2024年4月1日からスタートした相続登記の義務化。相続に伴って発生した不動産の名義変更手続きが「義務化」される制度で、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に名義変更をしないと10万円の過料を課せられる。すべての不動産が対象になるため、投資家も収益物件などの相続に備えて知っておきたい。
そこで今回は相続登記の方法についてフォーカスする。手続きをするにあたり注意したいポイントや、ネットで相続登記ができるサービスなど専門家の解説を交えて紹介する。
相続登記をしないと売買ができず、融資を受けられない場合も。
3月14日に「全国空き家対策コンソーシアム」主催の「すまいの終活フェスティバル」が行われ、空き家対策に関連したセミナーが開催された。
そのなかで興味深かったのが、ネットで相続登記できるサービス「そうぞくドットコム」を展開する株式会社AGE technologies代表取締役CEO塩原 優太氏と司法書士法人グラティアス代表/そうぞくドットコム プロダクトアドバイザーの呉村成信氏による相続登記義務化の制度のポイントや注意点を解説するセミナーだ。そのなかで覚えておきたいポイントをピックアップして紹介する。
まずは相続登記にはある程度「時間を要する」ことを覚えておきたい。相続人が複数いる場合など、合意形成のために3~4ケ月、もしくはそれ以上時間を要する可能性もあり、時間に余裕をもって行う必要がある。
相続登記をしなければ不動産の売買の際など「後々大変なことになる」可能性もあるそうだ。
「登記が完了しないと第三者に対して権利を主張することができず、不動産の名義が故人のままであれば売却したり融資の際に担保に入れたりすることができません。
また相続人間で合意のもと、誰か一人が不動産を相続したケースで、口頭合意のみで登記を行なっていなかったとすると、数年後に他の相続人が自分の法定相続分のみを売却した場合、その分を取り返せなくなることがあります」(塩原氏)
ほかにも登記をしなかったケースで、後々、相続した家に移り住むことになり、リフォームしようとしたが、金融機関から名義が書き換わっていないために融資が受けられなかったケースもある。
「相続登記は放置すればするほど手続きは複雑になります。もともと2名の相続人だったところ、その一人が亡くなると、次の世代にどんどんその権利が移り、気づいたら相続人が何十人と増えることもあります。
また相続人が認知症になれば遺産分割協議できず、家庭裁判所で成年後見人の手続きが必要になるなど、話し合いに時間がかかることになります」(塩原氏)
上記のようにならないように、相続発生時に必ず相続登記を行いたいものである。
では実際に相続登記をする際の「方法」であるが、主に次の3つがある。
1自分で手続きをする
2専門家(司法書士)に依頼する
3インターネットサービスを利用する
2の専門家に依頼する場合、金額は内容や依頼先により異なる。1の自分で行う場合は、他社に依頼するコストを抑えることができるが、いずれにしても「登録免許税」がかかることになる。
「登録免許税は不動産の課税価格×0.4%で計算します。固定資産税の課税明細書に評価額の記載があるはずですのでそれを元に概算できます。たとえば3000万の評価であれば登録免許税は12万。0.4%とそこまで大きくはないものの、自分で登記をするにしても登録免許税の支払いが必要になるということは把握しておきましょう。」(呉村氏)
税務署から納付書が届くわけでなく、申請書に収入印紙を貼って納付することになる。では相続登記を自分で行うか、専門家に任すかの判断基準はあるだろうか?
「土地や建物の所有権の移転という失敗が許されない専門的な手続きになるので、専門家に依頼するのが望ましいでしょう。特に複雑なケースや数代にわたって相続していたり、相続人が何人もいたりする場合は、必ず専門家を頼りにすべきです。
逆にシンプルなケースで相続人が数名、家族間での合意も済んでいるというケースであればインターネットサービスの利用も良いでしょう。
また日中に十分な時間があり、役所に行くことが物理的にも困難でない場合は、役所で相談しながら自分でやってみるのも選択肢の1つです。とにかく“登記手続きを放置しないこと”が何よりも重要です。」(呉村氏)
たとえば3のネットサービス「そうぞくドットコム」ではネットで相続登記ができ、役所に出向く必要がなく、一律8万5000円(税込み9万3500円)で土地、建物、マンション、山林や田畑などすべての不動産に対応している。
相続登記の義務化の影響大。新たなサービスへの関心高まる
そうぞくドットコムは2020年1月のサービス開始以来、2024年1月1月までで利用件数は30万件を突破している。4月開始の相続登記の義務化に合わせて、問い合わせが増えており、制度への関心の高さを感じていると塩原氏はいう。
「相続人が複数いる場合など、合意形成のために、ネットサービスだけでは相続登記ができない場合や、対面で専門家に相談したいといったニーズも多くいただきます。その場合にはそうぞくドットコムでは、相続に強い専門家の紹介も行っています。」(塩原氏)
忙しい人や、煩雑な手続きが予測される場合は、専門家や専門的なサービスを活用するのもいいのではないか。相続登記の義務化に合わせて、こうした便利なサービスが広がっていることも覚えておきたいものである。