先日、昨年末から進めていた話がまとまり、2物件を購入しました。融資を受けて購入したのですが、今のところサラリーマンを退職したことによる影響は出ておらず、まだ買い進めて行けそうだなと思っています。
購入した物件では、新たなチャレンジがありますので、整理が出来たらコラムに書きたいなと思います。
FIRE後は、どのように過ごしたら良いのか? を自問しながらやっているのですが、のんびりしたいというよりも、「毎日何かを積み上げて将来に活かしたいな」という気持ちが強いです。
今回は、積み上げの一環として気になっていた、アスベストについて勉強をしたことについて書きたいと思います。
■令和5年10月1日着工の工事から石綿に関する調査が必要に
築古物件を取り扱っていると、石綿(アスベスト)について耳にすることがあります。重要事項説明書では、「石綿使用の有無」について記載欄があるし、新築やリフォーム時には、「解体時に石綿があると解体費用がアップする」という話も聞きます。
建築のプロでもない私は、「石綿(アスベスト)ってそもそも何なんだろう?」と思いながら過ごして来ました。以下、厚生労働省からの案内です。
令和5年10月1日着工の工事から、建築物の解体等の作業を行うときは、「建築物石綿含有建材調査者」、又は令和5年9月30日までに日本アスベスト調査診断協会に登録された者による事前調査を行う必要があります。
参照:https://www.ishiwata.mhlw.go.jp/investigator/
事前調査の義務付け・報告というのは、不動産の仕事をしていく上で影響があるんじゃないか?という事で、理解を高める為に、「建築物石綿含有建材調査者」について勉強してきました。
※建築物石綿含有建材調査者講習についてはこちらからhttps://www.kensaibou.or.jp/seminar/branch064.html?page=1
※使用テキストはこちら
https://www.jisha.or.jp/order/tosho/index.php?mode=detail&goods_cd=23421
■石綿(アスベスト)とは何か
石綿とは、「いしわた」「せきめん」「アスベスト」と呼ばれる繊維状鉱物との事です。石綿の大きさは0.2㎛で、人の目には見えないサイズなので吸い込まないように注意する事は不可能です。
※アスベストとはギリシャ語で永遠不滅のという意味らしいです。
単体だと目で見えないのでわかりにくいですが、主には石綿をセメントなどの結合材などと混ぜ合わせて使用されているので、建築の現場では見分け方を知っていれば、「これが石綿だ」と見つけることができます。
■石綿の特性
石綿は安価な上に、以下のような特徴があります。
・耐火性・電気絶縁性(燃えにくい)(電気を通さない)
・耐熱性、耐候性、耐薬品性に優れる(薬品や熱に強く長持ちする)
・引っ張り強さ、耐摩耗性(切れにくく、摩耗しにくい)
つまり、材料特性に優れていたので、1970年代から1980年の時期の建築物に多く使われていました。建物の築年数でいうと築40年~築50年くらいでしょうか。ワタシもこのくらいの古さの物件を所有しています。
しかし、現在は石綿の使用は原則として禁止されています。なぜなら、有害性があるとわかったからです。
■石綿の有害性
<石綿肺>
石綿肺は大量に石綿を吸入することによって発症します。吹付け石綿の除去作業などで飛散するので不適切なマスクの着用であれば将来石綿肺を発症する危険性があるとの事です。石綿ばく露から10年以上の後に初期病変が現れるとの事です。
※ばく露(暴露)とは、化学物質がヒトや環境中の生物と接触することです。
<肺がん>
石綿のばく露量が多いほど肺がんのリスクは高くなるそうです。ちなみに、喫煙の肺がんリスクは石綿のおよそ2倍。石綿関連肺がんの大半は喫煙をやめる事によって防ぐことが出来るという話も聞きました。
他にも、中皮種(がん)等の石綿関連の疾患があります。石綿が体内に入ってすぐに体調不良になるのではなく、時限爆弾のように後から病状が悪くなるそうです。
※過去の石綿に関する健康被害問題
平成17年のクボタショック問題(アスベストを用いた建材を製造していた工場の周辺住民に石綿疾患が発生)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%9C%E3%82%BF%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%83%E3%82%AF
■法令の規制の推移
昭和50年:石綿5%超までが規制の対象となる
平成元年:石綿を「特定粉じん」と位置づけて石綿製品製造工場について規制を始める
平成7年:石綿1%超までが規制の対象となる
平成8年:吹付石綿(レベル1を指す)を適用対象とした規制
平成17年:クボタショック問題
平成17年:石綿含有断熱材、保温材及び耐火被覆材(レベル2を指す)が追加
平成18年:石綿0.1重量%超の製品の全面禁止(一部猶予措置あり)
令和2年:石綿成形板等(レベル3を指す)も適用対象とされた。
令和4年4月1日:事前調査の義務化
令和5年10月1日:事前調査は有資格者のみ行うことが可能になる
石綿に関連する法律は、ワタシが生まれる以前からあり、徐々に厳しくなっています。建材として作られていた時代では適法だったものが、現在はそうでないため、解体をする時には注意が必要です。
ちなみに以下のサイトで、石綿含有建材について調査ができます。
※石綿含有建材データーベース
https://asbestos-database.jp
■石綿含有建材の使用目的
建築物に使用される石綿は、その材料特性を活かして耐火・断熱・防音が必要なところに使われています。鉄骨の耐火被覆材、吸音・結露防止剤、内装材、外装材、屋根材、煙突材、煙突断熱用などにそれぞれ石綿含有建材として使用されてきました。
解体やリフォームする際は、耐火・断熱・防音の必要なところに特に注意をして調べることが必要になるかと思います。
■石綿含有建材のLV分け
石綿の危険性に応じてLV分けがされています。
※一般的な住宅にはほとんど使用されていない
LV2:LVよりも解体しやすい 配管などに巻き付けてある保温材等
LV3:一般的な木造住宅でも建築材料として使用されている 石綿を混ぜている内装材等に使われている。
ワタシが所有している、木造戸建ての場合はLV3の建材が使われている可能性があります。以下のサイトに実際に使われている部分の写真が載っているのでわかりやすかったです!
※国交省「目で見るアスベスト建材」https://www.mlit.go.jp/kisha/kisha08/01/010425_3/01.pdf
■事前調査の対象
平成18年9月から石綿をその重量の0.1%を超えて含有するすべての物の製造、使用が禁止されました。そのため、平成18年9月以降に施工された建物でそれを証明する事が出来れば事前調査が不要になりますが、それ以前の建物は対象となります。
■石綿含有建材調査者資格
石綿含有調査者の講習では、 上記のような基礎知識を学習した後に、事前調査の具体的な方法について学習をしていき、最後にテストを受けて合格をすると「石綿含有建材調査者資格」を得る事ができます。
調査者の仕事としては、「事前計画を立てる→現地調査→分析用の試料採取→分析機関に依頼→事前調査結果報告書の作成」となるかと思います。
正直、調査者の資格を得る事は難しくありませんが、実際に石綿含有について見分ける技術がなければ意味がありません。そして、現場経験がない人がこの能力を身につけるのは困難だと思いました。
■まとめ
今回、石綿について勉強をした目的は、そもそも石綿はどういったところに使われているのか?購入を検討する物件について判断する材料にしたかったからです。
また、今後、リフォームや解体を行っていく際にどのような申請が必要になるのかについても、コスト面も含めて知る必要があると思いました。実際に、大まかではありますが、今回の勉強をしたことで、コストアップの目安が分かりました。
今年の10月から100万円以上のリフォーム、解体では事前調査の報告が義務付けられるということなので、どんな影響があるのか注視していきたいと思います。
最後に、石綿の専門家ではないのにこのコラムを書いてよいか迷ったのですが、多くの築古建物で石綿含有の建材が使われており、今後、契約の際やDIYでの作業時、解体時にも影響してくる可能性があります。
コストアップにもつながる話ですので、その時になって慌てないために、大家の私たちにとって必要な情報だと思い書きました。参考になれば幸いです。