飼ってみたいと思いながら経験がない、飼えるかどうか心配だ、面倒ではなかろうかなどと踏み切れなかった人達に猫のいる暮らしを経験してもらおうというもの。暮らしているうちにSANCHACOで預かっていた保護猫を引き取る例もあるそうだ。

SANCHACOを訪ね、設計を担当したチームネット・甲斐徹郎氏と知り合ったことから実際の計画がスタートした。以前は駐車場として使っていた土地に保護猫ラウンジのある賃貸住宅を建てることにしたのだ。

木造2階建て、全6戸の女性専用賃貸

実際の住宅は木造2階建て。全6戸のうちの5戸は2階に配されており、1階には入居者の共有スペースとなる保護猫ラウンジが中央にある。その左右にはオーナーが経営するカフェ、レンタルスペースとなるキッチンスタジオが作られている。

カフェの前の空間。ベンチを出せば外もテラス席のように使える
カフェの前の空間。ベンチを出せば外もテラス席のように使える

お邪魔してみると建物の前には豊かな空間が取られており、カフェの前にはテーブルを出すスペースも。まだ植えられたばかりではあるものの、植栽も豊富にあり、時間が経てば居心地の良い空間になるだろう。

カフェ側から見た外観。思わず立ち止まりたくなる
カフェ側から見た外観。思わず立ち止まりたくなる

バルコニーに配された木の横格子、ピンクがかったベージュの外観、カフェと住戸入口の周りのアールのデザインなど、猫と関係なく、賃貸住宅としても人目を惹く作りである。実際、見学中には立ち止まって建物を眺める地元の方を数人見かけた。年代はそれぞれだがほとんどが女性。気持ちの良さそうなモノへの感度の高さを感じた。

共用ラウンジ。キャットツリーの向こうはキッチンスタジオで、そこで作業する人も写真左上の窓から猫の様子が見えるようになっている
共用ラウンジ。キャットツリーの向こうはキッチンスタジオで、そこで作業する人も写真左上の窓から猫の様子が見えるようになっている
住戸への階段はカフェとの間にある。中央の収納には一部穴が開いており、猫が行き来できるようになっている
住戸への階段はカフェとの間にある。中央の収納には一部穴が開いており、猫が行き来できるようになっている

建物中央部にある玄関から入ると、そこが保護猫たちを預かる予定の共用ラウンジ。壁に木の形になったキャットステップが用意され、収納部には猫がすり抜けることにできる穴があるなど、猫に配慮した作りになっている。また、オーナーが用意した猫にまつわるアイテムが各所に配されており、猫好きな人ならここだけで心を奪われるだろう。

2階の廊下。ここまでが保護猫がうろうろするエリア
2階の廊下。ここまでが保護猫がうろうろするエリア

そこから階段、その先の共用廊下までが猫が自由にうろうろする空間。我が家の玄関を開けたらそこに猫がいることもありうる暮らしが実現するのである。

右側がオリジナルのキャットタワー。ロフトにも窓があり、風が抜けるようになっているなど居住性への配慮も
右側がオリジナルのキャットタワー。ロフトにも窓があり、風が抜けるようになっているなど居住性への配慮も
水回りへのドアにはペットが通れるような小さなドアが用意されている
水回りへのドアにはペットが通れるような小さなドアが用意されている

住戸は24.7㎡~29.4㎡までで多少広さが違うものの、基本はロフトのあるワンルーム。天井が高く、広々したロフトがあり、かつ南向きで明るいため、実際の面積より広く感じられる。

猫を意識した部分としては滑りづらい床材、破れにくい樹脂コーティングの網戸、ロフトへのキャットタワー、水回りへのドアのペットドア、猫トイレを置くスペースのある水回りなど。

木の横格子がしゃれた雰囲気のバルコニー。広さもあり、南向きで日当たりも良い
木の横格子がしゃれた雰囲気のバルコニー。広さもあり、南向きで日当たりも良い

また、猫がロフトから落ちないようにネットが張れるようにフックが用意されている。同じものはバルコニーにも用意されており、バルコニーから猫が逃げ出したり、落下しないようにとのこと。ネットを貼っておけばバルコニーも猫と暮らす空間になるわけである。

手作り、配慮のある空間の魅力

女性は年齢を問わず、こうした小さな気配りがうれしい
女性は年齢を問わず、こうした小さな気配りがうれしい

個人的にはオリジナルの木を利用したキャットタワー、各住戸の部屋番号が単なる数字ではなく、くも、ゆきといった自然にまつわるものであることなど、細部にこだわった作りに他との違いを感じた。大量生産ではなく、ひとつずつ手をかけた空間なのである。

1階住戸。ロフトはないが、その分、窓先が広く取られており、開放的
1階住戸。ロフトはないが、その分、窓先が広く取られており、開放的

賃料はロフトのない1階が6万9000円で2階の部屋は7万2000円~7万9000円。共益費は5000円である。周辺の同じくらいの広さの物件と比べると1万円ほど高いそうだが、ペット可と考えるとそうでもない。

キッチンスタジオ。ここで作った品をカフェで出すなどいろいろなコラボレーションが考えられる
キッチンスタジオ。ここで作った品をカフェで出すなどいろいろなコラボレーションが考えられる

1階にはそれ以外にカフェ、キッチンスタジオがあり、そのうち、キッチンスタジオは今後スペース貸しされていく予定。最近ではスペース貸しも一般的で貸しやすくなっている。使わない日時があるなら活用を考えたいところだ。カフェはオーナー自らの経営の予定で、曜日等はまだ決まっていない。

小さなカウンターがあり、販売もできるようになっている
小さなカウンターがあり、販売もできるようになっている

キッチンスタジオは窓辺にカウンターもあり、製造するだけでなく、販売もできるスペースになっている。昨今のレンタルキッチンブームを考えると、こちらも人気が出そうである。

保護猫という物語に共感、遠隔地から来訪

さて、冒頭で完成前から人気を集めていたと書いたが、実際、どうなのかをチームネットの甲斐氏に聞いてみた。ひとつ、明らかに一般的な賃貸住宅と異なるのは遠隔地からの見学が多いことだという。

「すでに入居が決まっている人は都内西部からで、この方はすでに猫を飼育しています。それ以外では鎌倉、横浜など越谷とはかなり距離のある、遠いところからの来訪。もっとも遠いところでは神戸という方もいらっしゃり、この方は建築に関心があって出張にかこつけて見学に寄ったと仰っていました」。

ペット可、猫可物件自体は以前に比べればだいぶ増えているが、それでも全体からすればまだまだ希少。保護猫となるともっと少なく、自分で飼わなくても猫と暮らせる賃貸住宅はさらに、さらに希少である。飼ってみたいもののきっかけがなくという人からすると、自分で飼わなくても猫と暮らせるのは魅力なのかもしれない。

カフェには暖炉もあり、映画が上映できるような設備も用意されていた
カフェには暖炉もあり、映画が上映できるような設備も用意されていた

また、ここに住むことで保護猫を応援できるという物語も人を惹きつけているのではないかと思われる。自分の行動が社会に役立つ、貢献すると思える物語があればそれを選択しようと考える人が増えているのである。プレスリリースはオーナーの暖かい気持ちが感じられるものになっており、その効果も高いようだ。

カフェの窓。これがあるだけでこの建物の只者じゃない感が増す気がする
カフェの窓。これがあるだけでこの建物の只者じゃない感が増す気がする

もうひとつ、建築としての魅力も大きなポイントではないかと思った。神戸からわざわざ見に来た方がいらっしゃったそうだが、設計を担当した甲斐氏は環境共生型の設計では知られており、コミュニティ形成に寄与するデザインにも長けている。環境、コミュニティに目を向ける人が増えている中、そうした建物を模索する動きが生まれつつあるのだ。

道行く人が思わず立ち止まる物件

保護猫、環境、コミュニティといくつか気になるキーワードがあり、それが複合的に絡まり合って人気に繋がっているのだろうが、個人的にはぱっと物件を見た時に感じる明るさ、暖かさも大きいのではないかと思った。

物件から駅に帰る道すがらにはたくさんの住宅があり、その中には賃貸住宅も多く含まれていたが、印象に残る、立ち止まりたくなるような物件はなかった。見知らぬ人が通りすがりに思わず立ち止まる。そんな物件が作れればおのずと人気も出るのではないか、抽象的ではあるが、そんなことを思った。

追記:11月28日の内覧会にお邪魔、その時点で1室が決まっていたことは書いた通り。その後、記事作成のためにやりとりをさせていただいていたのだが、12月11日の時点で残りの全室に申込が入ったという。非常に早いペースで埋まっており、人気ぶりには改めて驚かされた。

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健美家編集部(協力:中川寛子(なかがわひろこ))

中川寛子

株式会社東京情報堂

■ 主な経歴

住まいと街の解説者。40年近く不動産を中心にした編集業務に携わり、近年は地盤、行政サービス、空き家、まちづくり、地方創生その他まちをテーマにした取材、原稿が多い。
宅地建物取引士、行政書士有資格者。日本地理学会、日本地形学連合、東京スリバチ学会会員。

■ 主な著書

  • 「ど素人が始める不動産投資の本」(翔泳社)
  • 「この街に住んではいけない」(マガジンハウス)
  • 「解決!空き家問題」「東京格差 浮かぶ街、沈む街」(ちくま新書)
  • 「空き家再生でみんなが稼げる地元をつくる がもよんモデルの秘密」(学芸出版)など。

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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