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総戸数490戸→844戸に。23区内有数規模の石神井公園団地、検討から十数年を経て建替え完了

不動産投資全般/区分マンション建替え ニュース

2024/01/08 配信

東京都練馬区にある23区内でも有数の規模を誇る石神井公園団地の建替えが終了、2023年11月24日にまちびらきイベントが開催された。

建替え決議が行われた2019年時点で築52年。日本の住宅団地の中には同じくらいの築年の物件も多く、今後の動向を考える上でも石神井公園団地の状況を見ておきたい。

いざなぎ景気時に建てられた大規模団地

旧石神井公園団地外観
旧石神井公園団地外観(写真提供/東京建物。以下建物関係は同じ)

石神井公園団地は1967(昭和42)年、前回の東京五輪後(1964年)のいざなぎ景気と呼ばれる景気の良い時代に建設された総戸数490戸と23区内でも有数の規模の団地。

石神井公園駅。駅周辺でも再開発の予定などがあり、すでにタワーマンションも建っている
石神井公園駅。駅周辺でも再開発の予定などがあり、すでにタワーマンションも建っている

最寄り駅石神井公園駅は池袋駅まで10数分(現在。準急などを利用すれば10分強という時間帯もある)で、近くには武蔵野の面影を残す広大な東京都立石神井公園がある。

同公園は都心部にほとんど公園という存在が無かった頃から三宝寺池を中心に郊外の行楽地としてつつじ園、茶屋、料亭などが作られ、多くの文士、芸術家が訪れたり、居住したりした場所だった。

昭和の早い時期には三宝寺池からの三宝寺川をせきとめて石神井池(ボート池)が作られ、池の周辺の斜面地は練馬区内では有数のお屋敷街として発展していくことになる。同時期には三宝寺池沼沢植物群落が天然記念物の指定を受ける。

練馬区周辺では有名なステイタス感ある立地

ただし、石神井公園自体が公園として開園するのは1959年になってから。室町時代に石神井郷を領有した豊島氏の城があった地で、毎年4月には練馬区の2大まつりである照姫まつり(太田道灌に攻められて豊島氏が滅亡した際、父と共に三宝寺池に身を投げたとする娘の名にちなんだもの)が開催されている。

石神井池脇の道。この通り沿いエリアは練馬区内ではかなりお高いエリアになる
石神井池脇の道。この通り沿いエリアは練馬区内ではかなりお高いエリアになる

石神井公園近くには練馬区立池淵史跡公園、石神井公園ふるさと文化館、石神井プール、石神井図書館などがあり、練馬区周辺の人であれば非常に認知の高い、ある意味、ステイタスを感じる一画と言っても良い。

駅から徒歩よりバス便が便利

石神井公園団地はその石神井公園から北へ行った、石神井川沿いにあり、歩くとなると石神井公園の石神井池をぐるっと回ることになり、棟にもよるが20分強はかかる。そのため、物件から歩いて数分ほどのバス停からバス利用が現実的な選択。所要時間は9分ほどで、朝7~9時台であれば1時間に7~9本は運行されている。

あるいはバスで北へ向かい、中央線荻窪駅へ出るという選択もあり、その場合には所要時間は約26分ほど。本数は朝7~9時台で1時間7本。同様にバスを利用すれば西武新宿線の急行停車駅である上石神井に出るという手もある。

首都圏で住宅購入となると鉄道駅を中心に考える人が多いが、そうではなく、バス便で考えて便利な立地というわけである。

ちなみに筆者は長らくこの地域近くに居住していたため、土地勘があり、地元に知り合いも少なくない。地元では上石神井駅利用はかなり多く、ついで石神井公園駅、荻窪駅となると10人に1人くらい。バス便は慣れてしまえば多少混んでも鉄道ほどではなく、時間帯によっては座れることもあって意外に楽なのである。

2007年から10年以上かけて建替えを検討

さて、そこで建替えである。建替え事業で事業協力者および参加組合員として参加した東京建物のプレスリリースによると団地の管理組合が建替え・修繕検討委員会を設置したのは2007年。

老朽化が進んだ建物の場合、まずは老朽化の程度、所有者の不満やニーズ等を把握、それをどう改善するかからスタート、実際の手段として建替えなのか、修繕・改修なのかを検討していうことになるが、それが始まったのがそのくらいということだろう。

同物件の場合には10年以上にわたって勉強と検討を重ねて、2019年に団地の建替えを決める一括建替え決議が可決されている。

かなり時間がかかったわけだが、総戸数が490戸あることを考えると逆によくまとまったともいえる。建て替えに当たっては区分所有者および議決権の各5分の4以上の賛成が必要だからである。

まちびらきで開かれたトークイベント。これまで同様、新しいマンションでもコミュニティを大事にしていきたいという
まちびらきで開かれたトークイベント。これまで同様、新しいマンションでもコミュニティを大事にしていきたいという

11月の街びらきではこうした経緯が語られたが、そこでこの決議が可能になった背景も語られた。同団地では1985年から夏祭りが行われてくるなどコミュニティが形成されてきており、それが5分の4以上の賛成を集めたと思われるのである。

建替え後は当初490戸が844戸になっており、そのうち、販売戸数は543戸。つまり、建替え後の住宅を取得した人が300世帯以上いる計算である。割合にすると60%ちょっと。このところ、建替え後に従前の住民が戻ってくる平均的な割合が60%ほどということなのでほぼ平均的というところだろう。

容積率を残して余裕の配棟計画

外観。階数が増えた分、戸数は増えたが、全体にゆとりのある印象はさほど変わっていない
外観。階数が増えた分、戸数は増えたが、全体にゆとりのある印象はさほど変わっていない

さて、建替え後だが、8階建ての8棟構成で全戸が南向きで住棟間にも余裕がある印象。駐車場も平置きである。これは容積率200%のことろを160%ほどまでに抑え、容積率を残して建ててあるため。建てる側とするともっと建てたかったのかもしれないが、従前の所有者たちが余裕のある配棟を望んだと聞いた。

スタディルーム。最近では仕事場、勉強する場所として使えるこうした空間のあるマンションをよくみかける
スタディルーム。最近では仕事場、勉強する場所として使えるこうした空間のあるマンションをよくみかける

同様に規模が多いため、ラウンジやキッズルーム、パーティールーム、スタディルーム、和洋2つのテイストのゲストルーム、マルチスタジオなどの共用部があり、近くに商業施設が多くないことから見にスーパーも用意されている。

加えてカーシェアリング、シェアサイクルなども用意されており、便利そうである。ただ、その一方で駅から距離があることからニーズの高そうな駐車場、駐輪場は多少足りないようにも見受けられる。

石神井川沿いには並木もあり、魅力的な空間になっている
石神井川沿いには並木もあり、魅力的な空間になっている

ただ、駅近くの物件と異なり、住環境は魅力的で、かつ価格も駅近い物件に比べるとかなり手頃な印象でもある。初めての住宅購入を考える人には魅力的に見えたのではなかろうか。

環境と利便性、どちらを選ぶか

ひとつ、この物件で注目したいのは最寄り駅からの距離と住環境で、かつてなら距離つまり利便性を最優先していたかもしれない人達がここを購入しているという点。

まちびらきのトークイベントで紹介された購入者像
まちびらきのトークイベントで紹介された購入者像

まちびらきのイベントでは購入者の年齢層、家族人数、従前の居住地などのデータが紹介されたのだが、年齢層では30代を中心に70代まで。家族人数では3人世帯を中心に1人から5人までと多様。地域では練馬区が37%と多いものの、23区内、都市部その他と広範な地域から人が集まってきていた。また、4LDKは早い時期で完売したとも聞いた。

つまり、コロナ前には利便性ばかりが語られていたが、コロナ禍をきっかけに住環境に目を向ける人が増え、それに向けてきちんとバス便のメリットなどが語られれば、ちゃんと売れるということである。

練馬区以外でもバス便利用が便利な場所は他にもたくさんある。これまでは不人気と決めつけられていたが、それを上回る魅力がその場所にあれば必ずしもそうでもないのかもしれない。

健美家編集部(協力:中川寛子(なかがわひろこ))

中川寛子

株式会社東京情報堂

■ 主な経歴

住まいと街の解説者。40年近く不動産を中心にした編集業務に携わり、近年は地盤、行政サービス、空き家、まちづくり、地方創生その他まちをテーマにした取材、原稿が多い。
宅地建物取引士、行政書士有資格者。日本地理学会、日本地形学連合、東京スリバチ学会会員。

■ 主な著書

  • 「ど素人が始める不動産投資の本」(翔泳社)
  • 「この街に住んではいけない」(マガジンハウス)
  • 「解決!空き家問題」「東京格差 浮かぶ街、沈む街」(ちくま新書)
  • 「空き家再生でみんなが稼げる地元をつくる がもよんモデルの秘密」(学芸出版)など。

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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