繁忙期を終えた報告会などで、オーナーの皆様にお会いすると「最近の若いもんは、ちょっと話がかみ合わないな」という声を聞く。なるほど、新入社員研修で接する若い世代は、これまでとは違ったタイプで「Z世代」と呼ばれるようだ。そこで今回は、この「Z世代」をどうパートナーマネジメントしていくかを論じさせていただきたい
■オーナーは高齢、不動産会社は若いもん
最近、ニュースや新聞などで「Z世代」という言葉を見聞きする。
いつの時代も人生のベテランであるオーナーと、若い不動産会社の社員では、「世代の差」「年齢による壁」が存在する。実際、オーナーに限らず、ベテラン社会人は、新入社員のことをまるで異邦人のように「最近の若いもんが考えてる事はよーわからん」と揶揄するものである。
ある時は「太陽族」とか、またある時は「新人類」とか、最近では「これだからゆとり世代はダメだ」などと、いつの時代の世代ギャップは存在する。
しかし、今年の新入社員、あるいは若手は、「生まれた時からインターネットがあった」世代。一方でオーナーは高齢者が多く、「ネットなんて最近のもの」と、大きなギャップが存在する。
■生まれた時からインターネットがあったZ世代
• インターネットの開発は1980年代
• 商用インターネット1990年代
• 楽天1997年スタート2000年6000店舗
• リクナビやSUUMOの前身のサービスは1996年スタート
• 1990年代携帯電話が普及 2000年Amazon日本語版スタート
こんな歴史であり、もしかすると、この記事を読んでいるオーナーにとっては「最近の事」かもしれない。
しかし、例えば今年の不動産会社の新入社員は、2000年以降の生まれとなり、生まれた時からインターネットが普及していた世代である。小学校入学前にYouTubeがスタートし、iPhoneが発売され、小学校4年生ぐらいですでにLineが普及。以来、中学・高校ではLineを使っていた世代である。
■SNSによる「短文」コミュニケーション
今年の新入社員は敬語が苦手である。これには、ふたつの理由がある。前述したように、Lineでのコミュニケーションを主としいたという、デジタルネイティブの世代ならではという理由がひとつあるのと、新型コロナ感染拡大で、年齢差の高い人と接する機会にあまり恵まれなかったという事が原因となっているのだ。
オーナーの中にも「Lineぐらい使っているよ」という人もいるかもしれない。しかし、このZ世代は、なにしろ小中学生というタイミングから使っているので、Lineでの文章がかなり短文なのだ。
例えば、オーナーが「〇〇をしてほしい」と依頼すれば、正しい応答の日本語は「かしこまりました」である。こうしたケースでは「了解しました」はマナー講座では「不適切な表現」として私も新入社員研修では伝えている。
しかし、「了解しました」どころではなく、彼らの世代は、普段「了解」「りょ」「り」などとかなり短い文章でやり取りをしている。もちろん、「了解している」ことを示す「スタンプ」と言われるイラストで「OK」と返すこともあれば「了解道中膝栗毛」と返している人もいる。もはや、ベテラン世代には暗号である。
■敬語を使う機会に恵まれなかったZ世代
また、今年の大卒新入社員は、高校三年生の冬、ちょうどクルーズで感染がまん延し、卒業式が延期となり冬休みに突入し、進学した大学の入学式が急遽中止となり、授業がオンラインになったという世代。
入学早々、最初の緊急事態宣言が出され、部活もバイトも禁止。当然、「自分より年齢の離れた社会の人と接したことがない」というキャンパスライフで、オンライン授業を強いられたのだ。
当然、アルバイトで先輩から教わるということにも慣れていないし、部活でコーチや監督から叱咤激励されることもなかった。
時代もパワハラ防止法ができ、これまで美徳とされたスポコンアニメなどは影を潜め、ニュースも体罰やしごきなどには、かなり厳しいトーンで接するようになっていた。敬語の使い方だけでなく、ストレス耐性は弱い傾向があるのは仕方がないのである。
■このZ世代への威圧的なコミュニケーションは逆効果
時代は、社内のパワハラだけでなく、顧客からの激しい罵声や長時間の苦情などに対しても逆風である。
なにしろ、Z世代新入社員の25.2%が、「職場で怒られたことがない」そうだ。
新人はいつの時代でも失敗はするものであるが、「怒られる」ことに慣れていないこの世代は「怒られると辞めてしまう」という世代でもあり、社内でも強く言えないのだ。
となると、威圧的に怒ればなんとか空室を埋めてくれる、という時代はこれから先、「そういうやり方は昭和のやり方で、ちっとも埋まらない」という事になるかもしれない。
■そもそも物件が決まるかどうかは、魅力があるかどうか
そもそも、この連載で申し上げているが、立地や築年はそう簡単に変えられない中、いかに「なんとか埋めろ」と怒鳴ったところで、そう簡単には埋まらない。
これから先も、人口減少は続くのは間違いなく、「設備強化」や「リノベーション」などで、物件の競争力をあげていくのが本筋なのだ。
年の離れた世代が、管理や仲介の実務をするようになると、オーナーとしては、強い姿勢でパートナーマネジメントしてしまうかもしれない。
しかし、それは「あのオーナーは苦手だな」と、仮に正論を言っても、Z世代には響かない。むしろ、入居希望者の世代に近い彼ら世代が、どんな設備に魅力を感じ、オーナーが使っていないかもしれない、ネットや宅配ボックス、あるいは防犯設備など、「生まれてから体験してきた、人気の部屋」を相談しながら、若い世代と一緒に空室対策を進めていくべきなのだ。
若い社員を褒めて伸ばしながら、自分の物件のファンになり、ひいては自分というオーナーを支えるファンとして、良好な関係性を育む。
そんな接し方に、切り替えていく時代がやってきているのだ。
執筆:
(うえののりゆき)