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定期借家物件は普及するのか、賃貸に占める割合は未だに低水準。普及しない理由は入居者にあるのか、不動産会社にあるのか。

不動産投資全般/市況 ニュース

2023/08/08 配信

定期借家契約で入居する定期借家物件は普及するのか。一般的な普通借家契約と違い、入居契約するときに入居期間を契約で定めて、その期間が終了すれば原則、入居者は物件から退去しなければならない。

普通借家の場合は、一般的に2年ごとの更新で、その更新さえすれば希望する限り住み続けることができる。入居者にとっては、使い勝手の悪さから敬遠されがちだとされるが、普通借家に比べて家賃が安くなる傾向がある。

アットホーム定期借家
アットホームのニュースリリースより。

ただアットホームの調査では、定期借家マンションの募集家賃が上昇傾向にあり、特にシングル向けとファミリー向けで募集家賃の上昇率が高い。

首都圏を見ると、神奈川県のシングル向けと大型ファミリー向け、千葉県のシングル向けとカップル向けを除いたエリアは前年度比で上昇傾向を示している。

とりわけ埼玉県では、ファミリータイプが12.2%と二桁の上昇率を示しており、大型ファミリーも9.1%上昇している。東京都下でもファミリータイプが9.9%上昇している。郊外部での特徴と思いきや、東京23区でもカップル向けが7.5%の上昇率を示した。

賃貸マンションに占める定期借家物件の割合は、どのエリアも6.0%以下であり、前年度との比較であまり変わっていないが、東京23区の大型ファミリー向けは27.8%と2年連続でシェアを拡大した。東京都下(16.0%)や神奈川県(18.4%)、埼玉県(8.9%)、千葉県(10.2%)でも大型ファミリーの割合が他のタイプを大きく引き離して高いのが特徴だ。

単純に察すれば、単身者やディンクスは定期借家を敬遠し、子どもを持つ家族世帯は定期借家でも構わないと思っていることと、子どものいる家族世帯は、子どもの学校のことなど考えれば退去を迫られる定期借家を嫌うはずなので、分譲マンションを購入するまでの腰掛的な需要を吸収していると思われる。

築古は建て替え推進のために定借導入傾向

アパートの状況を見ても、首都圏での平均募集家賃は概ね前年度比で上昇している。面積帯別ではファミリー向けが全エリアで上昇しており、特に千葉県では10.6%と二桁の上昇率だった。

普通借家との比較では、東京23区・東京都下で広い面積帯ほど定期借家の家賃が高い。ただ、賃貸アパートに占める定期借家物件の割合で見ると、シングル向けが他のタイプよりも高い傾向が続いている。

この点について同社では、シングル向けアパートは築古物件が多いことに注目する。平均の募集家賃が普通借家よりも低かった東京23区や東京都下、千葉県では、築30年を超える物件の割合が突出している。

アパートの税法上の耐用年数が20~30年であることを考えれば、耐用年数を超える築年は減価償却がなくなることで建替えを検討する賃貸オーナーが増えることで定期借家契約に切り替えることが要因だと想定する。

普通借家ならば、建て替えで退去してもらうのに立退料が発生してしまうが、定期借家ならばその出費はない。

このように定期借家が普及するかどうかは、消費者の意向よりもオーナーの意向によるものであることが分かる。もっと言えば、オーナーが定期借家のメリットが普通借家よりも大きいと感じることができれば定期借家が普及するということだ。

不動産会社の意識変革が追いつかず

最近は、定期借家を積極的にオーナーに働きかけている不動産会社が増えている。都内のある賃貸仲介・管理を手掛ける会社では、

「新築のマンション・アパートを建てたのに家賃が滞る、他の入居者に迷惑をかけてクレームが絶えない、といった無用なトラブルは回避したいところです。その手段に定期借家の導入を提案しています」

と述べて、前述のような築古物件を建て替えるといったイベントを完遂するための手段だけでない使い方を紹介する。とはいえ、一気に定期借家にすることは難しいため、入居者の普通借家契約の更新時期に徐々に提案しているという。定期借家には終了型と再契約型の2種類がある。

ただ、定期借家の普及のネックになりかねないのが家賃水準だ。普通借家と同じように、もしくはそれ以上の家賃を徴収できるかだ。アットホームの調査によれば、募集家賃は上昇傾向にあるが、実際の成約賃料が本当に数字ほどに上昇しているのかは判断できない。

定期借家で新築物件を建てた都内の地主A氏は、「利回りとしては普通借家であっても定期借家でそんなに変わらない。定期借家だと普通借家より相場を安くしないと入居者が付かないとされるが、いまはそうではない。

普通借家に取って代われる再契約型がある。入居者に問題がなければ、再契約型で定期借家を導入すれば家賃を下げなくても済む」と話す。

一方で、再契約型に伴う更新手続きは、重要事項説明をもう一度する必要があるなど普通借家よりも手間だと考える不動産会社もいるが、「以前は対面で重要事項説明をしなければならず人件費もかかったが、今ではIT重説で済む。

ただ、再契約に伴う手数料がもらえないと消極的になる不動産会社がいるのも事実だ」ともA氏は指摘する。定期借家が普及するかどうかは、オーナーの意向と並んで不動産会社の意識も大きい側面がうかがえる。

不動産会社の取り組みと入居者の理解が進むことが定期借家の普及に大きく影響する。

健美家編集部(協力:若松信利(わかまつのぶとし))

■ 主な経歴

学生時代から不動産に興味を持ち個人的に不動産関連の記事を多数執筆。大学卒業後、不動産関係情報誌に20年以上勤務。現在は都内のIT会社に勤め、副業でいくつか投資関連の記事を担当・執筆する40代サラリーマン。

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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