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空き家活用で長屋の街が変貌。墨田区京島のこれからが楽しみな理由

都市計画・再開発(地域情報)/東京 ニュース

2021/04/23 配信

墨田区京島という街をご存じだろうか。最寄り駅は東武線、京成線が交わる曳舟(京成線は京成曳舟)駅からは数分程度離れており、1923年の関東大震災を契機に急激に宅地化が進んだエリアである。

宅地化以前の地図を見ると田んぼと養魚場が大半を占めており、そこに被災した下町エリアの人たちが家を求めてやってきた。

以前よりは減ったとはいえ、少し歩くといくつもの長屋に遭遇する
以前よりは減ったとはいえ、少し歩くといくつもの長屋に遭遇する

そこに家を建てたのが「越後三人男」と呼ばれる新潟からやってきた大工集団である。土地を仕込んでは木造の賃貸住宅を作り、それを貸したらまた土地を仕入れて家を建てを繰り返して京島を木造の長屋の街に変えたのである。

大震災後の建物が多く残る、2つの理由

その当時の築90年前後の建物が京島には多く残されている。それには2つの要因がある。ひとつは下町エリアとしては奇跡的に戦災を免れたこと。

もうひとつは権利関係の複雑さ。現在残されている長屋の場合、借地権となっているものが多く、土地と建物の所有者が別。しかも、古い借地借家法下では借家人の立場は非常に強い。土地所有者が土地の売却、建物の更新や開発を進めたくても、何もできないまま、時間が過ぎ、その結果、昭和の風景が残されることになったのである。

魅力的な風景には防災の懸念も

人が一人通るほどの細さの路地などを見かけることもあり、防災上は長らく問題とされてきた
人が一人通るほどの細さの路地などを見かけることもあり、防災上は長らく問題とされてきた
ところどころに今後、不燃化のために活用する土地という表記を見かけることも
ところどころに今後、不燃化のために活用する土地という表記を見かけることも

風情としては路地も長屋も魅力的ではあるが、問題もある。防災である。

京島は古い木造住宅が残されているだけではなく、往時の路地が多く残されており、それが防災上に多大な懸念のある地域と評価されているのだ。東京都が約5年に一度出している地震に関する地域危険度測定調査ではいつも危険度が高いとされている。

駅前にはタワーマンションが建ち並び、大型商業施設も。かつての銭湯、居酒屋の街は姿を消した
駅前にはタワーマンションが建ち並び、大型商業施設も。かつての銭湯、居酒屋の街は姿を消した
押上のすぐ隣のまちでもあり、スカイツリーはどこからでもよく見える。近年、工事現場が増えてきている
押上のすぐ隣のまちでもあり、スカイツリーはどこからでもよく見える。近年、工事現場が増えてきている

とはいえ、年々、改善はされており、特に曳舟駅周辺での2001年の都市計画決定に始まる10年をかけた市街地再開発で駅前が一変したことから、その影響は京島エリアにも及び始めている。長屋を取り壊し、建売住宅、共同住宅などになる例が増えているのである。

アートによる街づくりという独自性

カフェ、ゲストハウスとして利用されている長屋。通り沿いにあり、人目につく建物
カフェ、ゲストハウスとして利用されている長屋。通り沿いにあり、人目につく建物

ただ、京島が面白いのはそこではない。京島には駅前再開発とは全く別の形でここ20年以上、建築や都市計画、アートの関係者が街に関わり続けているのだ。発端となったのは1998年の「向島国際デザインワークショップ」。それから延々と空き家のリノベーション、アーティストの移住、イベントの開催などが続けられてきた。

イベントでも利用されていた長屋。その時点では空室が目立ったが、EXPO後に利用が決まった
こちらも通り沿いの空き家。様々な用途で利用されている

しかも、長い時間をかけた活動が功を奏し始めている。2018年に地元の名所だった30軒長屋(!)が取り壊されることになり、それに危機感を抱いた人たちが京島の長屋を考える82日間の連続イベントが行われた。

それを機に翌年には20年ぶりの「向島国際デザインワークショップ2019」が開催。さらに2021年秋には約1カ月間に渡って「すみだ向島EXPO2020」が行われ、コロナ禍下にあって700人弱が3300円(一般大人)の有料チケットを買って参加、関連イベントやワークショップに参加した人は約3000人に上った。そして、EXPO終了後、空き家の活用が一気に進んだのである。

アートイベントが空き家活用を促進

2008年春から京島で空き家再生などに関わる後藤大輝氏によれば「5軒空きのあった7軒長屋のうちの3軒がギャラリーやボードゲームカフェなどに活用されることになり、EXPO時に受付だった元米屋にはネパール料理店が開業予定。閉店したパン屋は新オーナーの手で実験オープン。ギャラリーなどに生まれ変わる空き家も2軒あります」とのこと。

開発が進む一方、まちの人たちは再開発ほど大きく街の風景を変えない、空き家利用による街の変化を選んだのである。

きらきら橘商店街の角にある建物は日替わり店長が経営するカフェ
きらきら橘商店街の角にある建物は日替わり店長が経営する

ここで活用が決まった以外でも京島では日替わりで店長が変わる飲食店や階下がカフェで2階を宿泊施設にした長屋、本棚を住宅の中心に配した個性的な宿などこれまでにも空き家が使われてきており、今後さらに増えるとするとかつて清澄白河などがブームになったように人気の街となっていくことも想像できる。すでに個性的な建築やDIYなどに関心のある人たちには注目されてもいる

空き家を潰して新しいスタイルの空き家に

ただ、趣があるとはいっても築90年オーバーの住宅のうちには老朽化が進み、更新せざるを得ないものもある。それを見越して後藤氏は新しい長屋の建設を検討しているという。

長屋は土地の高い地域で家賃を抑えて住むためのスタイルとして始まったが、都市で居住することを考えると実に合理的。かつコミュニティが見直されつつある現在であれば顔の見えるご近所さんのいる暮らしは安心でもある。元々下町でそうした付き合いのあった京島では馴染みのあるスタイルでもある。

「長屋を潰して長屋を作ることを考えています。住んで仕事ができて、子どもも育てられる。そんな新しい長屋に少しずつ変えていき、新しい生活、事業をスタートしやすい街にしていければと考えています」。

東日本大震災以降、少しずつ職住は遠く離れているより近いほうが安心という流れがあり、さらに近年は自宅で仕事をするという別の流れも加わり、職住近接、隣接、一体という暮らし方を考える人は確実に増えている。

となると、京島の動きが世の中を先取りしているという言い方もできよう。これからの動き、特に新しい長屋がどのようなスタイルになるかには注目したいところである。

健美家編集部(協力:中川寛子)

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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