一都三県を中心に約3000戸を管理する株式会社日本システム管理が、2023年9月に不動産テックを駆使した管理業を手がける株式会社日本管理サービスを設立。2024年1月から、報酬をもらいながら賃貸経営に関するノウハウを学べる「大家育成ビジネス」を開始した。
同社は1982年1月に設立し、不動産管理に関しては40年以上の知識とノウハウを持っている。新会社では、主に同社の管理物件の敷地内清掃を登録スタッフに独自のシステムで募集・依頼。受託した登録スタッフは作業代を都度受け取ることができる。
敷地内の掃除の他には、植栽剪定やゴミ置き場の掃除、高圧洗浄機を使用した外壁洗浄などの依頼もある。現在登録しているスタッフは40人に上る。
ただ掃除を依頼するだけではなく、不動産投資を始めるにあたって選ぶべき物件選びのサポートなど、同社が持つ不動産に関する知識やノウハウを登録スタッフへ共有していく教育分野にも力を入れる。
雇用関係を結ばない単発・短時間の働き方である「ギグワーク」というビジネスモデルが不動産管理業界でも広まってきており、今回のサービスも同様のもの。登録スタッフを「賃貸経営・不動産投資について学びたい人」を中心としていることが特徴だ。
同社が登録スタッフへ提供するのは、40年に渡り蓄積してきたクレームデータなども含まれる。
クレームが多いアパートやマンションは築年数や住んでいる人が変化してもある程度傾向が決まっているといい、立地や建物にどういった欠陥があるのかが見えてくるという。このように、ネットや書籍だけではなかなか見つけられない知識を学ぶことができる。
普段は管理物件の掃除などが中心ではあるものの、登録スタッフは同社が必要とする技術を持っていれば同社から別の仕事を受託することもできる。3年分に当たる8000件のクレームデータの分析を150万円で受託した投資家もいるという。
知識を持たない不動産投資家に理論武装を
なぜ今回のようなサービスを開始したのか。
代表の高岡裕社長は、「不動産管理業は大家業と同等以上の知識が必要です。大家になりたい投資家にとって役立つ経験であることが一つの理由ですが、実はもう一つあります。
不動産投資は、知識を持たない投資家をカモにする業者が多い。そうした被害に遭って不動産投資から離れていく人を何人も見てきたし、理論武装の方法を伝えることでそういう人たちを無くしていきたいのです」と理由を話す。
実際、不動産管理会社を経営する父親の息子として、不動産業界から離れられない人生を送ってきた高岡社長。そんな彼ですらも、他の悪質な不動産会社から騙された経験を持つ。
「既に海外向けの販売や買い手が決まっているという伊豆の温泉施設があり、海外向けのやりとりに不安があるという売り手から購入しましたが、実際は家賃を滞納中のテナントが入居中のボロ物件で、いるはずの買い手も実際にはいないというものでした。完全に、面倒なことをなすりつけられた形になりました」(高岡社長)。
トラブルとなった物件は4年保有したものの、滞納問題の解消や物件のリフォームなどを行い無事売却した。そんな4年間が、高岡社長の「不動産関連で困っている人をなくしたい」という思いをより強くしたのだという。
日本システム管理は元々、社会貢献を軸にした取り組みに積極的だ。例えば、東京で就学したい学生向けに管理物件を無料で貸し出す給付型奨学金賃貸「就学ハウス」を開始。
入居した学生が物件管理やメンテナンスを行うというもので、ビジネスモデルとして特許を取得した。同ビジネスモデルを通して夢を叶えた学生から感謝の声が寄せられているという。
一緒に賃貸不動産経営を楽しんでほしい。みんなが面白いと思える場を作っていきたい。そんなサービス精神旺盛な高岡社長は、グループ会社でYoutubeチャンネル「日本管理サービス ゆーちゅー部」を開設。不動産D Xや成功したリフォーム・リノベーションの紹介など有益な情報を発信しているそうだ。
取材・文:
(つちだえり)