今年9月、新潟市の旧中心市街地の三越が撤退した跡地に、新潟最大のランドマークタワーを建設する都市計画が決定した。
新潟市は、近年、新潟駅の再開発が著しいが、信濃川を超えた旧中心市街地は大手百貨店の撤退後どうなるのか。
新潟市都心部の再開発計画「にいがた2キロの覚醒」の取り組みを追った。
■ 新潟市・港町のシンボル古町にランドマークタワー建設決定
令和5年9月、新潟市中央区の旧三越跡地の再開発で、新潟最大のランドマークタワー建設の計画が決定、公表された。
新潟駅前の再開発が著しい近年の新潟市だが、旧中心市街地の古町地区の再開発が課題となっていた。今回の三越跡地の再開発は、再開発の最大の目玉となる見込みだ。
古町地区は、新潟島の中心部にあたり、かつて新潟港の港町として栄えた地区だ。現在でも、市役所の本庁舎や新潟地方裁判所、新潟大学医学部病院などの行政関連機関が置かれ、大型商店街が碁盤の目のように点在する。
裏道の路地には、江戸時代から続く古町花街の老舗料亭も営業しており、その当時の面影を残す建築物や花街文化は文化財としての価値も高い。
令和2年には古町地区将来ビジョンが策定されているが、このような港町文化の価値を継承するとともに、ポップカルチャーやアートなどの新たな文化交流の舞台にもしていくことを目指すとしている。
同じ年には、かつて古町地区の2大百貨店であった、大和跡地に、地上12階建ての複合ビル「古町ルフル」が竣工し、再開発がようやく端緒についた。
今回、もう1つの三越跡地に、西堀通5番町地区市街地再開発事業として、新潟最大のランドマークタワーが建設されることとなった。
再開発準備組合が主体となり、東京建物および地元企業の廣瀬が参画し進める計画では、37階建て高さ150メートル、350戸のレジデンスを抱える、まさしくランドマークにふさわしいタワーの建設が予定されている。
■ 新潟市都心まちづくり「にいがた2キロの覚醒」の行方に注目
新潟市では、平成30年に新たな都心軸の考え方を、「にいがた2キロ」のエリアに絞るとした。それは、新潟駅・万代地区周辺、万代島地区、そして古町地区の3つのエリアである。
令和元年に、まず万代島地区の将来ビジョンが策定された。万代島地区は、信濃川の河口部に位置しており、新潟港の水揚げ基地である。
平成15年に国際コンベンションセンター「朱鷺メッセ」、また、平成22年には「市民市場・ピアBandai」がオープンし、万代島地区は、近年再開発が継続してなされて来た地域である。
ビジョンでは、万代島へのアクセス機能の強化を中心に取り組みの方向性が策定された。バスルートや水上バスを延伸し、長期的にはLRTやモノレールの設置も予定している。
令和4年には、新潟市都心のまちづくり施策「にいがた2キロの覚醒」が策定された。それによると、みなとまち新潟を象徴する信濃川と萬代橋から広がるエリアに高次都市機能を集積させ、ヒト・モノ・情報が行き交う稼げる都心にしていくという。そして、他の8区の魅力・強みとコラボレーションさせ新たな価値を創造するという。
新潟市の他の8区の魅力・強みは、稲作を中心とした農業と、田園をはじめ、信濃川や潟湖、日本海などの自然景観が都心機能に隣接していることだ。商業と農業・観光業の接続が容易であり、互いの融合作用も期待できるということだろう。
そして、今年、令和5年になって玄関口である、新潟駅・万代地区の将来ビジョンが策定され、ようやく「にいがた2キロ」の全貌が見えてきた。
新潟駅・万代地区は、新潟駅から信濃川に架かる萬代橋までのエリアであるが、ビジョンのキーワードは、「2核・水辺・3モール」である。2核とは、新潟駅と商業エリアの万代地区であり、3モールとは、新潟駅万代口から信濃川までの3つの軸となるルートを指す。新潟駅正面から伸びる中央通りを挟んで、右手が万代島方面の花園ルート、左手が万代地区へとつながる弁天ルートである。
これらは、新潟港開港後150年かけて形成されて来た不動の軸であるという。これらの軸を意識して、10のストリートを歩行者向けの回遊空間に再構築していく計画だ。
信濃川河口の各種施設がある万代島方面と、商業施設がある万代地区に歩いても向かうことができるルートを確保することが意識されている。
万代地区は、新潟伊勢丹、万代シティビルボードプレイス、ラブラ万代などの商業施設が立ち並ぶだけでなく、信濃川を渡ればその先の古町地区へとつながる中継地点となる。
新潟駅・万代地区が、この3つの軸となるルートを中心に整備されることで、信濃川の先の古町地区の再生にもつながるだろう。港町新潟が、150年の歴史を生かしながら再生していく未来が目に見えるようで楽しみである。