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首都直下地震に備え、地盤以外に知っておきたい延焼危険度とは?幅員2.5m未満の道路に注意

不動産投資全般/災害・防災 ニュース

2024/02/16 配信

消防体制の整備が大火を減らした

日本では1980年代以降に大火(建物の焼損面積が3万3,000m²以上の火災)と呼ばれるような火災は激減している。総務省消防庁の令和3年版消防白書「昭和21年以降の大火記録」を見ると昭和55年(1980年)の滋賀県甲西町の倉庫火災の次の大火は阪神淡路大震災となっており、この間には大火は発生していない。

これは1965年~1975年にかけて日本の消防体制が劇的に整備されたためとされる。よく、大火が減った原因を都市の耐火性能が上がったからと思っている人がいるが、実際には消防の力が発生した火災が広がる前に食い止められるようになっているからだ。

地震に伴う火災では消防が機能できないことも

それができない場合もあることを如実に示したのが2024年1月1日に発生した能登半島地震である。観光名所だった輪島朝市通りで発生した火災では200棟以上の建物が焼け、およそ5万2000㎡もが焼失したとれる。火元は1カ所だったといわれるが、火の手は瞬く間に広がり、建物はもちろん、多くの住民が犠牲になった。

それには本来機能するはずだった消防機能が地震、津波の影響で動かなかったという不幸があった。水道管が壊れて断水が起きていたために消火栓は使えなかった。地震による地盤の隆起からだろう、河川には水が流れておらず、消火活動に必要な水をくみ上げることができなかった。防火水槽には道路のがれきに邪魔され、近づくことができなかった。津波警報が出ていたため、海水を利用することもできなかった。

その結果、古い木造住宅が中心になっていた輪島朝市通り周辺は大きな被害を受けることになった。地震という不測の事態が起きると、頼りにできるはずの力が発揮できないことがあるのだ。

地震時における地域別延焼危険度測定

その観点で首都直下地震の危険がある東京を見た時、参考にしたい調査がある。東京消防庁が出している「東京都の地震時における地域別延焼危険度測定(第10回)」である。

これは昭和48年度(この時点では特別区。多摩地区は昭和50年度から)から測定が始まったもので、震災時に発生した火災が燃え広がる危険性を地域ごとに評価するもの。市街化の進展、不燃化の変化などに合わせておおむね5年ごとに実施、公表されている。

東京都の地震関係の調査としては地域危険度測定調査があるが、この調査はその基礎データとして使われているほか、各種の震災対策用資料に反映されている。さまざまな地震関係調査のベースというわけだ。

調査結果は町丁目、205mメッシュの2通りの測定単位で算出されている。調査項目としては地域の延焼危険度、建築物の消失危険度、消火活動困難度となっており、その中には震災時の消火活動困難度もある。

以下、簡単に調査結果をご紹介しよう。

環七、環八間に危険区域

まず、地域の延焼危険度(町丁目単位)。これは町丁目で1件の建物火災が発生した場合、6時間後に平均でどの程度燃え広がるかを危険度のランクとして評価したもの。

地域尾延焼危険度(町丁目単位)危険と思われがちな下町エリアよりも特別区西部に危険な地域が広がっていることが分かる
地域尾延焼危険度(町丁目単位)危険と思われがちな下町エリアよりも特別区西部に危険な地域が広がっていることが分かる

延焼危険度が高い地域としては

●特別区の西部では環状七号線、環状八号線に挟まれた地域やその沿線、中央線沿線地域

●特別区の東部では明治通り沿いや荒川沿いの地域など

●多摩地域では特別区との境界付近やJR中央線沿線の市街地など

いずれも木造や防火造建物(外壁と軒裏を防火性能を持たせたもの。防火地域では50㎡以下の平屋、準防火知己では500㎡以下の2階建てまでが可)が密集している地域、広幅員道路や空き地が少ない地域では延焼危険度が高くなる傾向があるとされている。

23区で区ごとの平均値を一覧表にしたものでみると危険度ランクが5となっているのは中野区、杉並区、練馬区で、4は新宿区、文京区、台東区、墨田区、品川区、目黒区、大田区、世田谷区、豊島区、荒川区、板橋区、足立区、葛飾区、江戸川区。意外に危険な地域は広範に渡っているのである。

比べると多摩地区ではランク5となっている自治体は狛江市だけ。4となっている自治体を見ると武蔵野市、三鷹市、調布市など11自治体。都内よりは多少は安全といえそうだ。

消火活動困難度は道路幅員にも左右される

震災時の消火活動困難度(町丁目単位)。杉並区、練馬区、武蔵野市などで危険度が高くなっていることが分かる
震災時の消火活動困難度(町丁目単位)。杉並区、練馬区、武蔵野市などで危険度が高くなっていることが分かる

続いて震災時の消火活動困難度。これについては防火水槽等の位置、道路の幅員、建物の耐震性などから消防水利が利用できるかどうかを推定し、250mメッシュで表している。

本体の調査結果ではないが、ここで大事なのは消火活動困難度測定手法で幅員2.5m未満の道路沿いの消防水利は可搬ポンプ車による活動を前提としているという点。この道幅ではポンプ車は入らないと考えられているわけで、当然ながらポンプ車と可搬ポンプ車では消防能力は異なる。

つまり、木造住宅、防火造建物などが密集しており、かつ幅員2.5m未満の細街路の多い街区には危険があるということだ。もちろん、そうした場所でも消防署や消防団のポンプ置き場などに近ければ消防の到達時間は早くなるだろうが、そうでもない限り、火災時には不利な状況にあるわけだ。この点は物件選びの際に覚えておきたいところである。

この調査では最後に町丁目ごろの延焼危険度ランク、消火活動困難度ランクが一覧として添付されている。幸い、消火活動困難度ランキングは延焼危険度が高い地域でも、多くは1程度となっている。想定ではそれほど消火活動が行われないことはないだろうとなっているわけだが、自然災害が人間の想定内で終わると考えるのは難しい。延焼危険度が高い地域では危険を意識しておく必要はあるはずだ。

健美家編集部(協力:中川寛子(なかがわひろこ))

中川寛子

株式会社東京情報堂

■ 主な経歴

住まいと街の解説者。40年近く不動産を中心にした編集業務に携わり、近年は地盤、行政サービス、空き家、まちづくり、地方創生その他まちをテーマにした取材、原稿が多い。
宅地建物取引士、行政書士有資格者。日本地理学会、日本地形学連合、東京スリバチ学会会員。

■ 主な著書

  • 「ど素人が始める不動産投資の本」(翔泳社)
  • 「この街に住んではいけない」(マガジンハウス)
  • 「解決!空き家問題」「東京格差 浮かぶ街、沈む街」(ちくま新書)
  • 「空き家再生でみんなが稼げる地元をつくる がもよんモデルの秘密」(学芸出版)など。

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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